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ショートトリップ③~アートギャラリーの特等席~

地元で働き、地元で居を構え、今まであった「お出掛け」がなくなりメイクも薄め。最近は、以前にも増して着心地の良い服を選ぶことが多くなった。背伸びしたりカッコつけたりすることが減り、それはそれで心地が良いのだけど、どこか「こんなんでいいのかな」と思う瞬間もある。

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私が知る、地元にあるカフェの中でも1番カッコいいコーヒーショップ。店主自ら時間をかけてお店を手作りしたと聞いたことがある。セメントが流し込まれた足元、木の板打ちっぱなしの壁。ときどき写真やアクセサリーの展示会も開催される。お洒落なBGMとシンプルすぎるメニューはどれもこれも余分がなくて洗練されている。一個一個に重みがあって、店内に入った瞬間にほんの少しの緊張感と背筋が伸びるような感覚がある。そんな空気に包まれたいときは決まってここが頭に浮かぶ。夏は黒ビールみたいな濃厚さと少しの酸味が気持ちいいコーヒーソーダを。豆にこだわる店主おすすめのコーヒーは、行ったその日の気分によって浅煎りか深煎りかを決める。コーヒーにそんなに詳しいわけでもない私は、知ってる顔して注文をする。どれを選んでも、いつも間違いはないのだが。

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現在は、緊急事態宣言下ということもあり、週末限定で営業しているそうだ。金曜日は「After 5 Coffee」と銘打って、仕事帰りの休憩場所として3席だけ設け、3時間のみ営業してるとのこと。

特等席、という言葉が浮かんだ。

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少し重めの、普段出くわすことのないようなドアの取っ手。(初めて行ったときはうまく開けられなくて、中から開けてもらったっけ。)そのドアを開け、店内に入ると、いつもよりスペースを狭く区切っており、クリーム色のペーパーで目隠しされて奥の方が見えなくなっていた。奥は照明も消されており、よりその3席がスポットライトを浴びているようで神々しかった。
空気が凜としていて、そこに鎮座しているというか。すでに満ち足りている空間に入らせてもらうというか。緊張感を持ってして、心して入り込んでいくような、まるでアートギャラリーのよう。美しいものに囲まれる幸福感と緊張感。


いつもより声のボリュームを落とし、静かなその空間に合わせる自分。背筋が伸び、仕事着のまま来てしまったことを少し後悔する自分。そんな自分に苦笑いしながらも、「夜のコーヒーなので…浅煎りで。インスタで紹介されてたカヌレチップスも」と注文し、窓際の特等席に座った。

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浅煎りのコーヒーはホンジュラスの豆とのこと。ホンジュラスとは地球儀のどこら辺に位置しているんだろう。どんな国のどんな人がコーヒーを木を育てているのだろう。その国に思いを馳せ、気がつくと脳内旅行に出かけていた。店主の、それぞれの豆について説明を聞くことは、美術館で一点一点作品の背景や作者の思い知るようことに近いかもしれない。その味や香りを確かめるように探した。

店主こだわりのカヌレは金曜日限定でチップスへと姿を変えた。パリッパリッと小気味良く、ほんのりラム酒とバニラビーンズの甘味がコーヒーに合う。夕飯前のおつまみにはこれくらいがちょうどいい。胃袋的にも、「食べすぎちゃったかな」という後悔がなくて良い。

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居心地のよさを求めすぎてやいないか。少しはカッコつけた自分でいたいではないか。カッコいい場所ではカッコいい自分でいたいし、背伸びもしたい。その場所にふさわしい自分でいたい。だからこそ、たまにでもいいから自分がカッコつけられる場所を探し、そこに向かう。居心地のよさを求めつつも、刺激のある場所にも身を置きたい。「どっちを求めているんだろう」と思うこともあるけど、やっぱり選べない。「どっちも」だっていいんじゃないか。

だからまた、背伸びがしたくなったらここに来ればいいし、力を抜きたくなったら別の場所に行けばいい。人って、ひとつの面だけじゃないから。色んな面があって人だから。居場所は何個あったっていい。そのどれも、どこにいる自分も、全部自分なのだから。

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