2023年10月14日(土) 小雨の日
用事を終えて、日本橋付近を歩いていた。
最近は天気がいい日が続いていたけれど、
久しぶりの傘の出番の日だった。
傘を差すの「差す」って面白い言葉だ。
動きとしては「傘を開く」なのに、なぜ傘を差す、と言うんだろう。
気になって調べてみたら、「差す」には
「物を上方または前方へ伸ばす」
という意味があるらしい。
へー。
傘を差すって、傘を開く行為のことを言ってたわけではないのか。
勉強になりました。
と思っていたら
「お姉さん、傘に入れてくれません?」
と突然に右側から全身真っ白な青年。
全身真っ白、と言うのは印象の話で、
よく見たらきれいな金髪、上下白のジャージ、
白いナイキのスニーカー、そしてとても色白な顔。ひと懐っこい目。
見知らぬ人に話しかけるときの第一声が
「すみません」ではなくて
「お姉さん」なのは必ず商売人だと思っている。
この真っ白青年も商売人の顔をしている。
商売人に話しかけられたら拒絶するのではなく、
断る方向に話を進めていくのがマイルール。
「傘、忘れたんですか?」
と尋ねると、
「そうなんですよ、今日降ると思ってなくて」
とおっしゃる。
うそだ、朝から降る雰囲気してましたよ、
と思ったけれど
それを言う前にすかさず青年、
「お姉さんこれからどこ行くんですか?」
と質問。
「お笑いのライブを見に、森ノ宮へ行きます」
「え、難波やなくて?」
「難波やなくて」
「へー、誰が出るんすか?」
「タモンズさん、デルマパンゲさん、ツートライブさん、黒帯さん、鬼としみちゃむさん、侍スライスさんです」
「へー」
真っ白青年に、
どう返すか一瞬のためらいが見えたところで、
「だからごめんなさいね」
と微笑み。
これで商売人真っ白青年は察してくれて、
「ライブ楽しんでね」
と言って横断歩道を渡っていった。
なんで最後タメ口やねん。
ふー。
突然の出来事に一息ついて、
真っ白青年の行方に目をやると、
早速別の女性に話しかけている。
どうやらまた「傘に入れてくれません?」
でいっている様子。
すごいなぁ。
信号待ちの間、
2人のやり取りを遠目からしばらく眺めていた。
ターゲットとなったロングスカートの女性は、
真っ白青年と少し会話をしたあと、
リュックをごそごそし始めた。
そしてそのリュックから折りたたみ傘を取り出し、
真っ白青年に渡してすっと立ち去った。
真っ白青年は一瞬ぽかんとして、
ロングスカート女性を引き止めようとしたけれど、
女性はもう地下へ行く階段を降りていた。
雨の日に傘を2個持っている素敵お姉さん、
多分渡さんでもいい1個やったとは思うけど、
太陽が全ての人を照らすのと一緒なんやろうな。
傘を欲している人がいれば、
どんな人であれ傘を渡す。うん、素敵。
私も雨の日は傘を2個持ちしよう、と思った。
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