第30回 「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」等の一部改正について

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPビジネス・イノベーションは、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。


今回は、令和5年3月24日(金)と令和5年3月30日(木)に金融庁よりそれぞれ公表された「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」等の一部改正についてです。

なお、改正後の監督指針については、それぞれの公表日から適用されています。

今回の改正後の監督指針の内容については、それぞれ正しく理解し、適切な対応が求められていますので、態勢整備に不備が無いよう確実に実施するためのご参考にしていただけば幸いです。


■「金融商品取引業者等の業務に関する帳簿書類」についての一部改正について

令和5年3月24日(金)に金融庁より発表された「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」等の「金融商品取引業者等の業務に関する帳簿書類」についての一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果についてです。

これは、金融庁より令和5年1月27日付で「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)について取りまとめとめられ公表された内容について、令和5年2月28日(火)17時00分までに意見が求められていた結果として伝えらえました。


〇今般の改正の概要

法令に作成及び保存義務が規定されている金融商品取引業者等の業務に関する帳簿書類について、当該帳簿書類を国外において保存することに係る留意事項を明確化する趣旨から今般の改正が行われました。

帳簿書類のバージョン(以下、「版」という)の管理を適切に行うため、基本的留意事項 ⑨(当該電磁的記録に記録された事項を表示したものを遅滞なく閲覧することができる状態に置いている(略))が新設されました。


〇今般の改正の背景

これは、閲覧者・閲覧時ごとに異なる内容の書類の提示がなされたりする事がないよう帳簿書類の版の適切な管理が求められ、今回の改正で追加された部分中の「(略)それが電磁的記録をもって作成され、かつ、国内に設けた営業所(略)」の記述について、「(略)それが電磁的記録をもって作成され、適切に版の管理がなされ、かつ、国内に設けた営業所(略)」にした方が良いのではないかと考えられたことにより改正が行われることになりました。


改正の内容は以下の通りです。

Ⅲ.監督上の評価項目と諸手続(共通編)

Ⅲ-3 諸手続(共通編)

Ⅲ-3-3 業務に関する帳簿書類関係

(1)   基本的留意事項 ①~⑧ (略)

【新設】 ⑨ 金商業等府令第157条第3項ただし書及び同第181条第4項ただし書の各後段は、同条第1項各号に掲げる帳簿書類が外国に設けた営業所又は事務所において作成されたか否かにかかわらず、それが電磁的記録をもって作成され、かつ、国内に設けた営業所若しくは事務所において当該電磁的記録に記録された事項を表示したものを遅滞なく閲覧することができる状態に置いているときは、当該帳簿書類を国外において保存することを認めるものである。

ただし、金融商品取引業者において、顧客等に関する情報管理態勢(Ⅲ-2-4(顧客等に関する情報管理態勢))やシステムリスク管理態勢(Ⅲ-2-8(システムリスク管理態勢))等に十分留意されている必要があり、また、当該国外において不正アクセスに限らず第三者への情報流出やシステムの安定稼働への支障が生じるリスクについても適切に勘案されている必要がある。


■「ファンド等モニタリング調査に係る改正」および「MRF及びMMFの脆弱性対応に係る改正」についての一部改正について

令和5年3月30日(木)に金融庁より発表された「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」等の「ファンド等モニタリング調査に係る改正」および「MRF及びMMFの脆弱性対応に係る改正」の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果についてです。

これは、金融庁より令和5年1月27日付で「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)について取りまとめられ公表された内容について、令和5年2月27日(月)17時00分までに意見が求められていた結果として伝えらえました。


〇今般の改正の概要

「ファンド等モニタリング調査に係る改正」

平成29年金融安定理事会(FSB)は、資産運用業の活動から生じる構造的な脆弱性に対する政策提言を公表しました。これを受けて、令和元年 証券監督者国際機構(IOSCO)は、投資ファンドのレバレッジ評価枠組みに係る提言を公表しました。
今般の改定は、上記両提言を踏まえ、投資運用業者及び適格機関投資家等特例業者に対し、運用するファンド等に係る報告を求めるため、規定を整備するものとなっています。


・今般の改正におけるモニタリング調査表の提出対象は、「一定規模以上のファンド等の運用を行う者へのモニタリング(ファンド又は顧客資産ごとに実施)」であるとされており、これについて、閾値を超えた会社は、一定規模以上の運用財産等(投信、一任)について回答をもとめられるとなっており、特定の時点において、一定規模(500億円)以上のファンド等について回答が求められることとなりました。

・報告頻度については、一定規模以上のファンド等について、年次で作成予定とし、準備期間については、国際的な要請や業務の実態を踏まえ検討されることとなっています。


「MRF及びMMFの脆弱性対応に係る改正」

令和3年10月に、FSBは、マネー・マーケット・ファンド(MMF)の強靭性向上のための政策提案を公表しました。この提言を踏まえ、令和5年1月19日 一般社団法人投資信託協会において、関係規則「MRF及びMMFの運営に関する規則」、「MRF及びMMFの運営に関する規則に関する細則」、「MRF及びMMFの運営に関する委員会決議」の改正が行われ、当該規則に定められた緊急時対応策(コンティンジェンシープラン)に関し、投資運用業者に適切な対応を促すため、規定を整備するものとなっています。


〇今般の改正の背景

「ファンド等モニタリング調査に係る改正」

国際的にシャドーバンキングに対するモニタリング強化の動きがある中、レバレッジ関係に加え、ファンドの運用状況等について規制当局として情報を収集する必要があると考えられること、一定の閾値を設けること等により、過去に実施したファンドモニタリング調査と比較し、事業者における負担を相当程度軽減すること、海外で運用されているファンドについては、海外における報告の対象ともなりますが、ファンドオブファンズ形式のファンドに関する情報が投資対象ファンドと完全に一致するとは限らないこと等により、日本における一定規模以上のファンド等の状況を網羅的に確認する必要もあること等が考えられたことにより改正が行われることになりました。


「MRF及びMMFの脆弱性対応に係る改正」

FSBは、令和3年6月「MMFの強靭性向上のための政策提案」(原題:Policy proposals to enhance money market fund resilience)と題する市中協議文書を公表しました。以降、FSBから、令和3年11月に「令和3年3月の市場の混乱についての包括的レビュー(Holistic Review)」が公表され、MMFの強靭性向上のため、MMFの形態・機能・役割や、令和3年3月の混乱等を踏まえたMMFの脆弱性、MMFの強靭性を向上させる政策オプションとその評価、リスクのモニタリングや短期金融市場に関する補充的措置、及び、政策オプションを選択する際に考慮する事項等について政策提案が行われました。

そのことを踏まえ、一般社団法人投資信託協会において、MMF等の強靭性向上に対応した関係規則の改正が行われ、これらに関連し、「MRF及びMMFの脆弱性対応に係る改正」の一部改正(案)に対するパブリックコメントが実施された結果、投資運用業者に適切な対応を促すために改正が行われることとなりました。


改正の内容は以下の通りです。

「ファンド等モニタリング調査に係る改正」

Ⅱ.金融商品取引業者等の監督に係る事務処理上の留意点

Ⅱ-1 監督事務に係る基本的考え方

Ⅱ-1-4 一般的な監督事務

(1)   モニタリング調査表の提出について

【第一種金融商品取引業を行う者へのモニタリング】 ①~⑦ (略)

【新設】【一定規模以上のファンド等の運用を行う者へのモニタリング (ファンド又は顧客資産ごとに実施)】

① ファンド等の名称

② 業者区分

③ ファンド等の形態

④ 運用期間に関する事項

⑤ 権利者(投資主を含み、個人を除く。)に関する事項

⑥ 運用財産額に関する事項

⑦ 純財産額に関する事項

⑧ 投資対象に関する事項

⑨ 商品分類に関する事項

⑩ 借入状況に関する事項

⑪ 取引先リスクに関する事項

⑫ 流動性リスクに関する事項

(注)モニタリング調査表の提出を求める対象となる「一定規模以上のファンド等の運用を行う者」とは、毎年6月末日における直近の事業年度終了時点において、以下に該当し、かつ1ファンド又は1契約あたりの純資産額が500億円以上のファンド又は顧客資産を運用する者をいう。

・金商法第2条第8項第12号に掲げる行為を業として行う者

・金商法第2条第8項第14号に掲げる行為を業として行う者

・金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて主として有価証券又はデリバティブ取引に係る

権利に関する投資として、金商法第2条第8項第15号ハに掲げる権利を有する者から出資又は拠出

を受けた金銭その他の財 産の運用を業として行う者


「MRF及びMMFの脆弱性対応に係る改正」

Ⅵ.監督上の評価項目と諸手続(投資運用業)

Ⅵ-2 業務の適切性(投資運用業)

Ⅵ-2-3 投資信託委託業等に係る業務の適切性

Ⅵ-2-3-1 業務執行態勢

(1)   運用財産の運用・管理 (略)

①~⑥ (略)

⑦ MRF(投信法施行規則第25条第2号に規定する公社債 投資信託をいう。以下⑦及び⑧において同じ。)については、保有債券の突発的な価値の下落等により基準価額が1口1円を割り込むことで個人投資家の証券取引等に支障が生じることを回避するため、元本に生じた損失の全部又は一部を補塡することが例外的に認められるが(金商法第42条の2第6号、金商業等府令第129条の2)、これによりMRFの安定運用や投資信託委託会社等の健全性を害する事態とならないよう、MRFの運用に当たっては、投資信託協会自主規制規則「MRF及びMMFの運営に関する規則」を遵守しているか。

特に、当該規則に基づき金融庁に提出される緊急時対応策(以下「コンティンジェンシープラン」という。)については、MRFの安定運用を害する事態を十分に想定し、その事態に対する対応策が実効的なものとなっており、コンティンジェンシープランの実効性の検証を定期的に行い、必要に応じた見直しが行われているか。

【新設】⑧ MMF(投資信託財産の計算に関する規則第59条第1項第2号に規定する公社債投資信託のほか、基準価額が1口1円となるように運用している公社債投資信託(MRFを除く)をいう。以下⑧において同じ。)については、保有債券の突発的な価値の下落等により基準価額が1口1円を割り込む又はその蓋然性が高まることで、投資家による大量の解約請求が行われ混乱が発生する可能性がある。これによりMMFの安定運用や金融システムの健全性を害する事態とならないよう、MMFの運用に当たっては、投資信託協会自主規制規則「MRF及びMMFの運営に関する規則」を遵守しているか。特に、当該規則に基づき金融庁に提出されるコンティンジェンシープランについては、MMFの商品特性等を踏まえ、MMFの安定運用を害する事態を十分に想定し、その事態に対する対応策が実効的なものとなっているか。また、コンティンジェンシープランの実効性の検証を定期的に行い、必要に応じたコンティンジェンシープランや商品性の見直しが行われているか。

⑨・⑩ (略)



当社は、国際金融都市を目指している東京都に協力して、金融商品取引業に関する登録申請手続き及び金融商品取引業者等の内部管理体制強化等に関する国内外の方々のご相談に対応させていただいております。ご心配な点等ございましたら、是非当社までお問合せ下さい。


以上

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