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まいるず映画感想文

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#映画解説

映画と原作小説で比較してみよう【ノック終末の訪問者】

ネタバレ全開で語りますのでご注意を! ▼あらすじ(映画版):▼あらすじ(原作小説):第一幕は同じなので省略します。 ▼シャマランぽくない?:本作はシャマラン映画なのにシャマラン映画っぽくない、と評価されがちです。確かに撮影監督が『スプリット』以来の相棒マイク・ジオウラキスから、ジャリン・ブラスキー(ロバート・エガースの全作品を担当)に変わっていることもありビジュアルの雰囲気が少し違ったかもしれません。 しかし一番の原因は、ラストで「大どんでん返しが起きない」ことでしょう

【徹底解説】ラストシーンの意味を紐解く(コンペティション〜2001年宇宙の旅の文脈で〜)

なかなか面白かったです! 最近は映画をモチーフにした映画が多いですね。 ・バビロン(2月10日) ・エンパイア・オブ・ライト(2月23日) ・フェイブルマンズ(3月3日) ・コンペティション(3月17日) 本作『コンペティション』がスペインで公開されたのは2021年だったので少し古い作品ではあるのですが、日本ではちょうどタイミングが重なりました。私は4作とも劇場で観覧しましたが、どれも力作でした。 本作の魅力として、実力ある俳優3人による演技合戦が見どころです。 ▼

ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃 鑑賞記録

Amazon Primeで初鑑賞。2001年12月公開作品。 アバンタイトルのテンポの良さはかなり好き。ゴジラ映画といえば序盤に間をたっぷり使って展開する(悪くいうとチンタラ進む)のが定番だったのに、当時のこれは相当衝撃的だったのではないか。 怪獣の造形も良い。放射火炎で戦闘機を撃墜する場面や政治家がポンコツな描写はシン・ゴジラに通ずるものがある。ラストでの「それ以上近寄るな!残留放射線の測定がまだ終わってない」というセリフなど硬派で魅力的な演出も多い。 ●ドラマがすご

大怪獣のあとしまつを叩きまくる世論に対して思うこと(三木聡=デュシャン理論)

一言でまとめると「社会が寛容さを失っている」と思います。 あの映画を観て期待外れになった人がいるのは分かりますが それでも 「1900円と2時間を投じて結果がこれかよ」 という意見を見ると、 ハズレることも醍醐味である映画を楽しめないくらいに 余裕が無い人達がいるのだな、 とちょっと寂しい気持ちになります。 人間は知恵をつけることで、本能以外の「余裕」を手に入れて、 だからこそ高度な文明や文化を築いてこられた生き物です。 そのように余裕がなくなる人が増えるということは、

フレンチ・ディスパッチの感想と本作におけるパイについての考察

▼140字感想:当たり障りのない感想はTwitterに書きましたので、このnoteでは本作の3つのパイについて考察していきます。 ▼幾重にも織りなす構造:本作は編集長が死去した架空の雑誌の最終号の紙面に準じた形で、まさに雑誌の記事のようなオムニバス形式を取っています。映画としては珍しいくらいに長いタイトルは一種の国民性ジョークになっています。 タイトルの「フレンチ・ディスパッチ」とは何なのか、映画の最初にモノローグで簡潔に紹介されます。 そんなフランスのある町の時事や文

もし戸田奈津子がフレンチ・ディスパッチの長すぎるタイトルを翻訳したら?

本作のタイトルは非常に長いです。 なぜこんなに長いのかというと、本作はフランスを舞台にしているので、タイトルもフランス語を揶揄したジョークになっているからです。 そこで本稿では、タイトルの意味を分かりやすく噛み砕いて、もし「どんな長文でも驚くほど短く意訳してしまう戸田奈津子先生」の手にかかったらどうなるか考えてみたいと思います。 ▼やたら長いタイトルの意味:邦題で真ん中のオブ(of)が抜けて、代わりに「別冊」と付いています。 つまり『ザ・リバティ、カンザス・イヴニング

洋画を日本語字幕なしで観たい理由;フレンチ・ディスパッチの画家と看守の会話を例として

この記事は、掲題映画の「電気椅子で死にたいと懇願する画家を女性看守が説得(説教)する場面」を用いて、本作を字幕なしで視聴する効用について解説していきます。後半では補足として解説を綴ります。 途中で離脱してしまった人も、面白いと感じたら高評価やコメントを残していってくれると嬉しいです。笑。 = = = ▼事例:画家と看守の会話を用いたケーススタディ:ある日、スランプに陥った画家は自殺を図るも自分では死ねず、刑務所の電気椅子に自ら座って、後から処刑室に来た看守にスイッチを押

筋肉の恥じらい:本当はもっとエロいフレンチ・ディスパッチを解読する(原語セリフの不可解な単語に関する考察)

本作に出てくる「筋肉が恥ずかしい」という日本語訳に違和感を覚えたので、原語セリフも参照しながら、本当はもっとエロいフレンチ・ディスパッチを解説していきます。 具体的な基準にはあまり詳しくないので分かりませんが、この文章はおそらくR15指定相当くらいの内容になっていると思います。苦手な方はご注意ください。 まあ、アートには人間の根源的な部分に触れる性質がある以上、エロやセックスを扱うのはある意味避けて通れないことですので…。 あと、物語の核心をがっつり #ネタバレ してま

マトリックスレザレクションズの疑問に全て回答していく記事(都度、追記も検討)

1問1答形式。目次からスキップ可能。リーダー表示にしていると目次が表示されない場合があるのでご自身の閲覧環境をご確認ください。コメント等で質問いただければ追記予定です。お役に立てたなら高評価を忘れないで!🙏 ▼物語について:●3行でまとめて? ネオは再びマトリックスに繋がれて無限ループを暮らしていた。 60年越しにマトリックスから脱出したネオに外の世界へと誘われて 同じくマトリックスに繋がれていたトリニティはONEとして覚醒する。 ●もう少し詳しく教えて? ここを読ん

マトリックスレザレクションズのツッコミ所

私は総合的には本作を肯定的に評価していますが、本作にはいくつか論理的な破綻や「変な部分」があって物語に集中しにくかったのは事実です。そこを列挙していきます。 ▼無計画すぎるトリニティ救出(1回目):最初にアイオを訪れた時、ネオはナイオビによってタワーに幽閉されるのですが、すぐにモーフィアスやバッグス達と脱走して、その足でトリニティ救出に向かいます。 しかし、この時点でネオ達はまだ「トリニティの身体を持ち帰る方法」を見つけていません。つい先程ネオを摘出した時にはシベーベとオ

ファンが無意識にマトリックス・レザレクションズを嫌ってしまう最大の理由

多くの人が「なぜ 気づかない」状態になっている本作の「弱点」について語ります。 ▼正直度100%で語ります:2021年夏に突如告知され、12月に公開された『レザレクションズ』は、直前までの盛り上がりとは裏腹に賛否両論、というか微妙に否定派の意見が多そうな作品です。 観客それぞれが自分の価値基準を持っています。そして、どんな映画にも良い点と悪い点はあるもので、本作も例外ではありません。よって不満点が出るのは理解できることです。 低評価の声を見ていくと「つまらなかった理由」

マトリックスレザレクションズのあらすじ(+解説)

148分のあらすじをシンプルな形式でまとめたノートです。 あらすじ部分は主語で始めているので、ささっと読みやすいと思います。 ▼起(ネオの苦痛な日常と精神異常):●台詞で説明された事象:ネオは現在ではトーマス・アンダーソンと名乗っている。彼が務める会社の名前は《ゼウス・マキナ》で親会社はワーナー・ブラザース。マトリックス過去三部作はネオがゼウス・マキナで20年前に開発したゲーム。会社の経営者は《スミス》のモデルで、ティファニーは《トリニティ》のモデル。ネオはかつて飛び降り

マトリックス三部作をわかりやすく整理

マトリックス・レザレクションズ公開が近づいてきたので整理します。 ▼マトリックス:第1作。 原題:The Matrix 公開年:1999年(平成11年) 物語のベース:不思議の国のアリス 映像的な目標:攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL(1995年) 時代背景:インターネットが当たり前になってきた頃 ●時代を敏感に捉えた設定: 日本では、それまで支配的だったポケベル市場をケータイ電話があっという間にかっさらっていき、iモードやミクシィを通して大人から中高生

マトリックス・レボリューションズ鑑賞記録

マトリックス・レザレクションズ公開記念:過去作を考察してみるシリーズ第3弾です。 9月にリローデッドの鑑賞記録を書いてからかなり時間が経ちました。実は数日後にはレボリューションズも鑑賞済みだったのですが、考察を深める時間を取れてませんでした。かなり寝かしてしまいましたが、最新作の公開も迫ってきたので、考察を進めて整理していきます。 ▼鑑賞直後の感想(ほぼリアルタイム殴り書き):= = = とりあえずそんな感じかな。。。 ▼あらすじを整理する(=物語の結論は):まずは物