【日本学術会議 任命拒否問題】 人間の自由な精神こそすべての源泉だ

 2020年10月10日 JASTJ会長 室山哲也

 社会をにぎわせている日本学術会議問題を見ていると、悲しくなる。
 この問題の根底には、人間本来の好奇心や、創造活動に対する無知と、力によって物事を収束させようとする傲慢さがある。それとともに、為政者のレベルの低さ、日本という国の虚弱さすら感じてしまう。


 推薦された新会員の「任命なし」の理由を説明せずにいることは、関係者に対する脅しと同じ。いらぬ詮索と忖度をもたらし、結局は、自由な精神活動を委縮させることにつながる。人間が本来持つ生存戦略としての「コミュニケーション」を否定し、ジャングルにすむ獣の世界に戻ってしまう。

 また、本質的議論を避け、論点を学術会議の是非にスライドさせていくプロセスにも、深い危惧を感じる。
そもそも学術は、自由な精神のもと「知の探究」を通じて、未来を創造する作業。その絶え間ない努力によって、今日の人類文明も形造られてきた。
当然、政治は学問と一定の距離を置き、学問の自由を守る必要がある。

 
今後、文明の状況がどのように地殻変動を起こすかわからない。社会的課題が変質していく中で、価値観そのものも変化していくからだ。

 「知の多様性」こそ、未来に向けた人類の武器だ。
短絡的な価値判断によって、長期的な人類の知的活動を阻害するのは、愚かな態度だと思う。政府には今回の判断を改め、善処することを求めたい。


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