TNFαとIFNγの組み合わせは,複数の細胞死の特徴を持つ強烈な細胞死(PANoptosis)を誘導する

<科学論文> 下畑享良教授(岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野 )ブログより転載許可を得て掲載
※本論文は最終版ではないレビュー中のバージョンであり、2020年11月19日時点での見解です。引用の際は最新情報にあたってください。

Cell. Nov 19, 2020(doi.org/10.1016/j.cell.2020.11.025)

 米国からサイトカイン・ストームで誘導される種々のサイトカインを組み合わせ,骨髄由来マクロファージの細胞死を誘導できるか調べた研究が報告された.

 この結果,TNFαとIFNγの「組み合わせ」のみが,ピロプトーシス,アポトーシス,およびネクロプトーシスといった複数の細胞死を特徴とする細胞死を誘導することが分かった(頭文字を取ってPANoptosisと呼ぶ).

 TNFαとIFNγの組み合わせ刺激は,JAK/STAT1/IRF1カスケードを活性化し,iNOSを介してなんと一酸化窒素(NO)の産生を誘導し,さらにカスパーゼ8/FADDを介したPANoptosisを誘導した.マウスにおけるTNFαとIFNγの組み合わせ刺激は,COVID-19による組織損傷,ならびに致死的なサイトカイン・ショックを引き起こした.またマウスにおいて,TNFαおよびIFNγに対する中和抗体は,SARS-CoV-2感染による死亡,敗血症,血球貪食性リンパ組織球症およびサイトカイン・ショックを防止した.

 以上により,TNFαおよびIFNγの組み合わせにより誘導される炎症性細胞死シグナル伝達経路を遮断することが有力な治療となる可能性がある.

(下畑先生の所見)
 JAK1/2阻害剤やTNFα阻害剤の有効性もこれまでの研究で報告されており,本研究と矛盾しない.COVID-19のサイトカイン・ストームのメカニズムはいまひとつ明確でなかったが,いよいよ本質に近づいてきた印象がある.治療として,カスケードの一番上流をブロックするTNFαおよびIFNγの中和抗体の併用療法の効果が期待される.

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