見出し画像

【生産能力分析】1か月に生産できる量はどれくらいですか?

こんにちは、「ものづくり王国にっぽん」運営者のとも(@Japan_MFG_Tomo)です

現在は中国の工場で、ODM製品量産立ち上げ~量産後の対応まですべての工程における技術窓口をやっています。
基本的には中国人と同じように技術窓口、そして日本語の案件の場合は通訳をやる事もあります。



先日新開発の案件で量産試作が始まり、生産工程がほぼ決まってきたので、生産能力分析を始めました。

  • 初品サンプル提出に近い品質を

  • Cpkデータ評価時と同じ工程で

  • 1か月あたり何万台生産できるのか

  • 客先需要予測と比較して、あと何台の設備が必要なのか

そんな分析をします。
お客様が知りたいデータは大体こんな内容

  1. 1か月の通常生産能力(数)

  2. 客先の需要予測を満たせるか確認

  3. 1か月フル生産したときの生産能力(数)

  4. 客先が予測している最大需要を満たせるか確認

  5. 月当たりの生産数収支が足りない場合、どう対応するか

  6. 設備を増強する場合準備期間が何か月必要か

こんな情報を、主に客先の生産管理部門が質問してきます。
生産管理部門がこの情報を知っていないと更に上の階層のお客様に迷惑をかけてしまうので、かなり細かく質問されます。

同時に、こちら側の生産能力を参考にして発注量の調整をしています。


1か月の通常生産能力(数)

機密情報もあるので、数値はそれっぽい別の数値にしています。

1か月の生産能力は、社内通常の勤務体系で生産した場合の生産数です。

例えば土日休み、昼夜8時間ずつの生産であれば、月26日、16時間生産で計算します。

必要な情報は

  • サイクルタイム+機外作業時間

  • 1日の生産投入時間(作業員を投入した時間)

  • 稼働率(投入時間÷実際に機械が動く時間:予測値)

  • 1か月の稼働日数

  • 設備の台数

があればOKです。


客先の需要予測を満たせるか確認


量産部品は、ある程度見込み生産になります。
その際にインプットとして使用するのが、客先から提供された需要予測。

先ほど計算した月当たりの生産能力と比較して、月当たりの収支を確認。
収支がプラスであれば、「生産能力は十分である」と判断できます。

トヨタで採用されているJIT方式に対応するなら、ここの生産数収支は大切なので計算に入れておきます。


1か月フル生産したときの生産能力(数)

数値は実際にありえそうな数字を任意で入力しています

通常生産時と、フル生産を比較します。
MAX生産時は24時間勤務+MAXの稼働日数の前提で計算します。
(稼働率の変化は考慮しません)

インプット情報は標準生産能力に加えて、1か月の最大稼働日数だけです。


客先が予測している最大需要を満たせるか確認

客先も心配性なので、大体は「最大これくらい増えることがあります」という数値を提示してきます(在庫買取り交渉に使われないように、基本的に最少は提示してきません)

我々サプライヤーはMAXの需要量にも応えなきゃいけないので、MAX生産量vsMAX需要予測値で収支を計算、間に合わなければ設備導入や在庫を考えます。


月当たりの生産数収支が足りない場合、どう対応するか

月当たりの生産数収支がマイナスの場合は、二通りの方法があります

  • 在庫を作る

  • 設備を増台する

JITの考え方だと設備増加が正しいですが、すると「遊休資産の無駄」という7つのムダの外の無駄が発生します。

(面白いPDFがあったので、シェアしますね:https://pub.nikkan.co.jp/uploads/book/pdf_file5ef2f04207a83.pdf


生産管理上は7つのムダ取りが有効ですが、経営上は遊休資産が勿体ないので、在庫を持つのが正解のような気がしています。
(もしトヨタ系とJITで要求されることがあれば、この辺りは交渉の余地があると思います)


というわけで、結局は在庫を作ることになるでしょう。
在庫数の分析は簡単です。
月当たりの生産数収支を足し算していけばOK。
もし、月当たり生産数収支がマイナスでも、在庫で対応しきれる例はたくさんあります。
ピーク時に在庫対応で賄いきれるなら問題なし、と判断します。


設備を増強する場合準備期間が何か月必要か

安定的に需要が伸びる場合、残業による対応や在庫を作る事による対応だと出荷数が間に合わなくなります。
最後の手段として「設備投資」をする事になるんですが、「いつ」「何台」設備を追加するかによって経営の数字に影響が出ます。

早い段階から設備を入れて動かさないと設備の価値が目減りするし、間に合わなければ出荷に影響が出るので、設備の買い増しは一つの経営判断です。


ここで必要なのが、収支の予測です。
いつ設備が足りなくなるのかを事前に知っておけば、いつ発注していつ設備が届いていつから量産できるかを判断する材料になります。


方法は2つあります。というか2ステップですね。

  1. グラフによる収支の見える化

  2. 在庫予測による出荷量不足の予知


グラフによる収支の見える化

グラフによる収支の見える化は、事前に作った収支表をグラフに変えるだけでOKです。

▼客先Forecstと自社内設備の生産能力を比較したこの表を


▼グラフにして見える化する


すると感覚的に、「〇月までは在庫で対応できそうだ」みたいな戦略が見えてきます。
感覚をデータで裏付けするために、在庫の分析もします。



在庫予測による出荷量不足の予知

感覚的にいつ頃設備が必要かを確認したら、具体的な設備追加のタイミングを確認します。

先ほどのグラフの例を見ると、雰囲気的には在庫を作れば対応できそうに見えました。


次に在庫量分析で、データによる裏付けを試みます。

▼この状態だと、客先の予測データが正しくないと欠品を起こすなと分かります


感覚とデータは意外にもマッチしないなという良い例ですね。


▼設備の台数を微調整して、もう一度確認します。


すると、在庫対応しながら設備の導入を待てるなと判断ができます。
この場合の設備追加グラフはこんな感じ。

あとは時がたてばたつほど予測の精度が上がるので、その時に具体的な台数を決定すればOKです。


設備追加時は客先に工程変更を出す必要があります。(自動車業界の場合)
したがって、変更回数は少ない方が楽なので、上のグラフのようなタイミングで提出するのが良いんじゃないですかね。


最近は生産設備の納期が遅れています。
元々3か月で見ていた汎用機が6か月待ちになったり、もっとかかったりしています。
客先とも設備業者とも、密にやり取りして、事前に手を打てるように注意するのがオススメです。



最後まで読んでいただきありがとうございました。
上の記事で使っていた生産能力計算ツールですが、ノートの有料部分にて販売しています。

できることは

  • 自社の生産能力を把握できる

  • 出荷量が満足できるかどうか確認できる

  • 設備投資のタイミングを判断できる

  • 客先への生産能力報告資料としてそのまま提出できる

  • 生産手配をする計算ツールとして利用できる

などなど、出荷数に関係する内容であれば大方網羅できるようになっています。
マクロを使用せず、簡単な計算式だけで作成しているので、自分に合わせてカスタマイズする事も容易です。


購入者様限定サービス
いま私たちが販売中のツールを、購入者様向けにカスタマイズしてほしい
エクセル計算で出来そうなこんな事を、ツールにしてほしい
アウトプットに関わる重大なバグを見つけたので修正してほしい

などなど、「ものづくり王国にっぽん」から提供できるサービスについての相談をお受けいたします。(新規製作については別途見積もりいたします)

相談時に使用できる連絡先も同時に載せておくので、お気軽にどうぞ。
購入後に見える部分に表示しておきます。

ここから先は

370字 / 1画像 / 1ファイル

¥ 4,980

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?