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【学術会議_法改正問題】政府との対話を望む学術会議

2023年4月19日
日本科学技術ジャーナリスト会議 事務局長 滝順一


 日本学術会議は4月17、18日に総会を開き政府への勧告を決議した。日本学術会議法改正案の今国会への提出を「いったん思い止まり、日本学術会議のあり方を含め、さらに日本の学術体制全般にわたる包括的・抜本的な見直しを行うための開かれた協議の場を設けるべき」と政府に対応を求めた。合わせて改正法についての学術会議の考え方を説明する国民向けのメッセージを「声明」の形で公表した。

 総会での勧告決議は2005年以来18年ぶり。強い言葉で政府の姿勢を正した。学術会議が政府方針に「反対」「猛反発」などと報道されているが、対立を強調する見方は総会での議論から受けた印象とはやや異なり、違和感を感じる。

 学術会議が政府に法案撤回を求める姿勢は一貫しており、その点では「対立」であることは間違いない。しかし学術会議が単純に「反対」を掲げず、政府への勧告という形をとり「いったん思いとどまる」「協議の場を設ける」とした点により注目すべきではないか。

 総会の議論では、2022年12月に法案の主な内容が政府側から示されて以来、繰り返されてきた同じ問題点がまた指摘された。それは大きく言って2点。まず、改革法案が学術界の意見を聞くことなくまとめられたこと。2点目は会員選考に関し意見を述べる第三者委員会(選考諮問委員会)の設置など法案の内容が学術会議の独立性を脅かす恐れがある点だ。

 選考諮問委員会については、その委員選任は学術会議会長が行うことを法案に盛り込むなど、政治的な介入を避ける配慮を政府側は示している。しかし法案を一方的に提示し「説明」には応じつつも話し合いをするつもりはない政府の姿勢が学術会議側の警戒心を高める結果になっている。与党の政治家から明らかに誤解に基づいて学術会議を非難する発言が出続けていることも不信感・不安感をあおっている。

 学術会議には学術の立場を強く主張する必要があるとの決意とともに、政府とただ対峙するだけでは望ましい結果を生まないとの認識が存在するようにみえる。

 それが勧告の形で表現された。また同時に決議された国民向けの声明のタイトルが「『説明』ではなく『対話』を 『拙速な法改正』ではなく『開かれた議論』を」といつになくソフトな言い回しであることにも表れているのではないか。

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