第35回「金融商品取引法の一部を改正する法律案」について(シリーズ4)

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今回は、本年6月よりお伝えしている令和5年3月14日に提出された第211回国会における金融庁関連法律案「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」についてのシリーズ4となります。
 
今回は、「その他の顧客等の利便向上・保護に係る施策①」のソーシャルレンディング等に関する規定の整備に関して、その課題点および改正内容について正しい理解と、今後必要となる対応について確認して行きたいと思います。
 
法律案の説明資料において以下の様に「課題」と「対応」が記されています。
 
【その他の顧客等の利便向上・保護に係る施策】
ソーシャルレンディング等に関する規定の整備
(ソーシャルレンディング(融資(貸付)型クラウドファンディング)/一般的に、 インターネットを用いてファンドの募集を行い、投資者からの出資をファンド業者を通じて企業等に貸付ける仕組みをいいます。)

【課題】
〇現在は、運用報告書を交付する法令上のルールなし
(注)ファンド業者が有価証券に投資する場合は、法令上のルールが存在している。
〇ソーシャルレンディング等の運用行為を行う第二種金融商品取引業者が運営するファンドを巡って、 投資家への情報提供、貸付先に対する適切な審査やモニタリング等に関する問題等、投資家保護上において不適切とされる問題事案が発生
(指摘事例)
・担保設定をしていないものが存在しているにも関わらず、貸付債権が保全されているかのような誤解を与える表示
・ファンドの償還金に他のファンドの出資金が充当されている状況
・第二種金融商品取引業者の代表者が自身の借入れ返済等に出資金を使用している状況
・グループ会社の増資資金に出資金が充当されている状況
・正式な不動産鑑定評価を行ったものではなく、対外的に公表できない不動産価格をウェブサイトに掲載し、担保評価について誤解を与える表示
・ウェブサイト上の資金使途の表示と実際の資金使途が同一となっているか確認せず、事実と異なる表示のまま取得勧誘を継続した虚偽の表示
・ウェブサイトに記載した事業自体が実在しない虚偽の表示
・ファンド資金が流出しており、事業実態の確認や資金使途を把握するための管理態勢を構築していない状況
 
【対応】
ソーシャルレンディング等の運用を行うファンドを販売する第二種金融商品取引業者に対して、運用報告書の交付が担保されていないファンドの募集等を禁止
 
―具体的に必要となる対応―
「ソーシャルレンディング等のファンドに関する規定の整備」
ソーシャルレンディング等の運用を行うファンドの販売を行う第二種金融商品取引業者は以下のような内容の規程を整備する必要があります。
〇運用報告書の交付が担保されていないファンドの募集の禁止
〇出資対象事業の状況に係る顧客への情報提供が契約等において、確保されていない場合における募集等を禁止
なお、インターネットを用いて当該ファンドの募集を行う場合については、電子募集取扱
業務と同様の規定の整備が行われる予定のため、本改正案に従う準備が必要となります。
 
ソーシャルレンディングを行う第二種金融商品取引業者の不祥事が続いたことを背景とし、これに関連して金融庁のホームページにて「ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください」(令和5年6月23日更新)が掲示されており、ソーシャルレンディングへの投資にあたっては、投資者への情報開示が十分に図られているかどうか、また、高い利回りである場合、商品によっては、貸付先の返済遅延やデフォルトなどのリスクが高いことを十分に認識した上で、適切な投資判断が必要とされるとし、投資家に対して、注意するポイントが伝えられています。

・ソーシャルレンディングの仲介者が行う行為は、ファンド持分の募集又は私募の取扱い等に該当するため、金融商品取引法の規制対象となり第二種金融商品取引業の登録を受ける必要があるため、登録を受けていない業者の募集等は、詐欺的な商法である可能性が高いため、一切関わらないようにする。
・ファンド業者の信用力を慎重に見極め、取引内容を十分 に理解した上で、投資を行うことが重要
・ファンド業者からの情報提供の内容が理解できない場合、 申込みは行わない
・高い利回りなど限られた情報のみで投資の判断を行わず、 ファンド業者が提供する様々な情報を確認
・高い利回りである場合、商品によっては、貸付先の返済 遅延やデフォルトなどのリスクが高いことを十分に認識 することが大切
・利回りだけを強調し、リスクなどの情報をわかりやすく 提供していないファンド業者との取引は注意が必要
・ファンドの販売に従事する者への周知の徹底と今後の運用報告書の交付等の対応に留意が必要

―ソーシャルレンディング等の関連改正法案-
【改正法案金商法第29条の2第1項第6号】
(登録の申請)下線部分
第三条各号に掲げる有価証券又は金融商品取引所に上場されていない有価証券(政令で定めるものを除く。)について、電子募集業務(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって内閣府令で定めるものにより第二条第八項第七号又は第八号に掲げる行為(政令で定めるものを除く。)を業として行うことをいう。以下この章において同じ。)又は電子募集取扱業務(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって内閣府令で定めるものにより同項第九号に掲げる行為を業として行うことをいう。以下この章において同じ。)を行う場合にあっては、その旨。
(新設)
【改正法案金商法第29条の2第1項第10号】
(登録の申請)
貸付事業等権利(第二条第二項第三号から第六号までに掲げる権利のうち、当該権利に係る出資対象事業(当該権利を有する者 が出資又は拠出をした金銭その他の財産を充てて行う事業をいう 。第四十条の三の三において同じ。)が主として金銭の貸付けを行う事業であるものその他の政令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)についての第二条第八項第七号から第九号までに掲げる行為を業として行う場合にあっては、その旨。
【改正法案金商法第40条の3の3】
(出資対象事業の状況に係る情報の提供が確保されていない場合の売買等の禁止)
貸付事業等権利に係る出資対象事業の状況に係る情報が、当該貸付事業等権利を有する者に提供されることが当該貸付事業等権利に係る契約その他の法律行為において確保されているものとして内閣府令で定めるものでなければ第2条第8項第1号、第2号又は第7号から第9号までに掲げる行為をしてはならない。
【改正法案金商法第40条の3の4】
(出資対象事業の状況に係る情報が提供されていない場合の募集等 の禁止)
貸付事業等権利を有する者に上記②に規定する契約その他の法律行為に基づき提供されるべき情報が提供されていないことを知りながら、第2条第8項第7号から第9号までに掲げる行為をしてはならない。
【改正法案金商法第43条の5関係】
(第五款 電子募集業務及び電子募集取扱業務に関する特則)
現行金商法において電子募集取扱業務にのみ適用されていた特則(ウェブサイトを通じた情報提供義務)につき(現行金商法第43条の5)、電子募集業務も当該特則の対象とされ、電子募集業務又は電子募集取扱業務を行う期間中、当該相手方が閲覧することができる状態に置かなければならない。
 
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以上


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