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映画館で大人になった

私の生まれ育った町は、田園風景の広がる田舎だった。
そんな田舎で「遊ぶ」と言えば、友達の家に行ってゲームをするか、公園に行って遊ぶか、そのくらいしかなかった。

中学生になり、不登校のち相談室登校になった私に、相談室仲間ができた。
1人は同じ学年のYちゃん。もう1人は学年がひとつ上のRちゃん。
私たち3人は相談室で過ごすうちに意気投合して、休みの日も遊ぶようになった。

「映画、観に行こうよ」
ある日、Rちゃんがそう提案してきた。
私の町にはもちろん映画館がないから、映画を見るためには隣の市のシネコンに電車で行くことになる。
今まで家族とは行ったことがあるけれど、友達と行くのは初めての経験だった。

自分が持っている中で一番おしゃれな服を着て、最寄駅に向かった。
自分できっぷを買い、電車に乗った。
シネコンに着いて、自分で映画のチケットを買った。
初めて尽くしでドキドキとワクワクが止まらなかった。

そのときに観たのは二宮和也主演の「大奥」だったと記憶している。3人とも嵐が好きだった。

映画をしっかり堪能した私たちは、近くのゲーセンでプリクラ(私たちは「プリ」と呼んでいた)を撮って遊んだ。
私にとって初めてのプリ。
上手くカメラ目線ができなかったけれど、とても楽しかった。

大好きな友達と過ごすことがこんなに楽しいなんて、私は初めて知った。

そして、当時の私たちにとっては都会だったあの市での遊び方をRちゃんとYちゃんから教わった。

2人とはその後も嵐のメンバーの主演作品が封切られる度に観に行った。
私の懐かしく、楽しい思い出たちだ。

中学生だった私は、映画館で少しだけ大人になった。

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