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『香害は公害──「甘い香り」に潜むリスク』。9月10日発売 近隣配布用チラシも作りました。

各省庁の絵に描いたような「タライ回し」

本書の筆者、NPO法人ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議理事(JEPA)の水野玲子さんとお目にかかったのは2年ほど前。衆議院会館で行われた各省庁(消費者庁、厚生労働省、経済産業省、文部科学省)との交渉を兼ねた市民集会の席でした。

各省庁から数名の担当者が出席し、全国各地から体調不良を押して参加した被害者、化学物質過敏症などを発症した人たちらが集まりました。各省庁の担当者は、被害の訴えや実態に対し、また原因究明への願いにも、絵に描いたような見事な「タライ回し」の発言で時間は過ぎていきました。

このとき行政担当者と相対したお一人が水野玲子さんでした。水野さんはじめ前列に並んだグレイヘアの女性たちのカッコよかったこと。静かに鋭くしぶとく、ときには子どもに言い聞かせるように、「香害」とその被害について訴えておられました。

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香害を感じる人の共通の訴え

今回の香害本は、「香り物質」また関連物質について、海外の研究者が示す科学的根拠やそれを受けての規制、その対策についてもデータや資料にページを割いています。

これまで、弊社の香害本は、その被害の声や空気環境をテーマに編んできました。しかし、そうした被害の声があっても日本では、「香害を感じている」といえば、専門家や医師も、まだまだ「気のせい」とか「身体性表現障害」といった浅い議論がほとんどで、短絡的な向精神薬の処方や、心理療法を進めます。

研究者や医者がそう結論して、個人的な性質の問題としていれば、行政も手出しをしないままで許されてしまいます。かくして、被害者は置き去りで、仕事を失い、家には安住できず、友人や家族すら失うような事態が起こっています。

それが、子どもや教育関係者のなかにも広がっています。教室には、柔軟剤や合成洗剤、制汗剤などの臭気が溢れ、反応する子どもにとっては、とても長い時間を過ごせる場所ではないのです。

反応する子ども? これは反応する人の問題なのか、それとも体調不良になるような反応を引き起こす商品や物質の問題なのか。

「香り」「臭気」に反応する人は、病者なのか、警告者なのか。どう思われますか?

反応を起こすのは、多くが1990年代に私たちの暮らしの中に取り込まれた新しい生活用品です。代表が柔軟剤と合成洗剤、消臭剤、制汗剤、ヘアムース、化粧品……。

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柔軟剤などの香りがしなければ、反応は起きない

「香害」を訴える人のなかには、「化学物質過敏症」と診断された人もいます。過去「シックハウス症候群」を発症した人も。

この「化学物質過敏症」を発症すると、農薬、塗料、ビニール、水(塩素)、床材、カーテンなどに添加される難燃剤、野焼き、煙草などの極微量な周囲の人が気がつかない程度の化学物質に反応が起きるようになります。その製品を製造する過程で使われたり、また空気や水などと触れたことによって化学変化が起きたり、そこで発生する化学物質で。臭気を感じなくても、体調が悪くなることもある。

すると、花粉症のような粘膜の炎症から、アレルギー反応に似たものや、自律神経系の乱れと診断されるようなものまで、症状の訴えは多岐にわたります。二次障害的に、精神科で診断を受けるような症状で困っている人もいます。

原因はわかりません。ただ、いずれもほとんどの人が柔軟剤はNG。柔軟剤や合成洗剤の香りには反応があるということです。被害を受けて数年も苦しんだ者からすると、原因はなんであれ、せめて柔軟剤や合成洗剤が近隣から、職場から、学校から消えてなくなれば、災難のひとつは消えるのだということです。

空気から心身への危害を受けるなんて、あり得るけれどあり得ない。生き物の生存に関わる空気ですから、「痒い、痛い」ではすまない問題が起きるのです。しかし、これほど想像力が求められる問題もありません。

空気を疑う者は「おかしな人」になりがちです。

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将来に禍根を残すことにならないか?

なぜ、「香料製品」がここまでの凶器になるのか。それは未解明です。いろいろな仮説はありますが、社会的なコンセンサスがえられていない。被害の声を代弁するような科学的根拠を引き出してくれた人はまだありません。

でも、被害の声が拡大していくなかで、一部の人の特異な症状としていて無視をすることは、将来に禍根を残すことにならないでしょうか。

この本に書かれた諸外国の対応や対策にあるように、「人工香料」はわたし達にとって、けして歓迎するものではない。まして、過剰になった社会になったいま、残念ながら一つの文化でもあったアロマや香道や香水の楽しみも、化学物質過敏症を発症すれば奪われます。

2020年現在、海外から輸入される香料は年間1トン。

「少しだから我慢できるでしょ?」とはとても言えません。このブックレットが、「香害」はみんなの空気問題であり、「香料」の影響はそう甘くないことを伝える役割を全うできますように。

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拡販のチラシはご希望の方にお送りします。〜50枚で送料込み200円をご負担ください。

『香害は公害』筆者 水野玲子プロフィール:

環境問題をテーマに私たちに発信を続けるジャーナリスト。著書に『新農薬ネオニコチノイドが日本を脅かす』(七ツ森書館)、共著書に『虫がいない 鳥がいない』(高文研)、『環境ホルモンVol.1-4』(藤原書店)など。

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