昔からある壁紙を削り落としてペンキを塗る。いつもなら、誰かにお願いするところを自分の手でやってみようと思い、休みの時間に取り掛かる。普段、壁を意識することがないので、一部屋分とはいえ、面積が広い。見渡していると、全部ひとりでできるのか、不安になって誰かに頼りたくなる。怪我するかな、体力足りるかな、時間あるかな。など、不安が襲ってくる。
もう一人のわたしがつべこべ言わず、やってみなさい!「えいやっ」と背中を押す。壁をコテで削る動き、ザッザッという音が面白くて、不安を忘れていく。壁との距離およそ20cm、視界一面壁。考えることも思い浮かばず無心になる。休憩中、完成イメージにはほど遠く、また不安がやってくるので、作業にかかる。その繰り返し。
無事に壁を塗り終えた。誰かに管理されることなく、自分の手でつくると心の揺れを感じながら、小さな勇気を実感できる。あの「えいやっ」が勇気。不安は勇気が出る前の報せ。

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