第36回「金融商品取引法の一部を改正する法律案」について(シリーズ5)

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPビジネス・イノベーションは、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。
 
今回は、本年6月よりシリーズ1~シリーズ4にてお伝えしている令和5年3月14日に提出された第211回国会における金融庁関連法律案「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」(以下、「法律案」)についてのシリーズ5「その他の顧客等の利便向上・保護に係る施策」についてです。
 
ご存知の通り、令和5年6月21日に閉幕した通常国会にて、今回の法律案は成立されませんでしたが、継続審議中となっており、今秋の臨時国会での成立を目指すことになっています。
したがって、金融商品取引業者は、法律案の課題点を理解したうえで、今回の改正点に対する適切な対応の実施準備が必要となります。
 
 
今回は、「その他の顧客等の利便向上・保護に係る施策 ①」のトークン化される不動産特定共同事業契約への対応に関して、その課題点および改正内容について正しい理解と、今後必要となる対応について確認して行きたいと思います。
 
法律案の説明資料において以下の様に「課題」と「対応」が記されています。
 
【その他の顧客等の利便向上・保護に係る施策①】
トークン化される不動産特定共同事業契約への対応
※不動産特定共同事業とは、出資を募って不動産を売買・賃貸等し、収益を分配する仕組
 
【課題】
〇不動産特定共同事業契約に基づく権利を分散台帳技術(ブロックチェーン)を活用してトークン(デジタル)化し、流通させようとする動き
〇他の有価証券の性質を有するトークンは、金融商品取引法の対象とする規定が整備されているが、 不動産特定共同事業契約に基づくトークンは、有価証券に該当していなことから、不動産特定共同事業者が締結する不動産特定共同事業契約は金融商品取引法(以下、「金商法」という。)に基づく規制が未整備。

〇不動産特定共同事業法は、不動産事業に関する規制を規定するものであるため、現時点で分散台帳技術やトークン化に伴うセカンダリー取引の円滑化を想定した規制が置かれていない状況にある。
〇また、既に不動産投資に係る権利(例えば、受益証券発行信託における受益権や匿名組合出資持分)をセキュリティ・トークン化した事例があるほか、不動産特定共同事業においても分散台帳技術を活用する動きが見受けられることから、実効的な監督体制の整備が必要となっている。
 
【対応】
〇不動産特定共同事業契約に基づく権利のトークンについて、金商法の販売勧誘規制等に適用されます。
 
―具体的に必要となる対応―
〇不動産特定共同事業契約(不動産特定共同事業契約に基づく権利が、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示されるものに限る。)に基づく権利を、金商法上の有価証券とみなされる権利の定義に含める改正案が盛り込まれていることにより、不動産特定共同事業トークンが電子記録移転権利に該当することから、有価証券の募集・売出しの要件との関係において、不動産特定共同事業トークンは、金商法に基づく開示規制の適用対象とされるために下記の準備が必要です。
 
〇今回予定されている金商法の法改正に関連して、不動産特定共同事業法も改正案が公表されており、改正不動産特定共同事業法案では、同第5条第1項第7号においてセキュリティ・トークンの勧誘業務を「特定勧誘業務」と位置付けられていることから、特定勧誘業務を行う場合に不動産特定共同事業の許可を受けるためには、不動産特定共同事業の区分に応じて、事前に第一種金融商品取引業者若しくは第二種金融商品取引業者の登録又は適格機関投資家等特例業務の届出が必要となります。
 
―不動産特定共同事業契約に基づく権利のトークンの関連改正法案(抜粋)-
【改正法案金商法第2条第2項第5号ハ】一部抜粋
 
若しくは第百条の二第一項第一号に規定する事業を行う同法第二条に規定する組合と締結した共済契約、中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の二第七項に規定法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の二第七項に規定契約又は不動産特定共同事業法(平成六年法律第七十七号)第二条第三項に規定する不動産特定共同事業契約(同条第九項に規定する特例事業者と締結したもの及び当該不動産特定共同事業契約に基づく権利が電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示されるものを除く。)に基づく権利(イ及びロに掲げる権利を除く。)
 
【改正法案不動産特定共同事業法第5条】
第5条(許可の申請)
第三条第一項の許可を受けようとする者は、主務大臣又は都道府県知事に、次に掲げる事項を記載した許可申請書を提出しなければならない。
1~5(略)
6 不動産特定共同事業の種別(第二条第四項各号の種別をいう。以下同じ。)
7 不動産特定共同事業契約(当該不動産特定共同事業契約に基づく権利が電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示されるものに限る。)の締結の勧誘の業務(特定勧誘業務)を行おうとする場合にあっては、別表各号の上欄に掲げるその行おうとする不動産特定共同事業の区分に応じそれぞれ当該各号の下欄に掲げる登録又は届出に関する事項
 
【改正法案不動産特定共同事業法第6条】
第6条 次の各号のいずれかに該当する者は、第三条第一項の許可を受けることができない。
1~11(略)
12 特定勧誘業務を行おうとする場合にあっては、別表各号の上欄に掲げるその行おうとする不動産特定共同事業の区分に応じそれぞれ当該各号の下欄に掲げる登録を受けていない法人又は届出をしていない法人
 
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