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2023年10月15日(日) ピクニック

朝起きて窓を開け、心地よい風を浴びた瞬間に

「今日はピクニックだ!」

と決めた。

春や秋のピクニック日和は、本当に一瞬だけ。
今だ!と思ったタイミングで
ピクニックをしなければならない。

ピクニックと言っても、大それたことはしない。

タッパーに米を詰めて、近所の商店街へ向かう。

八百屋さん、花屋さん、天ぷら屋さん、
魚屋さん、韓国惣菜屋さんなど、
一通り見るんだけど、
いつも決まって同じお肉屋さんに辿り着く。

このお肉屋さんのコロッケが大好きだ。

久しぶりに来たら、ショーケースに

「せやねん!で紹介されました!」

と大きなポップ。
見たら「ローストビーフ寿司」が
せやねんで紹介されたらしい。

肉屋のローストビーフ寿司なんて
美味しいに決まっている。

しかもせやねんで紹介されただなんて。
「せやねん」と「どこ行こ」で紹介されたものは
絶対いいものに決まっている。

だけど、
今日は米を持ってきてしまっているので、
これ以上の米はいらない。見送り。
また今度ね。

コロッケ1つ、と言う直前に、

「チーズチキンカツ、揚げたてだよ」

とおばちゃんが言うものだから、
それも買っちゃう。

商店街のすぐ南にある公園へ行き、
日陰のベンチを陣取る。

公園は大量の家族連れで賑やか。
子どもがあちらこちらで走り回っていて、
とても穏やかな気持ちになる。

いそいそとタッパーを取り出し、
米に揚げ物を2つどどんと乗せる。

あらまあ、わんぱく弁当。

米が寂しそうだからきんぴらごぼう(冷食)も
詰めてきたはよかったが、
茶色弁当の要素が強まっている感じ。
まあいいでしょう。

いただきます。

揚げたてチーズチキンカツ、うますぎ。
ナイスチョイス。

ゆっくり食べながら、公園を見渡す。

ボールを蹴って遊ぶ親子3人、
ブランコを漕ぐ兄弟、
彼らを動画に収めるパパさん、
どこかから取ってきた植物を振り回す少女たち……。

ぼーっと辺りを見渡していると、

「それ、チーズチキンカツですか?」

と男性の声。
気づいたら右側に、
30代くらいの男性が立っていた。

「そうですよ」

と私は断面を見せる。
チーズがはっきりと見える断面。

「あ、チーズだ……」
とリアクションをしてくれる男性。

「商店街のお肉屋さんのですよね」

「そうですよ」

見ると男性の手元には、
お肉屋さんのローストビーフ寿司が!

「え、それもしかしてローストビーフ寿司ですか」

「そうですよ」

なんと……。

「美味しそうだなぁって思ったんですよ、ローストビーフ寿司」

「僕も我ながらナイスチョイスだとは思ったんですけど、米を持ってくるっていうのは玄人ですね。米さえ持ってきていれば、僕もチーズチキンカツへ行っていましたよ」

と互いのチョイスを称え合う。

「あそこの肉屋さん、よく行くんですか?」
と男性。

「ええ、コロッケが好きで」
私は米に乗っけたコロッケを箸でツンツンする。

「ああ、コロッケも美味しそうでした」
とゆっくり頷く男性。

男「僕は引っ越してきたばかりで、ここの商店街は初めてきたんですよ。天気がいいので何か買って公園で食べようと思ったら、肉屋さんのローストビーフ寿司が目に入りまして」

私「この商店街初めてなんですか!初めてであのお肉屋さんはお目が高いですね。普通はたこ焼き屋さんとかお寿司屋さんへ行っちゃうものですよ。やりますね、お兄さん」

男「たこ焼きの誘惑も負けそうになりました」

私「この商店街、何店舗かたこ焼きあるので巡るのも楽しいと思います」

男「ああ、いいですねぇ」

私「一番安いところは何の味もしないので気をつけてくださいね」

男「何の味もしないんですか」

私「ええ、それはもう何の味もしないです」

男「……あの、よかったら隣に座ってもいいですか?」

知らん男の人は普通に怖いので

「すみません、無理です」

とお断りして離れてもらった。
ごめんなさいね。

男性の背中は少し寂しそうだったけれど、
あなたにはローストビーフ寿司があるから
寂しくなんてないですよ、と思った。

コロッケも熱々のうちに食べ終えて、完食。

秋のピクニック、最高だなぁ。
近いうちにローストビーフ寿司リベンジしよう。

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