第16回 金融商品取引業者(投資運用業、投資助言・代理業、第二種金融商品取引業)に対する行政処分について

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPフィナンシャル・ソリューションズは、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。
今回は、令和4年1月28日付で、新生インベストメント・マネジメント株式会社(以下「S社」)に対して金融商品取引法第51条の規定に基づき、行政処分(業務改善命令)が行われたことについてのお話です。

今回、行政処分を受けたS社は、投資運用業、投資助言・代理業、第二種金融商品取引業の登録を受け業務を行っていますが、過去(前回検査(勧告日:平成24年12月7日))に業務改善命令を受けているにも関わらず、再度同様の処分を受けたことになります。

今回の発表にとどまらず、さまざまな法令違反事例が発表されていますが、それらを他人事と無関心になってはいないでしょうか。この事案を他山の石とし、自らの業務について同様の問題の発生を未然に防ぐため、業務が適正に遂行されているか 法令遵守態勢・内部管理体制について検証することの重要性について、改めて認識する必要があると思います。

 

行政処分の内容は以下の通りです。

報道発表資料 : 金融庁 (fsa.go.jp)

 

  業務改善命令

 1)投資運用業者として、公正かつ適切な業務運営を実現するため、法令等遵守に係る経営姿勢の明確化、経営陣による責任ある法令等遵守体制及び内部管理体制の構築、並びに、これらを着実に実現するための業務運営方法の見直しを図ること。

 2)特に、過去の行政処分を受け、投資一任契約の締結・運用に際して具体的な再発防止策を策定しているが、今回、投資一任契約や公募投資信託に関して、投資運用業者として、善良な管理者の注意をもって忠実に業務が行われていなかったことについて、その発生原因を究明した上で、顧客利益や運用を重視するガバナンスの強化に向け、資産運用業の特性を踏まえた経営体制の構築等、実効性ある具体的な再発防止策を策定し、実施すること。

 3)今般の検査結果を踏まえ、経営陣を含めた責任の所在の明確化を図ること。

 4)本件についての適切な顧客説明、顧客への適切な対応など投資者保護のために万全の措置を講じること。

 5)上記1)から4)の実施状況について、初回報告期限を令和4年2月28日(月曜)として、以降は四半期末経過後15日以内に報告すること。なお、上記期限に関わらず、必要に応じて随時報告を行うこと。

 

【検査により問題が認められた事実関係】 (一部抜粋及び下線は筆者)

1.投資一任契約を締結した顧客のために善良な管理者の注意をもって投資運用業を行っていない状況

 前回(勧告日:平成24年12月7日)検査以降に当該金融商品取引業者が顧客と締結した投資一任契約のうち、以下のAからFまでの他社運用の各ファンドを投資対象として組み入れている投資一任契約において、以下の問題が認められた。

 

・商品特性に応じた調査の状況 

当該金融商品取引業者は契約締結前後を通じて商品特性に応じた調査を十分に行っておらず、運用財産の運用・管理を適切に行っていない状況が認められた。

・時価評価体制に係る調査の状況
 顧客との投資一任契約締結前の調査時点で、当該ファンドの運用会社が行っていた時価評価に対する監査報告書による保証表明が得られていないにもかかわらず、自ら当該運用会社の時価評価体制の調査をしておらず、例えば、ファンドの投資先企業の財務諸表や評価方法等について入手の可否を確認しないまま投資一任契約を締結し、その後も適正な時価で評価されているかについての調査を行うことなく運用しており、運用財産の運用・管理を適切に行っていない状況が認められた。

・投資判断の状況

投資一任契約に基づく当該金融商品取引業者の投資判断が求められる事象が立て続けに発生していたにもかかわらず、自らは投資判断を行っておらず、運用財産の運用・管理を適切に行っていない状況が認められた。

2.公募投資信託の受益者のために善良な管理者の注意をもって投資運用業を行っておらず、忠実に投資運用業を行っていない状況

・公募投資信託の設定前調査等が不適切な状況

公募投信シリーズの設定前における調査において、投資先ファンドの基準価額が目標数値を超過して下落した場合の運用方針を把握しないまま公募投信シリーズを順次設定し、投資先ファンドを運用する国内運用会社より、公募投信シリーズのうちの一部の投資信託(以下「現金等配分公募投信」という。)の運用対象投信の全運用資産が現金等に固定化される運用となる旨の説明を受けるまで、当社は長期にわたって当該運用方針を認識せず、当該説明を受けた後も運用の見直しを検討するなど適切な投資判断を行わないまま公募投信シリーズの運用を行っていた。

・公募投資信託の受益者対応が不適切な状況

前述に掲げた公募投信シリーズにおいて現金等配分公募投信が発生したことに関し、その一部では、受益者が負担し続けることとなる信託報酬やその他運用コストと、受益者が当該投信の中途解約時に負担することとなる信託財産留保額(以下「手数料等」という。)を比較すると、中途解約の方が受益者有利になる可能性があることを認識したにもかかわらず、現金等配分公募投信の全ての受益者向けの臨時レポートを開示した際に、そのことに言及していない。 また、受益者や販売会社の営業員から問い合わせを受けた際に、一部の営業員に対してのみ、受益者が手数料等を支払って中途解約した方が良い旨回答するなど、受益者公平性の観点から問題のある対応を行っている。

 

【事案の概要と該当法令等】

金融商品取引法第42条第1項に定める「忠実義務」ならびに「権利者に対する義務」に違反

第42条 金融商品取引業者等は、権利者(次の各号に掲げる業務の区分に応じ当該各号に定める者をいう。以下この款において同じ。)のため忠実に投資運用業を行わなければならない。

一~三(省略) 

2 金融商品取引業者等は、権利者に対し、善良な管理者の注意をもつて投資運用業を行わなければならない。

 

当社は、国際金融都市を目指している東京都に協力して、金融商品取引業務に関する登録申請手続きに関する国内外の方々のご相談に対応させていただいております。ご心配な点等ございましたら、是非当社までお問合せ下さい。


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