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サイツヨが舞う

戻りの羽田空港にて。
お昼を食べてしまおう。

あそこのそば屋へ行くか。時刻は13時になろうとしている。店の前には、すこし列ができている。

「何名様ですか? メニューをご覧になってお待ちください」
入り口で人数の確認をする店員が(店長かな)。

「2、1、2名様お待ちでーす!」
店内の仲間たちに伝える店長。

こちらは待ち時間もなく、スムーズに入店。
すぐに別の店員がオーダーを取りに来る。
入り口で決めた天丼セット(天丼とざるそばのセット)を注文。

「……ご注文くりかえします。天丼セットがおひとつ、以上でよろしいでしょうか?」
青年の店員の確認に、うなずく。新人さんなのかな?

そう思ったあと、すぐに青年に心のなかで詫びることになる。
この青年、よく働くのだ。
「セット(テーブルのセット)完了でーす」
「お水持っていきまーす」
ひたすら動き、ひたすら声を出している。
日本語にすこしなまりのある女性店員も。
ひっつめ頭のおばちゃん店員も。
みな一様だ。

わたしの頼んだ天丼セットが出てくる間にも、店内ではひっきりなしにコミュニケーションがとられている。

「2、5、2でお待ちでーす!」

「はい、2名様ご案内しますー! 荷物はこちらでお預かりしますね」

空港の中の店なので、みな荷物が多い。広いとは言えない店内のスペースに、キャリーケースや大きなバッグが並ぶ。けれどもなぜか邪魔にならない。

「ダスター(食器を下げて、テーブルをふく)完了ですー!」
「8卓セットしまーす」
「8卓セット完了、2名様ご案内します。お水2つお願いしますー!」
「お水2つ持っていきまーす」
「5卓さん、オーダー済みでーす」

それぞれのやったことを明確に伝え、それらが受け取られて、次のステップにいく。ものの見事に連携がとられていて、気持ちがいい。
わたしの前の席には、子ども連れの家族がいる。その向かいには、シニアのカップルが。まさに老若男女が己の選んだそば(うどん)を食し、満足して帰っていく。
くりかえすが、ここは空港の中。時間がない人もいるだろう(これから飛行機に乗るひともいる)。
それゆえのスピード、そのためのチームワークなのだろう。エビの天ぷらをかじりながら思う。
「このひとたち、“サイツヨ”メンバーだ」

さらには、この駿速サービスのさなかに、彼らに「おつかれさま」なんて声をかける、空港関係者風のひとがお昼を食べていたりする。
「あ、おつかれさまですー」と腰低く挨拶をする店長(想像)。

店の外の列はどんどん進んでいく。
隣の女性はビールをおかわりしている。
わたしは天丼セットを食べ終えて、会計に向かう。隣のひとは2杯めのビールに口をつける。

サンキュー・サイツヨたち。
飲食店のスーパープレイは、定期的に体感したい。

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