【動物実験結果】 鼻粘膜への感染により,ウイルスは速やかに脳へ移行する

<科学論文> 下畑享良教授(岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野 )ブログより転載許可を得て掲載
※2020年11月9日時点での見解です。引用の際は最新情報にあたってください。

Nature. 2020 Nov 9.(doi.org/10.1038/s41586-020-2943-z)

 米国からの研究.上皮細胞特異性発現K18プロモーターにより,ヒトのACE2を発現するモデルマウスを作成し,感染実験を行った研究が報告された.

 この実験系では,SARS-CoV2ウイルスは上皮細胞にのみ感染し,嗅細胞には感染を認めないが,なんと脳では感染後2日,4日,6日と経時的に,他の臓器よりも多くウイルスが検出されるようになる.

 具体的には,ウイルス105 PFUを経鼻接種すると,5/8匹のマウス脳から感染性ウイルスが検出された.感染後4および6日目にウイルスヌクレオカプシド(N)タンパク質の免疫染色を行ったところ,4日後では染色されなかったが,6日後では嗅球,大脳皮質,馬尾・翼状突起,視床,視床下部,腹側線条体を含むいくつかの脳領域で染色が観察された.HE染色では,視床で細胞死と血栓が認められ,細胞死の病巣が変性上衣細胞に隣接して検出された.

 影響を受けた領域のほとんどが嗅球の二次的,三次的に連絡するのに対し,いくつかの領域,例えば,後眼球と舌下神経核のような領域は,直接連絡していない.この結果は,脳へのウイルス伝播における嗅球感染の役割を示唆するものの,ウイルスが他のルートで中枢神経系に入る可能性を示唆する.

(下畑先生の所見)
 このデータを見ると,ヒトでもウイルスが脳に移行し,将来,再活性化する可能性があるのではないかと危惧される.

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