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2024年2月10日(土)こたつでみかん

ふと、
最近くだものを食べていないな、と思う。

記憶を辿れば、
クリスマスケーキに乗っていたいちごが最後。
なんと、今年に入ってくだものを食べていない!
もう2月なのに、由々しき事態だ。

そういうわけで、商店街へ行く。

土曜日の昼のにぎわい。
豊かだなあ。

くだもの屋さんには
当然ながらたくさんのくだものが並んでいる。
いちご、ブドウ、りんご、みかん、はっさく、
ポンカン、デコポン、いよかんなどなど。

しかしながらくだものは
一人暮らしフリーターからすると
まあまあ贅沢品だ。

いちごやブドウはなかなか買えない。
時期的にも価格的にもみかんかな、と絞り込み。

みかん盛り盛りの青いカゴを持ちあげて、
無口なおじさん店主に
「これをお願いします」と差し出せば、
みかんたちがビニール袋にどどどっと吸い込まれ、
はいよ、と渡される。

どっしりと重たい果実を抱えているというのは、
何とも豊かなことだ。

そのまま駅へ向かうと、
婦人向けのカバン屋さんの店先に、
少しだけパンが並んでいる。
食パン、マフィン、カップケーキ。

この商店街にはパン屋がないので、
これは嬉しいと思って食パンに手を伸ばせば、
店の奥からおばちゃん店主が登場。

「それ西区のパン屋から取り寄せてんねん。おいしいで」
とおっしゃるので即購入。

お金を渡そうとしたら、
「あんな、今動画見ててんけど、めっちゃ面白いのよ」
とおばちゃん。

「めっちゃしゃべんねん。オウムが」
「オウムが?」

「見てく?」
と店の奥へ招かれる。

30インチくらいのディスプレイでyoutubeを開き、
オウムがしゃべっている動画を流している。

しゃべるオウムを見て
ゲラゲラ笑うおばちゃん。

世の中にはいろんなお笑いがある。

「ほら、ようけしゃべるやろ」
「ようけしゃべりますね……」

とは言ったものの、
鳥好きでも何でもない私が見かけるオウムは
大多数が「しゃべるオウム」であり、
「しゃべらないオウム」を見る方が少ない。

確かに人間以外の動物が
日本語をしゃべっていると思えばすごいけれど、
「これ日本語しゃべってるやん!」具合で言えば
空耳アワーの方がテンション上がる。

「これもう1ヶ月くらい見てんねん」
「1ヶ月も?」
「そやねん。好きやねんな」
「好きなんですね」

そのまましばらく一緒に動画を見ていたけど、
10秒くらいで飽きたので、
「そういえば!」とわざとらしく言って、
握っていた小銭をおばちゃんに渡す。

「またおいで」
「また来ます」

すっとお店を出ると、
帰り際におばちゃんが
「あんたずっとオウム返しやないの」
と一言。

「わたくし実はオウムでして」
と言えば

「ようけしゃべるねぇ」
とおっしゃる。

「それほどでも」

帰って動画のオウムを調べたら、
今は亡きオウムだった。

悲しくなる筋合いもないのだけど、
ちょっと悲しくなりながら
こたつでみかんを食べた。

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