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社長交代③

 ここ何十年もの間、仕事でもプライベートでも「求められている役割」として考え、決断することがほとんどだった。そんな私にとって、何者でもない「私」がどう感じるのかを見つめる行為は思った以上に大変なことだった。

 何をどうしたら良いかわからず、2023年はとにかく心動くものを見過ごさないようにしてみた。そして、できるだけ「後先考えずにやってみる」を心がけた。

  すると不思議と「やりたいこと」が見えてきて、「やってみよう」と思え、さらには「チャンス」も目の前に現れた。

 仕事では母校である看護学校の講師や企業でのセミナー講師、部門を超えた採用活動など、お声かけ頂いて心が動くもの全て挑戦させてもらった。全てのスケジュールがパズルのようにうまくハマったのは奇跡だった。  
 プライベートでは書道のお稽古を30年ぶりに再開した。これがとても楽しい。今では月2回、小中学生に混ざってのお稽古は私の癒しになっている。  
 通信制の大学では、同じコースの学友さんとの交流の場に加えていただき、充実した日々を送っている。2023年に出会った学友さんがいなければ、来年度は休学し、もしかしたらそのまま退学していたかもと思う。本当に良き学友さんに恵まれ、学ぶことに前向きにさせてもらっている。

 よくわからなかった「何者でもない私」を頑張って探してみたら、想像していたよりも遥かに好循環を生み出すことになった。

 今回の社長退任人事は会社の立て直しが完了したと言う社長の功績の証ではあるが、社長の意思ではかった。100%子会社としては致し方がない親会社の決定だ。組織人としては喜ばしいことのはずだけれど、どうにも寂しい。そんな人事だった。

  退任の日、最後にかけられた言葉は、
     「もっともっと楽しいことに流されてみてほしい」だった。

  当初は不安でしかなかったパーカー社長と共に過ごした1年半は30年の社会人生活の中で、私の「生きる」に最も影響した上司だったのかもしれない。私が変わる大きなきっかけをもらった社長には心から感謝をしている。「楽しいことに流される」にはちょっとまだ勇気が足りない。しかし、せっかく踏み出せたこの一歩を大切に、人生100年時代の後半戦、豊かに楽しく何者でもない私を大切にしていきたい。

                         おわり




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