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アメリカと日本の教育の大きな違い。数学は創意工夫を凝らすことの大切さを伝えるアメリカの教育。

アメリカの大学の入試問題(SAT数学)で、問題を読まなくても4つの選択肢を読むだけで確実に答えを出せる問題があるって信じられますか?

つまりこんな感じです。
①      赤
②      青
③      黄
④      白

これだけで答えを出せって言っているような感じです。

では、実際の数学の問題を問題文は載せないで、ただ4つの選択肢だけを見せますので解いてみてください。しっかりと選択肢を読めば答えは出せる人が多いと思います。

① a + b = 100
0.6a + 0.4b = 0.55
② a + b = 55
0.6a + 0.4b = 100
③ a + b = 100
0.6a + 0.4b = 55
④ a + b = 100
0.4a + 0.6b = 0.55

どうでしょうか?

わからなかった人に解説をしますね。

例えば1番と4番は、仮に、aとbがそれぞれ1だとしても、0.6a + 0.4bまたは0.4a + 0.6bの答えは1になりますよね。実際に選択肢ではa + b = 100または55となっていますので、1番と4番は間違いになります。

次に、2番を見てみましょう。仮にaとbがそれぞれ55だとしても、0.6a + 0.4b に55を両方代入しても55にしかならず、100には遠く及びません。

つまり、3番以外は、問題を解くまでもなく、問題を見た時点で明らかに連立方程式が成り立たないのがわかるわけです。

そうすると、問題を読まなくても、答えは容易に3番と出るわけです。

日本では、数学の問題で4択の問題は基本的に出題されません。しかし、欧米の数学では、多くの国で選択問題を採用しています。実際にアメリカの大学入試問題のSATでは、数学は、75%以上は選択問題です。

では、実際に問題を日本語とオリジナルの英語を見てください。

60%の酸性溶液Aと40%の酸性溶液Bがあります。55%の酸性溶液を100g作るために混ぜ合わせる溶液Aのガロン数をa、溶液Bのガロン数をbとして、連立方程式を作るとしたら以下の①から④のどの連立方程式が正しいか。

① a + b = 100
0.6a + 0.4b = 0.55
② a + b = 55
0.6a + 0.4b = 100
③ a + b = 100
0.6a + 0.4b = 55
④ a + b = 100
0.4a + 0.6b = 0.55

Solution A is 60% acid and solution B is 40% acid. Solving which of the following systems of equations gives the number of gallons of solution A, a, and the number of gallons of solution B, b, that should be mixed together to produce 100 gallons of a solution that is 55% acid?

① a + b = 100
0.6a + 0.4b = 0.55
② a + b = 55
0.6a + 0.4b = 100
③ a + b = 100
0.6a + 0.4b = 55
④ a + b = 100
0.4a + 0.6b = 0.55

どうでしょうか?

問題を読んで、答えを出して、出した答えと同じものを選択肢から探していませんでしたか?

それでは、選択肢を設けた意味は全くないわけです。選択肢があることで、数学に対しての視野を広げ、効率的に解く選択肢が増えたわけです。

難しい問題を解くだけでは、数学を勉強している意味に疑問を感じてしまうのは当然のことだと思います。

要するに、欧米では、

数学は論理的な思考を伸ばすこと。
視野を広げること。
社会生活に結びついた発想力を鍛えること。
数学の授業に、計算機やタブレット、数学のアプリなど積極的に採り入れて、就職に結びついた授業を行うこと。

日本では、

絶対に計算機は使いません。
マークシートの入試でも選択問題は出しません。
実用性は考慮に入れないことにしています。

私の書いた他のブログでも伝えているように、選択肢のある問題であれば、出題者の意図にもよりますが、普通に問題を解けば3分以上かかるような問題でも、選択肢があることによって、答えを代入して問題を解いたり、問題文の中に解くカギがヒントとして選択肢から除外出来たり、数学の基本的な知識で計算をしなくても答えが出せたりすることで、30秒以内で解けることができる問題があるわけです。

これが、先ほど書いたように

論理的思考を伸ばし
いろんな可能性を探す視野を伸ばし、
柔軟な発想力を鍛えることができるわけです。

一つ選択肢のある問題を出題します。

76の3乗はいくつでしょうか? 
①      583922
②      438976
③      492754
④      527788

頑張って計算すれば解ける問題です。しかし、このような選択肢のある問題は基本的に大学入試では1分以内で解かなければなりません。

この問題は、典型的な1秒で解ける問題です。

この問題の答えは2番の 438976ですが、どうしてかわかりますか?

1の位が6の場合は、何度同じ数をかけても、1の位は6で変わりません。つまり、76の3乗でも、766の6乗でも、8546の12乗でも、1の位は6なのです。ですので、計算する必要もなければ、じっくりと考えることも必要ないわけです。

また、日本と違って欧米ではあまり引っ掛け問題は出題されません。これは文化の違いです。日本のように落とし穴を作るような発想はありません。振り込め詐欺が生まれる土壌はないわけです。

自分自身、今日本も含めて4か国の留学生に数学を教えています。日本の数学は当然計算機も使いませんが、参考書に書いてあるような模範的学び方をしなければ、発想力が鍛えられ楽しく効率よく学べ、ある意味、問題のポイントがはっきりしているので、点数が取りやすいように感じます。

英語でも同じですが、日本人は決まったパターンを使って解くのが大好きです。分子構文や不定詞と動名詞など、パターン化するのが大好きです。しかし、実際はそんなことしなくても、普段から英文にいろんな角度から触れていれば、そのような文法はパターン化しなくても自然と覚えられるわけです。

広い視点で数学の問題に取り組む。

本当に大切なことだと思います。

また、コメント欄にも数名の方が書いてありますが、当然この問題では a, b > 0 という前提で書かれています。日本の数学しか知らない人から見たら突っ込みたくなるのも十分わかりますが、日本以外の海外の人であれば、すぐにSATなどの問題の裏解説だと理解してくれるわけです。

アメリカのSATの問題は、限られた時間でいかに効率よく問題を解くか。という能力を伸ばすことに重点を置いて問題を作成し、大学へのアプライの時にスコアを提出することになっています。

オーストラリアの入試で言えば、NSW州のトライアルなど各州の学校のレベルをスケーリングするテストのような感じです。

将来数学の知識を活かした職業に就く人のための、ただ難しいだけのテストだけではなく、今回掲載した問題などは、数的な処理能力や論理的または倫理的な思考能力が必要で、このような問題は理系の生徒だけでなく、すべての生徒に数学が非言語科目として必要ではないかと私は思います。

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