第40回 「資産運用立国実現プラン」の概要について

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPビジネス・イノベーションは、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。

今回は、令和5年12月13日に内閣官房にて策定された「資産運用立国実現プラン」の金融庁の取組として令和5年12月14日金融庁のHPにて掲載されました「資産運用立国実現プラン」に関するポイントがまとめられた概要についてです。
これまで「資産所得倍増プラン」(令和4年11月策定)やコーポレートガバナンス改革等を通じ、インベストメントチェーンを構成する各主体に対する働きかけとして行われてきた取組みに続き、インベストメントチェーンの残されたピースとして、家計金融資産等の運用を担う資産運用業とアセットオーナーシップの改革等を図っていく必要があるとし、「資産運用立国実現プラン」が策定されました。

令和5年12月12日に金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」より公表された「資産運用に関するタスクフォース報告書」にて、資産運用立国の実現に向けた政策プランに関するそれぞれの課題に対する検討と講じるべき施策の実施のためには、各省庁が連携し、民間事業者を含めた関係者による不断の取組ならびに検討と改善の努力の継続が期待されていることが示されました。
また、施策の進捗状況については、内閣官房等において、令和6年6月を目途に確認されることとなっています。
資産運用業・アセットオーナーシップ改革等の分野に焦点を当てて策定された「資産運用立国実現プラン」について、以下確認して行きたいと思います。

―資産運用フォーラム準備委員会の設立―
「資産運用立国実現プラン」に係る施策として、令和5年12月22日金融庁のHPにて資産運用フォーラム準備委員会が設立されることが伝えられています。
資産運用フォーラム準備委員会は、資産運用会社をメンバーとし、金融庁とブルームバーグ・エル・ピーが事務局を務めます。「資産運用立国実現プラン」の施策を内外の関係事業者や投資家のニーズに沿った形で進めるための関係者との対話や、日本市場の魅力等に関する情報発信を行っていくことが重要であることとし、内外の関係事業者や投資家等と連携しつつ、資産運用フォーラムを立ち上げることとしています。

―「資産運用立国実現プラン」概要(資産運用業・アセットオーナーシップ改革の分野)―
資産運用立国実現に向けて示された政策プランの柱は以下の通りとなっております。

1.資産運用業の改革(資産運用力向上やガバナンス改善・体制強化、国内外からの新規参入と競争の促進)
2.アセットオーナーシップの改革
3. 成長資金の供給と運用対象の多様化
4.スチュワードシップ活動の実質化
5.対外情報発信・コミュニケーションの強化

―政策プランの各柱について-
1.資産運用業の改革(資産運用力向上やガバナンス改善・体制強化、国内外からの新規参入と競争の促進)
■大手金融グループにおいて、資産運用ビジネスの経営戦略上の位置づけのほか、専門性の向上、運用人材の育成・確保等の観点から、運用力向上やガバナンス改善・体制強化のためのプランを策定・公表
■資産運用会社のプロダクトガバナンス※に関する原則の策定
※金融商品の組成に際しての想定顧客の明確化、期待リターンがコスト・リスクと見合っているかの検証等の商品の品質管理
■日本独自のビジネス慣行や参入障壁の是正
※投資信託の基準価額に関する一者計算の普及に向けた環境整備など
■金融・資産運用特区の創設
※金融庁と意欲ある自治体が協働して、関係省庁と連携しつつ、特定の地域において金融・資産運用サービスを集積し、高度化と競争力強化を促進
当該地域が金融・資産運用の対象として一体的に推進する重点分野を支援
2024年夏目途に特区のパッケージを策定・公表
■新興運用業者促進プログラム(日本版EMP)の策定・実施
※ EMP:Emerging Managers Program
・金融機関に、新興運用業者の積極的な活用や、単に業歴が短いことのみによって排除しないことを要請
・金融機関等の取組事例を把握・公表
・アセットオーナー・プリンシプルにおいて、受益者の最善の利益を勘案しつつ誠実かつ公正に業務を遂行する観点から、運用委託先の選定における新興運用業者の取扱いについて盛り込む
・官民連携の下で、金融機関・アセットオーナーに新興運用業者を一覧化したリスト(エントリーリスト)を提供
・新興運用業者がミドル・バックオフィス業務を外部委託すること等により、運用に専念できるよう規制緩和を実施

2.アセットオーナーシップの改革
■アセットオーナーの運用
・ガバナンス・リスク管理に係る共通の原則(アセットオ ーナー・プリンシプル)の策定
アセットオーナーの範囲は、公的年金、共済組合、企業年金、保険会社、大学ファンドなど幅広いが共通して求められる役割として、アセットオーナー・プリンシプルを2024年夏目途に策定
■企業年金の改革
・確定給付企業年金(DB)について、加入者の最善の利益を達成するため、運用委託先の定期的な
評価、必要に応じて運用力次第で委託先を変えるなどの見直しを促進
・小規模DBが企業年金連合会の共同運用事業を活用できるよう、選択肢拡大を含め、事業の発展
等に向けた取組を促進
・企業型確定拠出年金(DC)において、労使合意に基づき指定運用方法の投資性商品への変更や運
用商品の商品構成の改善など運用方法の適切な選択がなされるよう、指定運用方法や運用商品の
構成等に係る情報の見える化、継続投資教育、取組事例の横展開等の取組を促進
・企業年金(DB・DC)について、厚生労働省が情報を集約・公表することも含めて、運用状況等
を含む情報の他社と比較できる見える化を行う

3.成長資金の供給と運用対象の多様化
■スタートアップ企業等への成長資金の供給の促進(ベンチャーキャピタル向けのプリンシプルの策定、投資型クラウドファンディングに係る規制緩和、非上場有価証券の流通を促進するための規制緩和)
■オルタナティブ投資やサステナブル投資などを含めた運用対象の多様化(投資信託への非上場株式の組入れを可能とする資産運用会社や有識者等の多様な関係者による対話の場である「サステナビリティ投資商品の充実に向けたダイアログ」を2023年内に開催)

4. スチュワードシップ活動の実質化
■東証による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を踏まえた企業による計画策定・開示・実行の取組について、東証と連携しフォローアップ
■機関投資家と企業との対話の促進等のための大量保有報告制度等の見直しを含む実質的なエンゲージメントの取組の促進

5.対外情報発信・コミュニケーションの強化
■世界の投資家等と対話を行い、ニーズを把握し、これに沿った形で資産運用業の改革を進めていく ため、内外の資産運用会社を中心に、関係事業者や投資家等と連携しつつ、資産運用フォーラムを立ち上げ、そのための準備委員会を2023年内に設立
■自治体や関係事業者、投資家等との対話の機会を通じ、資産運用立国に関する施策について意見交換を行い、必要に応じて、施策の深掘りや更なる施策の実施について検討

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