抗うつ薬が重症化防止に有効かもしれないという2つの論文

<科学論文> 下畑享良教授(岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野 )ブログより転載許可を得て掲載
※2020年11月12日時点での見解です。引用の際は最新情報にあたってください。

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるフルボキサミンは,サイトカイン産生を調節するシグマ1受容体を刺激することで,臨床症状の悪化を予防する可能性がある.米国から,軽症COVID-19に対して,フルボキサミンが臨床症状の悪化を防ぐことができるかを検討した研究が報告された.

JAMA. Nov 12, 2020(doi.org/10.1001/jama.2020.22760)

 対象は発症7 日以内で,酸素飽和度が92%以上の成人外来患者152名であった.フルボキサミン100 mg(80名)または偽薬(72名)を1日3回,15日間内服するように割り付けた.主要評価項目は無作為化後15日以内の臨床症状の悪化とした.

 臨床症状の悪化は実薬群で80人中0人,偽薬群で72人中6人に認められた(絶対差8.7%;log-rank P = 0.009).症例数が少なく,追跡期間が短いという問題があり,今後の大規模臨床試験が必要である.

 しかし,最近報告されたScience誌の論文で,SARS-CoV2,SARS-CoV,MERS-CoVという3つのウイルス共通に相互作用する分子としてシグマ1受容体が同定され,さらにリアルワールドのデータとして,抗うつ薬としてシグマ1受容体リガンドを投与されている患者では,COVID-19に罹患しても入院する率が半分以下に減少していることが報告された.シグマ1受容体は重要な治療標的である可能性がある.

Science. Oct 15, 2020(doi.org/10.1126/science.abe9403)

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