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『こども性教育』実録:愛と希望を語る90分。筆者・宮台真司の意図。

「『挫折の先取り』で『恋愛』を不可能にしない」(本文136頁より一部転載)

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「力」を回復して生きづらさを克服するには

今回は、難しくなった「恋愛」を、回復させることを目標にしました。子どもの多くが、いまでもロマンチックラブの意味論の内側で、願望を維持しているからです。

ただし本文のとおり「恋愛」は「性交」を必要としませんが、大人には言外・法外・損得外の「同じ世界」で「一つになる」ための「性交」への道を話してきました。

人類学や民俗学が記す、言葉と法と損得に閉ざされた「社会」の外に出て「力」を回復するための、ただの「性交」ではない「性愛」は、「恋愛」以前から重要でした。

本文で話したように、カテゴリーを超えて「黒光りした戦闘状態」で「一つになる」経験から、小学生が見放されたのは、八〇年代の「新住民化」以来のことです。

九〇年代から「登校拒否」「不登校」「ひきこもり」の順で社会的退却が話題になったのは、「力」を回復できないので生きづらい人が、増えたからだと思います。人類学や民俗学が記すように、言葉と法と損得へと閉ざされた「社会」の外に出て言外・法外・損得外でシンクロする方途は、「性愛」に加えて「祝祭」もあります。

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ならば「性愛」にこだわらなくてもいいとも思えますが、残念ながら「祝祭」も消えています。九六年からのクラブの頽落が、「祝祭の街」の消滅を象徴しています。

「性愛」も「祝祭」も言外・法外・損得外でシンクロする能力が不可欠なので、この能力を失うと、「力」を取り戻させてくれる「性愛」も「祝祭」も不可能になるのです。

「祝祭」の回復については、本務校のゼミにオブザーバー参加する多くの表現者と考え中ですが、大人数を必要とする「社会の問題」なので、ふつうの人には困難です。

それに比べて「性愛」の回復は、自分と相手という「実存の問題」なので、「力」を回復して生きづらさを克服するには、「祝祭」よりも容易な道です。

大人向けのワークショップでは、〈ただのセックス〉と〈祭りのセックス〉と〈愛のセックス〉のあいだの関係をどう考え、実践すればいいか、長らく話してきました。

いずれにせよ、みんなは、「生きること」も「死ぬこと」も大差ないと感じられるような深層を完全に欠いた表層にすべてを覆われた時空の、外に出たいはずです。

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