祈りの芸能としての能楽
人々の営みのなかには、喜びもあり悲しみもあります。
2024年のはじまりは、とても辛い震災の一報から始まりました。
被災された方、亡くなられた方のこと、日々報道される状況に心を痛めております。
能楽という芸能では、目に見えぬ何かを、舞台上でキャラクター化して表現します。
たとえば、神、時には霊魂、鬼、精、これを能楽師が演じることで表現します。
能楽が創作された時代のことを想像しますと、電気もガスも水道もない時代、目に見えぬ何モノかのせいにしないと踏ん切りがつかない、やるせないような状況が沢山あったのかもしれない、ということを隆起した土地の映像を見て思いました。
年明けに全国で最も多く上演される演目があります。
「翁」は、能楽の源流、”能にして能にあらず”とも言われております。
明確なストーリーはなく、天下泰平、国土安穏、五穀豊穣を祈祷する。
一種の儀式のような演目です。
私の敬愛する祖父のことばに「ワキ方の本質は「耐えて許して慰めること」」というものがあります。
「翁」にはワキ方は出演しません。
しかし、ワキ方のほとんどの役は僧侶であり、
神、霊魂、鬼、精の思いを受けとめ、耐えて、日々祈り慰めています。
舞台をご覧になったどなたかの慰めに、祈りに、
能楽とはそういう芸能である、そうあらねばならぬ。
改めて、思う一年の始まりでした。
いずれもさまも、平穏な一年でありますように。
祈りについて考えた、2024年初めての投稿でした。
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