COVID-19で入院した患者のウイルス学的評価

<科学論文>1 April 2020, Nature  Curated by 小出重幸

※2020年4月1日時点での見解です。引用の際は最新情報にあたってください。

 新型コロナウイルスの性質に関する最新の知見(Nature 4月1日号、米国NIH報告)です。この論文に関して、感染免疫学が専門の宮坂昌之(大阪大学名誉教授、大阪大学免疫学フロンティアセンター招聘教授)が要約を発信していますのでご紹介します。 

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 4月1日号のNatureに掲載された論文です。9人の患者からの知見で、症例数が少ないという問題があるのですが、大事なことが記載されています。

(1)当初は気道下部で主にウイルス増殖が起こるとされていましたが、この報告では、このウイルスは上気道でも増殖して、喉からの検体に高率にウイルスが認められました。

(2)糞便はPCR検査陽性であっても感染性のあるウイルスは認められなかったということです。PCR検査はウイルスの死骸もひっかけてしまうので、糞便に出てくるものはほぼ感染性を失っている可能性が高いということになります。

(3)血液にも尿にもウイルスは検出されませんでした。

(4)同一の患者で複数の異なるタイプのウイルスを持っている例がありました。つまり異なる変異を持つウイルスが複数種類、一人のひとに感染する可能性があるということです。

(5)症状が消えても痰で調べるとPCR陽性ということありました(感染からは治っていても、しばらくの間はウイルスの死骸を排出し続けるということがあるのかもしれません)。つまり退院の可否をPCR検査で判断するのは意味がないということです。

(6)感染後、抗体陽性になるのは50%の人で7日後、14日後ではすべての人が陽性となりました。

(7)しかし、抗体があっても体内のウイルス量が急激に減るということはありませんでした。つまり、抗体があっても他人に感染させないということではないということです。これは、今の抗体検査が、善玉抗体(ウイルスを不活化する抗体)だけでなくて、悪玉抗体(ウイルス感染を促進する抗体)や役無し抗体(ウイルスに結合するが何もしない抗体)も一緒に測ってしまうからです。「抗体陽性だからもう自分は大丈夫だ」とはいえないということです。

宮坂昌之


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