短いお話「クリスマスツリー」

わたし、A美の着物姿、好きだよ

控えめで

ちゃんと綺麗で

その小さなサンタ帽のピアスも

さりげなくクリスマスだね

それくらいが、丁度いい

さじ加減の感性なんだと思う

フツーは着物のクリスマスコーデって、イタくなりがちだもん

着物の全部、全体に、盛り込みすぎてね

着物ってただでさえ表面積デカいのに、その画面いっぱいに自己表現しちゃうから

アートなの？歩く絵画なの？…

すごく目立ってるけど？…

一緒にいるこっちまで、他人の視線に晒されてるの、気づいてる？…

ちっとも落ち着かないんだけど？…

って、よく思う

その点、A美はホント素敵

洋服と並んでも全然違和感ないし

一緒にいて、むしろアガる

さっきのお店、接客がすごく丁寧だったでしょ？

あれ、A美が和服美人だったからだよ

間違いない

わたし、嬉しいの

A美の着物姿が、ちゃんと綺麗で

ドヤ顔でクリスマスてんこ盛りな着物、着るような人じゃなくって、ね

ふふ、その顔

もしかして照れて困ってるの？

やだな、キュンキュンさせないでよ

今日たまたま偶然だったけど、A美に会えて本当よかった

運命かもね？

おっと、危ない危ない

後ろから人来てた

こっちに寄ろっか

すみません、どうぞ

・・・・・・

・・・・・・

えっ？

今の人、なにか言った？

わたしの聞き間違い？

ツリーがなんとかって聞こえたんだけど

言ったよね？

やばい、意味不明

キモすぎる

A美、触られたりしなかった？

大丈夫？

・・・

？

時間？

もう？

えーザンネン

じゃあ・・・ここで

また連絡するね？

A美の着物姿、ホント綺麗だった

次のときもまた見たいなー

なんて

うん、じゃあ、また

A美！

待って！

連絡先・・・・・・

あ・・・

クリスマスツリー・・・

・・・・・・・・・

終

（お話の展開上失礼なセリフ沢山書きました…ごめんなさい…）