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戦士王列伝

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中世前期、スカンディナヴィアと周辺国の戦士王(Warrior King)について語ります。
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戦士王列伝③ エイリーク・ホーコナルソン

戦士「王」ではないけれど、大好きなヴァイキング戦士の一人、ラーデ(フラジル)の侯(ヤール)エイリーク・ホーコナルソン(Eiríkr Hákonarson)について書きたいと思います。 彼は一時期(11世紀初頭)、ノルウェーの実質的な支配者でした。 同じ名前でもエイリーク血斧王、赤毛のエイリークに較べると知名度が低いですが、ヒョルンガヴァーグの戦いでデンマークとヨムスヴァイキングに勝利し、スヴォルドの海戦ではデンマークのスヴェン王らとの同盟軍で宿敵オーラヴ・トリュグヴァソン王

戦士王列伝②ノーサンブリア王アゼルヴリス

今回は、6世紀末~7世紀初頭のノーサンブリア王アゼルヴリスです。 Æthelfrith Aethelfrith, Ethelfrid, Aethelfrid, Eadfered アゼルヴリス、エセルフリス、エゼルフリッド 表記は幾つかありますが、古英語の発音に最も近いと思われる 「アゼルヴリス」 で統一します。 7世紀初頭のブリテン 最初に、彼が生きた時代の英国について、簡単にご紹介します。 世界史の教科書にも載っている、ゲルマン民族の大移動。 ブリテン島にやって来

戦士王列伝①ノルウェー王オーラヴ1世

中世前期の欧州北部は Warrior King〈戦士王〉の時代でした。 王の力はまだ万全ではありません。 「王」は地方領主の最上級クラスのようなもので、後世の絶対君主とは異なります。 領土を拡大したいならば力づくで奪う、弱肉強食の時代。 誰もがついて行きたいと思える武勇と人望を兼ね備えていなければ、王になることはできませんでした。ですから、王自身も勇猛果敢な戦士で、戦場では自ら最前線に立ち、兵を率いて戦いました。 そしてもうひとつ、王には気前の良さも求められました。戦場での働