2024年年金財政検証について〜年金制度自体は破綻しない。が...
年金制度について
まずは年金の概要について解説します。現在の年金制度については国民年金と厚生年金の2階建てでの制度となっています。年金保険料率は2017年以降18.3%で固定されており、自営業者などが払っている国民年金保険料は月約1.7万円です。
最近の動きとしては保険料収入を確保するために非正規労働者や5人以上の個人事業者へも厚生年金加入の動きがあります。非正規雇用者にとっては年金の月額負担が減る上に将来的に受給されるので、メリットは大きいですが、事業主にとっては負担増加となります。
年金財政については外国人労働者受け入れ拡大やに伴う収入増加や厚生年金の加入拡大などでどうにか保たれている感じです。日本は今後も移民を多く受け入れ、定年引き上げなどで年金財政自体は保たれてるでしょう。
年金受給については国民年金が月最大で6.5万円、厚生年金が平均で約10万円くらい受給されています。名目上での年金受給額は増えていますが、マクロ経済スライド発動で物価の伸びよりも低めに年金増額を抑えているため、実質的には下がっています。
年金制度の歴史
年金制度は元々明治初期に軍人、大正時代には公務員への恩給である恩給制度が導入されました。民間の公的保険としては1939年の船員保険法を根拠とする年金制度が初です。本格的な年金制度についてはナチスドイツを参考に労働者年金保険法が1942年の太平洋戦争中に施行されました。
簡単にまとめると
◆1942年(昭和17年)(東条英機内閣) :「労働者年金保険法」 男性55歳受給(女性は適用除外)
◆1944年(昭和19年)(東条英機内閣):「 厚生年金保険法」 男女ともに55歳受給
◆1954年(昭和29年)(吉田茂内閣):「男性受給年齢引き上げ」 男性55歳から60歳に。1957年度(昭和32年度)から 4年に1歳ずつ16年かけて引き上げ。(1972年まで)女性はそのまま55歳。
◆1973年(昭和年)(田中角栄内閣):「厚生年金を積立方式から賦課方式へ」 田中内閣は福祉元年を掲げ、社会保障充実へ。物価高対策として厚生年金は積立から賦課になり、受給額は2.5倍増額。一方で保険料はかなり引き上げ。
◆1985年(昭和60年):「男女受給年齢引き上げ」男性60歳から65歳に。ただし、60~65歳まで特別支給の老齢厚生年金を支給。女性55歳から60歳に。昭和62年度から3年に1歳ずつ12年かけて引き上げ。
◆1994年(平成6年):「老齢厚生年金の定額部分(国民年金にあたる)について改正」で男性60歳から65歳に。平成13年度から3年に1歳ずつ12 年かけて引き上げ。女性60歳から65歳に。平成18年度から3年に1歳ずつ12年かけて引き上げ。
◆2000年(平成12年):「老齢厚生年金の報酬比例部分について改正」で男性60歳から65歳に。平成25年度から3年に1歳ずつ12年かけて引き上げ。女性60歳から65歳に。平成30年度から3年に1歳ずつ12年かけて引き上げ。
◆2005年(平成年)(小泉政権):「マクロ経済スライド導入」
・厚生年金保険料は、2004年10月から保険料率(労使折半)を毎年0.354%引き上げ、2017年9月から18.3%に固定する。
・国民年金保険料は、2005年4月から毎年280円ずつ引き上げ、2017年度には月額16,900円に固定する。
◆2012年(平成年)(野田佳彦内閣):「消費税増税法と社会保障と税の一体改革」により、国民年金財源の半分は税負担へ。
◆2018年(平成30年)(安倍内閣):「マクロ経済スライド改正」今後は物価上昇と賃金下落のうち、いずれか低い方に合わせてカットされる。
年金制度は理論上破綻せず、払って貰う方が得。ただ…
年金制度は賦課方式であり、年金保険料率も18.3%から引き上がることはありません。また、年金保険加入者は病気や怪我をした際に障害年金を貰える資格があります。年金破綻の話はバブル期にもありながらも実際には維持できているので、入らないより入ったほうがメリットはあります。
一方で年金受給年齢が段階的に引き上がっており、2030年には国民年金と厚生年金の受給が65歳へ統一されるでしょう。60歳から年金を受け取ることは可能ですが、その分貰える年金額が下がります。
2024年財政検証結果
年金財政検証結果については経済成長率が-0.7%試算でも2059年までの所得代替率が50.1%と所得代替率は2割減となる見込みです。また、経済成長率が1.1〜1.6%続いた場合では所得代替率は57〜58%は維持される見込みのため、年金は約5%くらいカットでしょうか。2019年の年金財政検証と比べると全体的には改善されています。
厚労省の結果はこちらです。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/index.html
また、厚生年金の非正規加入要件拡大シナリオの場合は所得代替率が2037年に57.6%だとすると、
・企業要件撤廃と5人以上個人事業主加入だと58.6%(政府は2020年代半ばでの実現を目指している)
・非正規の賃金要件撤廃と最低賃金引き上げだと59.3%
・5人未満個人事業主へ適用拡大だと60.7%
・週10時間以上の労働者へ適用拡大61.2%
の試算です。
また、基礎年金の拠出期間が40年から45年へ延長や給付増額が行われると所得代替率が7%増えて64.7%予測です。
マクロ経済スライドの調整を国民年金と厚生年金を一致して行い、スライド終了を同時期にすると3.6〜5.8%分上昇し、在職老齢年金撤廃試算は0.5%マイナスになりますが、働く高齢者の年金受給は増えます。保険料の上限見直しについては65万円から75万円へ引き上げると0.2%、83万円が0.4%、98万円が0.5%分改善試算です。
年金の将来はどうなる?
日本政府は今後年金政策についてはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)での高利回りによる資産上昇や世論からの反発や受給年齢を引き上げるようなことはしないと推測します。年金財政検証が5年に1回実施されていますが、予想より所得代替率が下がっていないため、2060年にかけて所得代替率を60%維持路線へ向かうのでしょうか。
今後は厚生年金の適用拡大や国民年金納付機関の延長へ動くと見ています。延期はある可能性がありますが、最終的にはこれらを実施し、年金削減の反発を抑える動きに出るでしょう。
日本経済については良いとはいえませんが、円安や金融緩和継続、世界各国のインフレなどで平成のデフレ時代と違って緩やかなインフレと経済成長が進むと考えられます。そのため、マクロ経済スライドは発動され続けると推測します。
労働力人口については少子化が予測以上に進行は早いですが、それ以上に移民流入が加速しています。出生率は2020年の1.33から2060年は0.7へ下がると個人予想しており、移民については年間16.4万人試算ではなく、2030年にかけて移民は1割ずつ増加し、2030年以降は毎年70万人の移民が増えると予測しています。そのため、6700万人の就業者人口は2040年にかけて減ることはないでしょう。外国人の年金加入率は日本人との差はこれといってなく、収入増加となるでしょう。
その流れは今後も続き、少子化については現在外国人の出生率が0.6を下回っているとはいえ焼け石に水程度には下落幅は緩やかになるでしょう。移民流入については今後拡大が見込まれ、2040年には純流入70万人超えの予想があります。外国人提供している社会保障の金額よりも社会保険料収入が圧倒的です。
高齢者の就労については今後も拡大し、65歳まではフルで労働し、70歳まで延長して働くのが普通になるのでしょうか。
また、2040年代以降になると高齢者間で格差が広がると予想しています。孤独高齢者の増加、資産形成できた人とできなかった人、就職難か否かで差は広がるでしょう。
仮に年金受給年齢を引き上げるとしたら、年金受給年齢の歴史を見ると国民年金については2032年から男性、2037年から女性が3年に1回毎に受給年齢が1歳引き上がるでしょう。厚生年金は2044年から男性、2049年から女性が3年に1回毎に受給年齢が1歳引き上がるでしょう。最終的に2062年には70歳繰り上げが完了となるでしょう。
年金制度の個人提言
という感じで年金制度の現状について伝えましたが、ここでは個人的に年金制度について提言します。年金カットだのなら簡単なのでここで書く必要はありません。
まず、厚生年金ですが、一定程度の厚生年金額へたっした場合は一部国へ払い戻す制度が望ましいでしょう。カナダの年金制度では厚生年金の所得額が一定額を超えたら一定額を超える額の15%を税として国へ払い戻す制度があります。日本で例えるとしたら厚生年金額が月5万円を超えたら、超えた分のうち15%分を返金し、保険料を下げる仕組みになるのでしょうか。
国民年金制度については65歳超えたら全員満額支給させ、財源については保険料負担をなくして税方式にすることです。日銀引き受け国債を財源にしても問題はありませんが、持続可能性を考えると約13兆円を税で賄うのが望ましいと考えます。