正解のない課題

最近、美味しかった食べものは、せり、ホタルイカ、スルメイカ、白魚、わかめ、たけのこ、トマト、いちご、夏みかん、メロン、空豆、たまねぎ、わらびなど。いまは、らっきょう、梅を仕込み中です。知り合いの農家さんやご近所さんから「みんなで分けて」と電話があったり、道でばったり会ったときに「今度持ってくね」といただいたり、スーパーで並んでいたので買ったものです。

旬な食材は、新鮮なうちに仕込みをしないといけないので慌ただしくなるのですが、その時間が好きです。みんなでおしゃべりしながら作業したり、同じ食材でも、人によって作る料理も味もちがっていて発見があるし、トライ&エラーができるほど量があるので、まるで実験室のよう。だから、集まってくる食材をどうやって料理をするか、毎回お題を与えられているようで、わくわくします。答えのない課題ほど、楽しいものはありません。

この地で暮らしはじめて8年目。ここには海や山の幸があって、毎月、いや毎週レベルで刻一刻と旬の素材が移り変わっていく、そんな環境の変化にやっと私たちの暮らしが追いつきました。自然の情報は、月や天候、土の変動によって歪に日々更新され、鳥取での暮らしが間もないスタッフも、鳥取で生まれ育ったスタッフも、すっかり翻弄されて、食いしん坊な情報交換が絶えません。

休業している間、はるか昔から在る環境に支えられて、私たちの暮らしがあることに気がついて、引越しをする子、動物を飼う子、畑を始めた子、実家の荷物を片付ける子など、自分の足もとに目を向け始めました。お金を稼ぐことよりも人に認められることよりも、大事なことを自分の手でつかもうとしているようにも見えます。そういう人の顔は、不思議とみんな、生き生きしていて、なんか楽しそうで可愛い。自分の安心できる場所ができたからか、何があってもへこたれない強さをも感じます。

営業が再開しても、どんなに社会が荒れ狂っても、失いたくないこの手応え。目線を外すと消えてしまいそうな尊い時間を止めないようにしていきたいです。そして、いつかこどもたちが大きくなったときにも、私たちの足もとにつながっている環境が持続されるように働きかけていきたい。新しい課題がいま、与えられています。

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