第19回 「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」 等の一部改正(案)について

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPフィナンシャル・ソリューションズは、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。
今回は令和4年4月22日付で金融庁のホームページにて、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」 等の一部改正(案)が公表され、この改正案に対するパブリックコメントの募集が行われていることについてのお話です。

今回の「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」 等の一部改正(案)により、金融商品取引業者等が、買収等によりその株主構成に重要な変更等が生じた場合や長期に亘り業務を休止した場合等において、当該金融商品取引業者等に対し、当局はその事業の実態を踏まえたヒアリング等を実施し、業務の適切性の把握を行うことが追加されました。

金融ビッグバン以降の改革や規制緩和により、金融商品取引業者等に対し買収等が活発に行われるようになりました。買収等により収益の拡大やコスト削減等のシナジー効果が期待される一方で、買収の結果、投資者に不測の損害を与えてしまうおそれも起こりかねません。
今回の改正(案)は、現在および今後 企業買収を計画している企業に対し、買収した後は金融商品取引業者等として投資家に対する責任と事業運営の重要性についての認識を強く求めていくように読み取れます。

金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針について行われる具体的な改正(案)として、新設された監督指針は下記の通りです。

■金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針
Ⅲ.監督上の評価項目と諸手続(共通編)/Ⅲ-2 業務の適切性(共通編)

(新設)Ⅲ-2-15 長期に亘り業務を休止した場合等の監督上の対応 について 
(1) 金融商品取引業者が金融商品取引業を行うことができることとなった日から3月以内に業務(金融商品取引業者が二以上の種別の業務を行う場合は、その行ういずれか一の業務であっても対象となる。Ⅲ-2-15において同じ。)を開始しない とき、又は引き続き3カ月以上その業務を休止したときに該当するおそれがあると認められる場合は、当該金融商品取引業者の 事業の実態を踏まえつつ、当該金融商品取引業者に対して、その正当性について、深度あるヒアリングや、必要に応じて金商法(報告の徴取及び検査)第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、速やかに理由を把握することとする。
(2) 上記の検証の結果、例えば、以下のような状況が認められた場合は、「正当な理由がない」ものと考えられる(ただし、これらは例示に過ぎず、当該例示に限られるものではない。)。
① 業務の開始又は再開するための事業計画等が合理的な根拠に基づいて作成されておらず、その見通しが立たないと認められる場合 Ⅲ.監督上の評価項目と諸手続(共通編) Ⅲ-2 業務の適切性(共通編)(新設) 2 改正案 現行
② 引き続き3カ月以上業務を休止することにより、投資者に不測の損害が及ぶおそれがあると認められる場合
(3) 金融商品取引業者が正当な理由もなく業務を開始せず又は休止したと認められた場合には、金商法第 50 条第1項第1号の規定に基づく業務の休止に係る届出又は第50条の2第1項第2号の規定に基づく業務の廃止に係る届出(金融商品取引業 者が二以上の種別の業務を行う場合におけるその行ういずれか一の業務の廃止については、第31条第4項の規定に基づく 変更登録)の慫慂や、第51条の規定に基づく業務改善命令の発出を含め、必要な対応を行うものとする。更に、業務の開始 又は再開が見込まれないことが明らかな場合等業務を開始せず又は休止することに正当な理由がなく、その改善も期待できない場合には金商法第52条の規定に基づく業務停止命令等の 発出又は第 54条の規定に基づく登録取消しの発出等の対応も 検討するものとする。

Ⅲ.監督上の評価項目と諸手続(共通編)
Ⅲ-3 諸手続(共通編) Ⅲ-3-2 届出 (1)~(3) (略)

新設(4)買収等による株主構成の重要な変更等
金融商品取引業者その他の者からの届出又は報告等により、金融商品取引業者又は当該金融商品取引業者を子会社とする持株会社((4)において「持株会社」という。)の買収等に伴い、当該金融商品取引業者若しくは持株会社の株主構成に重要な変更等が生じ、又は生じるおそれがあることを知った場合で あって、当該金融商品取引業者若しくは持株会社の役員や重要な使用人の構成、事業内容、経営方針又は事業の決定方法等に重要な変更が生じ、又は生じるおそれがあると認められるときは、当該金融商品取引業者又は持株会社の事業の実態を踏まえつつ、深度あるヒアリングや、必要に応じて、金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めること等を通じて、事業の内容や業務執行体制等の変更の有無を把握し、業務を適切に遂行するための人的構成や体制が引き続き整備されているかについて登録審査と同様に検証することとする。検証の結果、業務執行体制を含む適切な体制の確保等を図る必要があると認められる場合には、当該体制の確保に要する期間を勘案した一定の期限を付した上、必要に応じて、金商法第50条第1項第1号の規定に基づく業務の休止に係る届出の慫慂や、体制整備を目的とした第51条の規定に基づく業務改善命令又は第52条の規定に基づく業務の全部又は一部停止命令を発出する等の対応を行う。

(参照法令条文)
金商法(報告の徴取及び検査)第56条の2
内閣総理大臣は、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、金融商品取引業者等、これと取引をする者、当該金融商品取引業者等(登録金融機関を除く。)がその総株主等の議決権の過半数を保有する銀行等(以下この項において「子特定法人」という。)、当該金融商品取引業者等を子会社(第二十九条の四第四項に規定する子会社をいう。以下この条において同じ。)とする持株会社若しくは当該金融商品取引業者等から業務の委託を受けた者(その者から委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)を受けた者を含む。以下この項において同じ。)に対し当該金融商品取引業者等の業務若しくは財産に関し参考となるべき報告若しくは資料(当該子特定法人にあっては、当該金融商品取引業者等(登録金融機関を除く。)の財産に関し参考となるべき報告又は資料に限る。)の提出を命じ、又は当該職員に当該金融商品取引業者等、当該子特定法人、当該金融商品取引業者等を子会社とする持株会社若しくは当該金融商品取引業者等から業務の委託を受けた者の業務若しくは財産の状況若しくは帳簿書類その他の物件の検査(当該子特定法人にあっては当該金融商品取引業者等(登録金融機関を除く。)の財産に関し必要な検査に、当該金融商品取引業者等を子会社とする持株会社又は当該金融商品取引業者等から業務の委託を受けた者にあっては当該金融商品取引業者等の業務又は財産に関し必要な検査に限る。)をさせることができる。

金商法第50条第1項第1号
(休止等の届出)
第50条 金融商品取引業者等は、次の各号のいずれかに該当することとなったときは、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
1 業務(金融商品取引業又は登録金融機関業務(以下この節において「金融商品取引業等」という。)に限る。)を休止し、又は再開したとき(第30条第1項の認可を受けた金融商品取引業者にあっては、当該認可に係る業務を休止し、又は再開したときを含む。)。

第51条(金融商品取引業者に対する業務改善命令)
内閣総理大臣は、金融商品取引業者の業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該金融商品取引業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

第52条(金融商品取引業者に対する監督上の処分)
内閣総理大臣は、金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の第29条の登録を取り消し、第30条第一項の認可を取り消し、又は6ヶ月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

この案について御意見がある場合は令和4年5月23日(月曜)17時00分(必着)までに郵便またはインターネットにて意見を寄せるよう伝えられております。
詳しい御意見の申請方法については金融庁下記ウェブサイトにてご確認ください。
「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)の公表について:金融庁 (fsa.go.jp)
当社は、国際金融都市を目指している東京都に協力して、金融商品取引業務に関する登録申請手続きに関する国内外の方々のご相談に対応させていただいております。ご心配な点等ございましたら、是非当社までお問合せ下さい。


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