第42回「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案」の概要について

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPビジネス・イノベーションは、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。

今回のメルマガのテーマは、令和6年3月15日に国会に提出されました「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案」(以下、「改正法律案」という)の概要についてです。
この改正法律案は、金融商品取引法(以下「金商法」)と投資信託及び投資法人に関する法律(以下「投信法」)に対して改正を行うもので、以下の項目に関する制度について整備する内容となっています。

以下の各取組みは、令和6年2月の同コンプライアンス・メルマガにて紹介しております令和5年12月13日に内閣官房にて策定された「資産運用立国実現プラン」を具現化することを踏まえたものとなっております。

●資産運用の高度化・多様化のための取組み
新規参入促進を通じた資産運用の高度化・多様化によって、家計を含む投資家へのリターンや企業価値の向上、スタートアップの活性化を図るため、以下の取組みを実施
・「投資運用業者の参入促進」
・「非上場有価証券の流通活性化」

●企業と投資家の建設的な対話の促進のための取組み
企業と投資家の建設的な対話の促進によって、中長期的な企業価値の向上を促すため、以下の取組を実施
・「大量保有報告制度の対象明確化」

●資本市場の透明性・公正性の確保のための取組み
資本市場の一層の透明性・公正性を確保すべく、以下の取組を実施
・「公開買付制度の対象取引の拡大」

――改正法律案要綱―
「市場の透明性・公正性を確保しつつ、資産運用の高度化・多様化を図るため、取引所における競売買の方法による取引を公開買付規制の対象に追加するほか、大量保有報告制度において保有割合の合算が求められる者の範囲の明確化、委託を受けて投資運用業に関する業務の一部を行う業者の任意的登録制度の創設等の措置を講ずる必要がある。このため、金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正することとする。」

―金商法と投信法において必要な制度の整備を実施するための改正法律案―
●金融商品取引法の一部改正
1.株券等の公開買付規制に関する規定の見直し
⑴ 取引所における競売買の方法による取引を公開買付規制の対象に追加することとする。
(金融商品取引法第27条の2関係)
⑵ 公開買付けの実施が義務付けられる議決権割合を3分の1から100分の30に引き下げることとする。(金融商品取引法第27条の2関係)
⑶ 公開買付届出書を参照すべき旨等を記載した場合には、公開買付説明書に記載したものとみなすこととする。(金融商品取引法第27条の9関係)

2.株券等の大量保有報告制度に関する規定の見直し
⑴ 大量保有報告制度において保有割合の合算が求められる者の範囲に関し、金融商品取引業者等が経営に対して重要な影響を及ぼす行為を行うことを目的とせずに、株主としての権利を共同して行使する場合については、保有割合の合算が求められないこととする。(金融商品取引法第27条の23関係)
⑵ 現金による決済が予定されているデリバティブ取引のうち、一定の要件を満たすものを大量保有報告書の提出義務の対象とすることとする。(金融商品取引法第27条の23関係)

3.投資運用関係業務受託業に係る制度の導入
⑴ 任意的登録制の創設
① 投資運用関係業務受託業を行う者は、内閣総理大臣の登録を受けることができることとし、登録申請書の記載事項及び添付書類、登録拒否要件その他の登録手続に関する規定を整備することとする。 (金融商品取引法第2条、第66条の71~第66条の75関係)
② 投資運用関係業務受託業者について、誠実義務、忠実義務、業務管理体制の整備義務、禁止行為その他の業務に関する規定を整備することとする。(金融商品取引法第66条の76~第66条の81関係)
③ 投資運用関係業務受託業者に対する業務改善命令、業務停止命令、登録取消処分、報告徴取及び検査その他の監督に関する規定を整備することとする。
(金融商品取引法第66条の82~第66条の89関係)
⑵ 金融商品取引業者等に関する規定の整備
① 金融商品取引業者等が投資運用関係業務を委託する場合には、登録申請書又は届出書に委託先の商号等を記載させることとする。
(金融商品取引法第29条の2、第33条の8、第63条の9、附則第3条の3関係)
② 金融商品取引業者等の登録拒否要件等のうち、人的構成要件の内容を明確化するとともに、投資運用関係業務受託業者に投資運用関係業務を委託する場合には、当該業務の執行について必要となる十分な知識及び経験を有する役員等の確保に代えて、当該業務の執行の監督に係る役員等を確保していれば足りることとする。
(金融商品取引法第29条の4、第33条の5、第33条の8、第63条の9、附則第3条の3関係)

4.投資運用業に関する規定の整備
⑴ 金融商品取引業の登録申請書の記載事項として、投資運用業に関して顧客から金銭等の預託を受けない場合にはその旨を記載させることとする。(金融商品取引法第29条の2、第31条関係)
⑵ 投資運用業者が運用を行う権限を委託する場合に、運用の対象及び方針を決定する権限を委託してはならないこととし、それ以外の運用を行う権限の全部を委託できることとする。
(金融商品取引法第42条の3関係)

5.非上場有価証券特例仲介等業務に関する規定の整備
特定投資家等を対象とした非上場有価証券の仲介等の業務のみを行う第一種金融商品取引業者について、自己資本規制比率に関する規制、兼業規制及び金融商品取引責任準備金の積立に関する規制の適用を除外することとする。(金融商品取引法第2条、第29条の4の4関係)

6.私設取引システム運営業務に関する規定の整備
⑴ 流動性の低い非上場有価証券のみを取り扱い、かつ、取引規模が限定的である私設取引システム運営業務については、その業務を行うに当たっての認可を要さないこととし、第一種金融商品取引業の登録により行えることとする。(金融商品取引法第30条関係)
⑵ 金融商品取引業者が⑴の私設取引システム運営業務に関する業務の内容及び方法のうち公益又は投資者保護の観点から特に必要がある事項を変更する場合は、変更の30日前までに内閣総理大臣に届け出なければならないこととする。(金融商品取引法第31条関係)

7.その他 その他所要の規定の整備を行うこととする。

●投資信託及び投資法人に関する法律の一部改正
1.運用権限の委託に関する規定の整備
投資信託委託会社及び投資法人の資産運用会社の運用の委託に関し、金融商品取引法第42条の3の改正に準じて、所要の規定の整備を行うこととする。
(投資信託及び投資法人に関する法律第12条、第202条、第204条、第214条関係)
2.その他
その他所要の規定の整備を行うこととする。

●施行期日
この法律は、原則として、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとする。(附則第1条関係)

上記にてご案内しております改正法律案は、成立前の内容についてお伝えしているものとなっており、今後、国会の審議を経て、正式に成立される法律の内容が変更或いは修正等行われる可能性がありますことを予めご留意いただきますようお願いします。
今回、改正法律案の概要についてお伝えしてきましたが、今後は、改正法律案の各項目に関する制度・整備の取組みの詳細、ならびに国会の審議の経過について、引き続き紹介を行って参りたいとい思います。

当社は、国際金融都市を目指している東京都に協力して、金融商品取引業に関する登録申請手続き及び金融商品取引業者等の内部管理体制強化等に関する国内外の方々のご相談に対応させていただいております。ご心配な点等ございましたら、是非当社までお問合せ下さい。

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