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武蔵野市の市有地売却問題を考える

吉祥寺と言えばおしゃれなカフェや雑貨店、味のある飲食店が多く、住みたい街 No.1で知られているのは言うまでもなく、私も近隣市に住んでいるのでしばしばお邪魔して素敵な街並みを楽しませてもらっている。

そんな吉祥寺で、穏やかならぬ問題が起きているという。
その問題を知ったきっかけは、TLに流れてきた土屋元武蔵野市長の下記のツイートだった。

近隣の市長さんがこんな訴えを起こされるとは何事だろう、と土屋氏や実際に提訴を行った「武蔵野市民の財産を守る会」のツイートを読むと、吉祥寺駅北口にある市営駐輪場の移設に関する土地売買に問題があるという。調べてみると、昨年9月にはデイリー新潮が”疑惑”の売却として取り上げていた。

  • 市が駅前駐輪場を不動産業者と随意契約で売却

  • 随意契約が可能な理由としては、以前より市が購入を希望していた、消防団詰め所に隣接する土地をこの不動産業者(以下A社)が所有しており、市の規定では、交換を前提に相対取引を認めているため

  • しかし、決定が性急・不透明だと市議会は紛糾

  • また、取引先のA社は駅前駐輪場の隣地を所有しており、駅前駐輪場の土地と合わせると、駅前の一等地に巨大な土地を所有することになる

  • A社は2018年に駅前駐輪場の隣地ビルを取得、19年に市が購入を希望していた近隣の土地を取得、そして20年に市が土地の取得・売却に動く、という絶妙のタイミングであり、疑念を持つ向きもある

というのが”疑惑”のポイントだったようだ。
デイリー新潮の記事には触れられていないが、土地の取得・売却価格が実勢にそぐわず、鑑定に疑問があるという指摘があり、今回の損害賠償請求に繋がっている。

また、こちらも記事では触れられていないが、登記情報を確認すると、A社が消防団詰め所の隣地と駅前駐輪場の隣地を取得する際、別の不動産業者Bがまずその土地を取得して、即日A社に売却している。
こちらもタイミングの件とともに、些か不透明なものを感じる。

ちなみに土地の位置関係としては、下の地図の①が今回売却された駐輪場、⑨が不動産業者から市が購入した土地で、ここに新しい駐輪場を建てるとともに、消防団詰め所の拡張を行うとしている

『吉祥寺東部地区市有地等利活用 公共自転車駐車場等対応方針』より引用

新たに取得した土地⑨だが、吉祥寺大通りから入ってすぐの①に比べると、繁華街で狭めのクックロード(市道99号線)が主なアクセスとなり、利便性の面でいささか見劣りがする。
老朽化が進んでいたとはいえ、築20年の①を修繕せず、取り壊して移設するのはあまり合理的な判断とは思えない。
市は平成29年に、駐輪場の管理団体と令和9年まで管理契約を延長する覚書を交わしており、少なくとも今回の件が中長期的な計画に基づいているわけではなさそうだ。

⑧の消防団詰所にしても、無理にこの場所で拡張しなくとも、移転するという選択肢もあったのではないだろうか?
事実、令和3年4月に制定された『武蔵野市消防団詰所整備計画』では敷地拡充だけだはなく、移転の可能性も検討していく必要があるとしていた。
ポンプ車の出動の場合、現状のクックロードに面した立地では何かと不便だと思うのだが。

『武蔵野市消防団詰所整備計画』より引用(マーカーは筆者)

市有地、しかも駅前の一等地を、入札ではなく、いち民間企業との随意契約で売却するのであれば、利益誘導などを疑われないよう慎重に検討・説明をするのが筋だと思うが、それも十分ではなかったらしい。

素人ながら、議事録等の資料を見てみると、令和3年3月に『吉祥寺東部地区市有地等利活用 公共自転車駐車場等対応方針』(PDF) を策定。4月に市とA社との間で協議開始の基本合意書を締結し、市議会(建設委員会)に方針を報告したのが5月であったようだ。よく言えばスピーディ、逆に言えば結論ありきで性急に進めていた印象がある。

条例により、今回の規模の土地であれば、市議会の議決を要さず市長の執行権で売買できるそうだが、今回の取引の性質を考えれば、事前に議会、市民に十分な説明があって然るべきだったのではないだろうか。

市議会の議事録ではこの件に関する質問・意見が相次いでおり、不採択となっているが、市民からも駐輪場利用者・地域住民への説明と計画の見直し、あるいは土地の売却を取りやめてほしいとの陳情も出されていた。
だが、8月には早々に⑨の取得契約が行われ、9月16日に建設委員会に報告されている。

それから1か月以上経過した10月27日に市民への説明会が行われたが、説明と質疑の不十分さに非難轟々だったというTwitter上での報告もある。

また、この説明会翌日の28日には①の売却契約が締結され、11月5日にA社への所有権移転登記が完了している。
暮れも差し迫った12月23日には、要望が多かったためか、市は再度説明会を開催している。
これらの説明会等の資料は市が「吉祥寺東部地区のまちづくり」というWebページにまとめており、説明会の質疑応答要旨を見ると、疑問の声が多く出ていたことがわかる。

その後、今回の土地取引の問題について今年6月に住民監査請求がなされたが、棄却 (PDF)。ただし、市の進め方、市民の理解を得るための姿勢への疑問、より丁寧な市民への説明を求める意見が付されている。

そして、住民監査請求の棄却を受けて、元市長が市長を提訴する事態となった。

今回の土地取引に関する問題、全く同じ構造ではないが、森友学園の土地取引についての一連の騒動を彷彿とさせる。
私自身、下記のツイートに書いたのだが、市長がより丁寧に説明していく必要があるだろう。
今後の裁判の行方を見守りたい。




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