モデルナ社製ワクチンmRNA-1273の第1相試験

<科学論文> 下畑享良教授(岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野 )ブログより転載許可を得て掲載
※2020年11月12日時点での見解です。引用の際は最新情報にあたってください。

N Engl J Med. Nov 12, 2020(doi.org/10.1056/NEJMoa2022483)

 米国ファイザー社とともに期待されるモデルナ社製ワクチン候補mRNA-1273に関する第1相試験がNEJM誌に報告された.目的は安全性と,ヒトで中和抗体が誘導できるか明らかにすることである.

 このワクチンは,スパイク蛋白質に変異を導入し,感染前のperfusion conformationという安定化した構造をとらせることで,10倍もの抗体価の誘導を実現したものである.この研究は第 1 相,用量漸増,オープンラベル試験である.健康成人(18~55 歳) 45 名を対象に,ワクチン接種を 28 日間隔で 2 回,25 μg,100 μg,250 μg の投与量で行った(各群15名).

 1回目のワクチン接種後は,投与量が多いほど抗体反応が高くなった.2回目のワクチン接種後にさらに抗体力価は上昇した.血清中和活性はすべての参加者で検出され,その値は対照である回復期患者血清検体の分布の上半分の値と同等であった.また2ヶ月間で抗体価は維持された.

 半数以上の参加者で有害事象がみられ,疲労,悪寒,頭痛,筋肉痛,注射部位の痛みが含まれていた.全身性の有害事象は2回目の接種後,特に最高用量の接種群で多く見られた(1例は重篤で,39.6℃の高熱だった).

 以上,本ワクチンは全参加者に抗ウイルス免疫反応を誘導し,基本的に安全性に関する懸念は認めないと判断された. 

(下畑先生の所見)
 現在,3万人が参加した第3相が進行中である.日本はモデルナ社から来年1~6月中に2000万人分,ファイザー社から6月までに6000万人分のワクチン供給を受けることになっている.よって3万人の段階とは異なる未知の副作用が第4相試験(市販後調査)で出てくる可能性はある.接種を受けるかどうかは,今回及び第3相の科学的データをみて各自が慎重に判断する必要がある.

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