見出し画像

産地リポート #1 ~都民のレジャー支える夏野菜苗~

もうすぐゴールデンウィーク!みなさんはどんな連休を過ごされるのでしょうか。

今年は4月とは思えないような気温の高い日もあり、蒸し暑い日もありました。季節が2か月前倒しになったような感じがします。

今回から新たに始める企画『産地リポート』。
JAにしたま管内の農産物や生産者にスポットをあて、農産物の知られざる魅力や生産現場のリアルをお伝えします。


コロナ禍で再び注目された家庭菜園

2020年から今もなお続く”コロナ禍”。ライフスタイルが代わり、家での過ごし方やレジャーも大きく変化しました。
おうち時間が増えたことで、自分で野菜や果物を育てる「家庭菜園」は再び注目されています。

JAにしたまがある東京都の西多摩地域は、野菜苗の生産が盛ん!
管内の直売所は、4月下旬からゴールデンウィークにかけて、地元の生産者が栽培した夏野菜の苗がたくさん並びます。
また、JAにしたま管内の野菜苗は、地元直売所だけでなく都内各地のJAの店舗や、近隣の園芸店に出荷され、都市住民の野菜作りを支えているのです。

産地リポート第1回目は、瑞穂町で野菜苗を生産直売する、中垣園芸さんを紹介します。


中垣園芸

ハウス7棟で、秋から冬にかけてはシクラメンと花壇苗、春は野菜苗を温室直売する農家さんです。野菜苗は約8万ポットを生産し直売するほか、近隣の園芸店にも数多くの苗を出荷しています。
中垣さんは、JAにしたまの青壮年部(地域農業の振興を図る後継者や若手農業者の集まり)の部長を現役で務める、地域農業の担い手です。

野菜苗を生産しているハウスに、いざ潜入!

ハウス外観
ハウスの向かいには駐車場も整備されています

駐車場に車を止めてハウスの中へ―。

ものすごい数の野菜苗がお出迎え!一体ここには何ポットあるのでしょうか・・・!家庭菜園がお好きな方は、ハウスに入った瞬間テンションが上がること間違いなしです。

ハウスに入ると目の前にこの張り紙があります。1本100円!中垣さんが対面で販売してくれます。や、やすい!!


販売している野菜苗の一部をご紹介

トマト苗


ミニトマト苗

イエローアイコという黄色いミニトマトの品種は中垣さんのオススメだそうです


なす苗

中長なす、長なす、接ぎ木のなすなどがあります
鉢ごと売っているものもあります!持って帰って植え替える必要がないので楽ちん!


きゅうり苗


かぼちゃ苗

きゅうり苗と似てますが、少し形が違うのがわかりますか?


ピーマン苗

ししとう、鷹の爪も!


スイカ苗

大玉、小玉があります


オクラ苗


ゴーヤ苗

それぞれの品目でいくつか品種があり、あわせて約20種類を販売しています。

苗はどれも太くてがっちりしていて生き生きしています!


野菜苗ができるまで

中垣さんは10月から12月にかけてシクラメンの直売をしているので、シクラメンの販売が終わると、すぐに野菜苗の栽培がスタートします。

種まき~発芽


1月から2月にかけて、各品目の栽培期間にあわせて時期をずらしながら、プラグトレーと呼ばれるプラスチックの育苗資材に1粒ずつ種をまいていきます。
プラグトレーは小さな区画に仕切られています。土の量が制限され少ないので、乾燥しやすく、水やりがとても難しいといいます。

プラグトレーにまいた種が発芽しました
苗の赤ちゃんみたいですね


植え替え


この小さな小さな苗を、ポリポットと呼ばれる資材に植え替えていきます。

ポリポットは、実際に販売するときに苗が入っているポットのこと。ポットに植え替えたら、ここから4月の販売開始に向けて苗を大きく育てます。

とはいっても、この時はまだ3月上旬。まだまだ寒い時期です。
苗として販売する夏野菜の品種は、植物の栽培ごよみでは、本来であればもっと気温が高くなってきてから種をまくもの。
そのため、ビニールをトンネルのようにかぶせて保温し、寒さにあてないように育ててあげます。


3月下旬。少しずつ大きくなってきました!

苗が大きくなってくると、ポットの下に空いている穴から根が出て、地面に根を張ろうとします。また、苗が成長するにつれて葉が混み合い、風通しが悪くなり、病害虫の発生にもつながってしまいます。

それらを防ぐために、苗がある程度大きくなってきたら、ポットを1つ1つ手作業で移動させて苗同士の間隔を広げていきます。その数約8万ポット!

苗がこのくらいのサイズになってきたら、少し鍛えてあげます。
野菜苗は販売して終わりではなく、お客さんのもとに届いてからがスタートです。環境が変わっても丈夫に育つよう、苗作りの段階からハウスに風を入れて、寒さに耐えさせて、太くてがっちりした苗になるよう管理しています。


出荷、販売スタート

4月中旬、寒さの心配がなくなってきたらいよいよ販売がスタート!
今年は4月16日から苗の直売を始めました。(年によって日にちは異なります)

虫などがついていないか直前まで確認します


中垣園芸のあゆみ


野菜苗作りは3代目


中垣園芸が野菜苗の生産販売を始めたのは昭和25年ころ。中垣さんのお祖父さんは野菜と野菜苗の農家さんでした。
その後昭和50年代に、中垣さんのお父さんがシクラメンや花壇苗の生産を始め、花と野菜苗の二刀流経営が始まりました。

今でこそ苗をポリポットに植えた苗を販売していますが、昔はポットなんてものはなかったので、当時は土に植わっている苗を手ですくって販売していたそう。時代を感じますよね。

花の栽培技術を野菜苗栽培に応用

中垣さんが苗の生産を任されるようになってから、生産方法を変えたことがあります。それが育苗に「プラグトレー」を使うこと。

以前は、種をまくときは、苗床(なえどこ)といわれる育苗箱に種をばら蒔きしていたそうですが、植え替えるときに必要以上に根を切ったりいじってしまい、苗の生育にばらつきが出ていました。
根が傷めば植物にも大きな負担になり、生育不良が起きたり害虫や病気の被害を受けやすくなります。

そこで中垣さんは、花の栽培に使うプラグトレーを野菜苗づくりにも使えないかと考え、育苗の仕方を大きく切り替えました。
その結果、根を傷めずに植え替えができるようになり、作業の効率化や苗の生育が良く揃うようになったそうです。



口コミで評判広がる

中垣園芸では直売をしているので、お客さんから直接感想を聞けるのが強みだといいます。中でも、中垣園芸の苗を使っている畑を見た別の方が、どこの苗を使っているのかわざわざ調べて、買いに来てくれることもあるんだとか!

「どこの苗か気になって調べてきました」
「おすすめされたので買いに来ました」

など、自分からの宣伝ではなく、口コミでお客さんが増えてるのはとても嬉しい、と中垣さんは話してくれました。


今年は家庭菜園にチャレンジ!


野菜はJAの直売所やスーパー、八百屋さんで気軽に買うことができますが、あえて時間をかけて、自分で作ってみるのも面白いものです。

お子さんがいるご家庭では、「植物」「食べること」への興味や関心を育むのにも、とってもオススメです!
野菜を作る楽しさや大変さ、難しさを学べたり、食べ物に対する感謝の気持ちも生まれます。

今回紹介した中垣園芸や、JAの直売所では、5月中旬頃まで夏野菜の苗を販売します!
ぜひ、今年は家庭菜園でおうち時間を充実させてみてはいかがでしょうか?


店舗情報

中垣園芸
(住所)東京都西多摩郡瑞穂町長岡長谷部165
(電話)042-556-1771

JAにしたま管内の直売所