第38回「金融審議会「資産運用に関するタスクフォース報告書(案)」の概要について」

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPビジネス・イノベーションは、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。

今回は、金融審議会市場制度ワーキング・グループ・資産運用に関するタスクフォースが本年11月22日の会合で議論した「資産運用に関するタスクフォース報告書(案)」の概要についてです。このタスクフォースは、本年6月16日に閣議決定されました「経済財政運営と改革の基本方針 2023」(※1)および「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」(※2)にておいて示された、成長と分配の好循環の実現に向け、「機関投資家として家計金融資産等の運用を行う、資産運用業の高度化やアセットオーナーの機能強化を強力に推進すべく、資産運用立国の実現に向けた取組を行う」ことが示されたことを踏まえ、市場制度ワーキング・グループにおいて、資産運用に関する制度的な枠組み等の専門的な検討を行うため設置されたものです。

(※1)「経済財政運営と改革の基本方針2023」の概略については、こちらのリンクにアクセスして内容をご参照ください。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2023/2023_basicpolicies_ja.pdf

(※2)「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」の概略については、こちらのリンクにアクセスして内容をご参照ください。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/ap2023.pdf


―「資産運用立国」の実現に向けた基本的な考え方-

家計からの投資の運用を担い、リターンを生み出す資産運用会社の高度化を図るとともに、企業への成長資金の供給を促し、その成果を家計に還元することで、「成長と分配の好循環」を推進するための「資産運用に関するタスクフォース報告書(案)」の概要は以下の通りです。

①     資産運用会社の高度化(家計を含む投資家へのリターン向上、投資先の企業価値の向上)

■投資運用業の参入要件の緩和(ミドル・バックオフィス業務の委託等)

ミドル・バックオフィス業務を受託する事業者に任意の登録制度を創設(行為規制(善管注意義務等)等を適用)ならびに登録業者に業務委託する場合には、投資運用業の登録要件(体制整備等)を緩和。

■新興運用業者促進プログラム(日本版EMP)の実施

金融機関・アセットオーナーによる優れた新興運用業者の発掘・運用委託を後押し。また、各主体による具体的な取組状況を公表、新興運用業者を一覧化したリスト(エントリーリスト)の提供および金融創業支援ネットワーク(注1)や拠点開設サポートオフィス(注2)等を拡充。

(注1)日本で拠点開設をする海外金融事業者(投資運用業、投資助言・代理業等)に対し、創業面や生活面の情報提供・相談・支援

(注2)新規に日本に参入する海外の資産運用会社等の登録に関する事前相談、登録手続及び登録後の監督を英語で実施

■大手金融グループにおける運用力向上やガバナンス改善・体制強化

大手金融機関グループにおいて、傘下資産運用会社等の人材育成を含む運用力向上やガバナンス改善・体制強化のためのプランの策定・公表。

■金融商品の品質管理を行うプロダクトガバナンスに関する原則の策定

資産運用会社による適切な金融商品の組成、管理、透明性を確保するためのプロダクトガバナンスに関する原則を策定※

※「顧客本位の業務運営に関する原則」の改訂

■投資信託に関する日本独自の慣行の見直し(一者計算の促進等)

基準価額の計算について資産運用会社と信託会社の双方で行う二重計算の慣行を見直し(業界における一者計算に向けた計理処理の標準化等の取組みを後押し)、ならびに基準価額の計算過誤の訂正に関するマテリアリティポリシー(重大性基準)について、各社の定める水準の適切性や投資家への周知の重要性を監督指針等に記載することにより投資運用業の参入障壁を緩和。

②     アセットオーナーに対する金融機関の取組み(顧客等の最善利益の確保)

■金融機関による顧客等の最善利益を確保する観点からの運用や、DC加入者への 運用商品の適切な選定・提案、情報提供の充実を促進

アセットオーナーから運用委託を受ける資産運用会社等は、アセットオーナーのリスク許容度等を考慮したうえで、最善の利益を確保するための運用、ならびに企業型確定拠出年金(DC)の運営管理機関(金融機関)は、加入者の最善の利益を確保する観点から、適切な運用商品の選定・提示や情報提供の充実等を行う。また、当局は、アセットオーナーを支える金融機関を適切にモニタリングし、必要に応じて改善を求めていくことが不可欠。

③     スチュワードシップ活動の実質化(日本企業・日本市場の魅力向上)

■企業価値向上に向けた対話促進のための大量保有報告制度の見直し等

スチュワードシップ・コードの趣旨を踏まえ、自らの置かれた状況(規 模・運用方針等)に応じた対応の促進や、協働エンゲージメントの取組みの積極的な活用、ならびに実効的なエンゲージメントの促進のための制度の見直し(大量保有報告制度における「重要提案行為」や「共同保有者」の範囲の明確化)が必要。

④     成長資金の供給と運用対象の多様化(スタートアップの活性化、収益機会の拡大)

■ベンチャーキャピタル向けのプリンシプルの策定

機関投資家からVCへの資金の流れの拡大に向けて、VCのガバナンス等の水準を向上させ、長期投資に資するアセットクラスとしてのVCの魅力を高めるため、「ベンチャーキャピタル・プリンシプル」を策定すること、VCが保有する有価証券の評価の透明性を向上させるために公正価値評価を推進。

■非上場株式を組み入れた投資信託・投資法人の活用促進

投資信託への非上場株式の組入れを行うための枠組み(自主規制規則)の整備、上場ベンチャーファンドの促進(開示頻度の緩和等)。

■投資型クラウドファンディングの活性化

企業の発行総額上限1億円→5億円(1~5億円は簡素化された開示様式を利用可)• 投資家の投資上限50万円→年収や純資産に応じた設定。

■事後交付型株式報酬に係る開示規制の明確化

企業が役職員に付与する譲渡制限付株式ユニット(RSU)等の事後交付型株式報酬について、有価証券届出書に代えて、臨時報告書の提出を認める特例の設定。

■非上場有価証券のセカンダリー取引の活性化(仲介業者の規制緩和)

非上場有価証券の取引の仲介業務への参入を促すため、プロを対象とし、原則として金銭等の預託を受けない場合は、第一種金融商品取引業の登録要件を緩和すること、私設取引システム(PTS)に ついては、取引規模が限定的な場合は認可を要せず、第一種金融商品取引業の登録により運営可能とする。

⑤     家計の投資環境の改善(金融リテラシーの向上、貯蓄から投資への推進)

■金融経済教育推進機構を中心とした金融経済教育の推進

家計が資産運用会社や金融商品を適切に選択するためには金融リテラシーの向上が不可欠であること、また、金融経済教育推進機構を中心に官民一体となって、金融経済教育に取組むことが重要。

■累積投資契約のクレジットカード決済上限額の引上げ(5万円から10万円に)

新しいNISA制度において、つみたて投資枠は年間120万円(月10万円)になることから、累積投資契約のクレジットカード決済上限額について、つみたて投資枠をカバーできるよう規定の見直し(5万円から10万円に)。

 

以上のような基本的な考え方の元、資産運用に関する総合的、体系的な対応として、報告書(案)に記載されている取組みが推進されていくことが期待されています。

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「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」について

本年6月よりシリーズ1~シリーズ6にてお伝えしてきました2023年3月14日に提出された第211回国会における金融庁関連法律案「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」(以下、「法律案」)について、今般、2023年11月20日に衆議院本会議で可決・成立されました。これを受けて、シリーズにてお伝えして参りました課題と具体的な対応について改めてご確認をいただければ幸いです。

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