第32回「金融商品取引法の一部を改正する法律案」について

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPビジネス・イノベーションは、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。

今回は、令和5年3月14日に提出された第211回国会における金融庁関連法律案「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」(以下、「法律案」)についてです。
デジタル化の進展等の環境変化に対応し、金融サービスの顧客等の利便の向上及び保護を図るため、課題点があった「顧客本位の業務運営・金融リテラシー」、「企業開示等」に関するに制度の整備を行うため、法律案として提出されました。

今回提出されました法律案については、それぞれの課題点、対応される改正点について「金融商品取引法等の一部を改正する法律案要綱」において、「我が国の金融及び資本市場をめぐる環境変化に対応し、金融サービスの顧客等の利便の向上及び保護を図るため(略)、金融商品取引業者に係る規制の整備等の措置を講ずる必要があるため、金融商品取引法等の一部を改正することとしたものである」と記載されています。
金融商品取引業者は、課題点に関する理解をしたうえで、今回の改正点に対する適切な対応の実施が必要となります。

今回は、「顧客本位の業務運営」に関して、その課題点および改正内容について正しい理解と、今後必要となる対応について確認して行きたいと思います。

法律案の説明資料において、以下のように「課題」と「対応」が記されています。
【課題】
・2017年3月、金融事業者が主体的に創意工夫を発揮し、良質な金融商品・サービスを提供することを促すため、 プリンシプルベースの「顧客本位の業務運営に関する原則」 を策定(金融事業者の判断で採択)。
・この「原則」に基づき、顧客の最善の利益の追求等の取組が進められてきたが、以下の課題が指摘されているほか、「原則」を採択していない、方針等を公表していない金融事業者も多く存在している。
〇金融商品の販売会社:リスクが分かりにくく、コストが合理的でない可能性のある商品を十分な説明なく推奨・販売がされている。(例:仕組債)
〇金融商品の運用会社:顧客利益より販売促進を優先した金融商品の組成・ 管理されている。
〇アセットオーナー(企業年金等):運用の専門家の活用不足、不十分な運用機関の選定プロセスとなっている。

【対応】
〇最善の利益を考えた業務運営の確保 
顧客等の最善の利益を勘案しつつ、誠実かつ公正に業務を遂行すべきである旨を金融事業者や企業年金等関係者一般に共通する義務として法定することで、顧客本位の業務運営の一層の定着・底上げと横断化
※「金融サービスの提供に関する法律」は、「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」に改称されます。

―具体的に必要となる対応―
今回の改正法案により改正される「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」第2条において、金融商品取引業者を含む金融サービスの提供等に係る業務を行う者(その役員、使用人を含む)に対して、横断的に、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に業務を遂行する義務を規定しています。
この新設規定に伴い、現在の金商法第36条(顧客に対する誠実義務)「金融商品取引業者等並びにその役員及び使用人は、顧客に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならない。」は削除されます。
今回削除される規定と新設される規定の内容の差異を理解し、新設される規定に基づき、顧客の最善の利益の追求等の取組みとして、金融商品取引業者を含む金融サービスの提供等に係る業務を行う者(その役員、使用人を含む)は、横断的に、改正点について適切な対応の実施として、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対し誠実かつ公平に業務を遂行する最善の利益を考えた業務運営の確保をする必要があります。

〇顧客への情報提供の充実
・金融商品取引業者等が、契約締結前に顧客の知識や経験等に応じて、契約内容の説明を行う義務を法定
・金融商品取引業者等が、デジタルツールを効果的 に活用して充実した情報提供を行うことを促すため、 書面を原則としていた規定について、顧客のデジタル・リテラシーを踏まえつつ、書面とデジタルのどちらで情報提供することも可能とするよう見直し
(注)見直しに際しては、顧客がその必要に応じて書面を求めることができる規定も整備[内閣府令改正事項]

―具体的に必要となる対応―
今回の改正金融商品取引法第37条の3第2項「金融商品取引業者等は、契約締結前に顧客に対し情報の提供を行うときは、顧客の知識、経験、財産の状況及び当該金融商品取引契約を締結しようとする目的(中略)に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度により説明をしなければならない。」とされることに基づき、業務を遂行する必要があります。
また、改正金融商品取引法第37条の3第1項(及び第37条の4第1項、第40条の2第4項、第42条の7第1項)にて、金融商品取引契約の締結前等における顧客に対する書面交付義務について、金融商品取引業等に関する内閣府令にて実質的説明義務について電磁的方法を含む情報提供義務に変更されることとなります。
これまで原則としていた契約締結前の書面交付は、契約締結前の情報の提供等として、顧客がその必要に応じて書面を求めることができると見直しされる内閣府令の規定に従い、書面とデジタルのどちらでも可として対応する必要があります。

金融商品取引業者の皆様におかれましては、各課題点についての現状の対応内容の把握・検証をはじめとし、各改正点についての具体的に必要な対応を実施するためのご参考にしていただければ幸いです。

当社は、国際金融都市を目指している東京都に協力して、金融商品取引業に関する登録申請手続き及び金融商品取引業者等の内部管理体制強化等に関する国内外の方々のご相談に対応させていただいております。ご心配な点等ございましたら、是非当社までお問合せ下さい。

以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?