新型コロナ患者の濃厚接触者を対象にした、感染リスクについての報告3報

<科学論文> 5th July 2020 Curated by 西村尚子
※2020年7月5日時点での見解です。引用の際は最新情報にあたってください。

 新型コロナの緊急事態宣言が功を奏し、一時は1日の感染者数が1桁台にまで減った東京ですが、6月下旬以降、再び50人を超えるようになり、7月2日以降、100人を突破するようになってしまいました。第2波襲来が現実のものとなりつつあるなかで、濃厚接触者の感染リスクについて解析した論文3本をサマリーしました(西村尚子)。

(日時はすべて現地時間)

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【1】日本国内の61クラスターを特定。スーパースプレッダーは若年者
2020年6月10日
Centers for Disease Control and Prevention
DOI: 10.3201/eid2609.202272
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/9/20-2272_article

 東北大学の押谷 仁氏、北海道大学の西浦 博氏らのチームは、1月15日から4月4日までの国内における3,184のCOVID-19症例(ダイヤモンドクルーズの症例は除外)を解析し、61のクラスターを特定したと報告。同一の場所で5人以上の感染例があった場合をクラスターと定義し、家庭内感染は除外したとのこと。61クラスターのうち、30%が医療施設、16%がケア施設、16%がレストランやバー、13%がオフォス、11%がライブコンサートやカラオケなどの音楽関連施設だったという。同チームは、クラスター発生源(スーパースプレッダー)22人を特定し、大半が20〜39歳の若年者で、41%は発症前か無症状だったことも言及している。

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【2】濃厚接触者の感染リスク、20歳未満で低く、60歳以上で高
2020年6月17日
Lancet Infect Dis
https://doi.org/10.1016/S1473-3099(20)30471-0

 フロリダ大学のYang Yang、中国 広州疾病管理予防センター(Guangzhou Center for Disease Control)のZhi-Cong Yangらのチームは、統計的な手法により、SARS-CoV-2感染者と、その濃厚接触者へのウイルス伝播について解析した。対象としたのは、広州疾病予防管理センターの感染者追跡データセットにある195症例。追跡期間は、2020年1月7日から2月18日まで。感染者の隔離と濃厚接触者の検疫が実施されている、平均潜伏期間5日、最大感染期間13日、などの条件を設けて計算処理したとのこと。解析の結果、以下のように、濃厚接触者への感染率が年代によって大きく異なることがわかったという。

同世帯家族の場合
20歳未満5.2%、20~59歳14.8%、60歳以上18.4%

別世帯家族の場合
20歳未満1.4%、20~59歳2.2%、60歳以上3.1%

同住所で同世帯(家族かどうかは問わない)
20歳未満の6.4%、20~59歳18.5%、60歳以上28.0%

同住所で別世帯(家族かどうかは問わない)
20歳未満1.7%、20~59歳2.7%、60歳以上2.9%

 20歳未満の濃厚接触者は比較的、感染リスクが低く、60歳以上で高いことが浮き彫りになったといえる。同チームは、世帯が大きいほど感染リスクが高くなる、患者の年齢は感染力と関連しない、潜伏期間中にも発症後と同レベルの感染力をもつ、といったことも明らかにしたとしている。

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【3】無症状の感染者、知らないうちにウイルス拡散させる可能性大
2020年6月4日
Clinical Infectious Diseases
https://doi.org/10.1093/cid/ciaa711

 ベトナム・ホーチミン市にあるオックスフォード大学臨床研究ユニット(Oxford University Clinical Research Unit )のLe Van Tanらのグループは、SARS-CoV-2の無症状感染者を追跡し、症状の有無と、新たに2次感染させたかどうかを調べた。対象としたのは、3月10日から4月4日の間に鼻ぬぐいによるPCR検査を受け、陽性が判明した49人のうちの30人。この30人のうちの約43%にあたる13人は、入院中に何の症状もみられなかったという。このような無症状の感染者は鼻ぬぐい液中のウイルスRNA量が早く低下するものの、2人が少なくとも4人に感染させた可能性が高いとのこと。同グループは、無症状感染者が無意識のうちに感染を広げている可能性があると指摘している。


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