第37回「金融商品取引法の一部を改正する法律案」について(シリーズ6・最終章)

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPビジネス・イノベーションは、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。

今回は、本年6月よりシリーズ1~シリーズ5にてお伝えしている令和5年3月14日に提出された第211回国会における金融庁関連法律案「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」(以下、「法律案」)についてのシリーズ6(最終章)となります「その他の顧客等の利便向上・保護に係る施策」②についてです。

ご存知の通り、令和5年6月21日に閉幕した通常国会にて、今回の法律案は成立されておらず、今秋の臨時国会での成立を目指すことになっております。金融商品取引業者においては、法律案の課題点を理解したうえで、今回の改正点に対する適切な対応の実施準備が必要となります。

今回は、シリーズ6(最終章)となります「その他の顧客等の利便向上・保護に係る施策②」に関して、その課題点および改正内容について正しい理解と、今後必要となる対応について確認していきたいと思います。

法律案の説明資料において以下の様に「課題」と「対応」が記されています。

【その他の顧客等の利便向上・保護に係る施策 ②】
掲示情報等のインターネット公表
【課題】
〇金融商品取引業者等のウェブサイトにおいて、 営業所に掲示する標識と同内容の情報の公表を求めるべき
〇上場会社の役員等が短期売買利益を得た場合の利益額等の情報(利益関係書類)をインターネットでも公表すべきとの指摘

【対応】
〇金融商品取引業者等のウェブサイトにおいて、 営業所に掲示する標識と同内容の情報公表を義務付け、インターネットを利用する者の利便向上や保護のための規定を整備

―具体的に必要となる対応―
〇「標識に記載すべき事項のインターネットによる公表の義務付け等」に関して、金融商品取引業者等(金融商品仲介業者を含む)は、下記の改正法案により、原則としてホームページの開設、登録標識に記載すべき事項と同様の内容に関して公開する必要があることから、まだ開設されていない金融商品取引業者等は喫緊の課題として対応を講じることが必要です。
同様に、金融サービス仲介業者にも同様の定めが新設されました。
(金融サービスの提供に関する法律を改題した「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」改正案第20条第2項)。

―掲示情報等のインターネット公表の関連改正法案-(抜粋)
【金融商品取引法改正法案第36条の2第2項】(標識の掲示等)新設
2.金融商品取引業者等は、内閣府令で定めるところにより、商号、名称又は氏名その他内閣府令で定める事項を電気通信回線に接続して行う自動公衆送信(公衆によって直接受信されることを目的として公衆からの求めに応じ自動的に送信を行うことをいい、放送又は 有線放送に該当するものを除く。第66条の8第2項において同じ。)により公衆の閲覧に供しなければならない。ただし、その事業の規模が著しく小さい場合その他の内閣府令で定める場合(その者が第29条の4の2第8項に規定する第一種少額電子募集取扱業者又は第29条の4の3第2項に規定する第二種少額電子募集取扱業者である場合を除く。)は、この限りでない。
(※事業規模が著しく小さい場合は、その他の内閣府令で定める場合にはかかる義務が免除されることになっており、詳細は内閣府令案の公表を待つ必要があります。)

【同改正法案第66条の8項】(標識の掲示等)新設
2.金融商品仲介業者は、内閣府令で定めるところにより、商号、名称又は氏名その他内閣府令で定める事項を電気通信回線に接続して行う自動公衆送信により公衆の閲覧に供しなければならない。ただし、その事業の規模が著しく小さい場合その他の内閣府令で定める場合は、この限りでない。

審判手続のデジタル化
【課題】
〇民事訴訟手続については、国民がより利用しやすいものとするため、2022年、手続のデジタル化を含む改正民事訴訟法が成立
〇一方、虚偽の財務書類の開示を行った企業やインサイダー取引を行った者等に対する課徴金納付命令に係る審判手続については、書面での課徴金納付命令等の送達や被審人による申立て、審判廷への出頭等が必要

【対応】
〇審判手続のデジタル化のため
• オンラインによる送達や申立て
• オンライン会議を利用した審問や意見陳述などの審判手続
• 事件記録の電子化に関する規定を整備

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これまで、法律案にて示されている金融商品取引業者における課題および対応について、正しい認識と今後対応すべく改正点についてシリーズ1~6にてお伝えし確認してまいりました。
今回の法律案の内容について理解し、適切な対応が実施出来るよう準備することが必要だと考えております。

■シリーズ1~5(概略)の振り返り
令和5年3月14日に提出された第211回国会における金融庁関連法律案は、デジタル化の進展等の環境変化に対応し、金融サービスの顧客等の利便の向上及び保護を図るため、課題点があった「顧客本位の業務運営・金融リテラシー」、「企業開示等」に関するに制度の整備を行うため、金融商品取引法等の一部を改正する法律案として提出されました。

令和5年6月 シリーズ1
●【顧客本位の業務運営の確保】
改正する法律案
〇最善の利益を考えた業務運営の確保
〇顧客への情報提供の充実

 令和5年7月 シリーズ2
●【金融リテラシーの向上】
改正する法律案
〇資産形成の支援に関する施策を総合的に推進するための「基本方針」を政府が策定
〇「金融経済教育推進機構」を創設
〇資産形成支援のための国と地方公共団体・事業者の協力・連携

令和5年8月 シリーズ3
●【企業開示制度の見直し】
改正する法律案
〇上場企業の第1・第3四半期については、金融商品取引法上の四半期報告書を廃止し、取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化
〇見直し後の半期報告書については、 現行の第2四半期報告書と同程度の記載内容、監査人によるレビュー、提出期限は決算後45日以内
〇半期報告書及び臨時報告書は、法令上の開示 情報としての重要性が高まることから、公衆縦覧期間(各3年間・1年間)を5年間(課徴金の除斥期間と同様)へ延長

令和5年9月 シリーズ4
●【その他の顧客等の利便向上・保護に係る施策①】
改正する法律案
―ソーシャルレンディング等に関する規定の整備―
〇運用報告書の交付が担保されていないファンドの募集の禁止
〇出資対象事業の状況に係る顧客への情報提供が契約等において、確保されていない場合における募集等を禁止

 令和5年10月 シリーズ5
●【その他の顧客等の利便向上・保護に係る施策①】
改正する法律案
―トークン化される不動産特定共同事業契約への対応―
〇不動産特定共同事業契約に基づく権利のトークンについて、金商法の販売勧誘規制等に適用

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