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台風一過には早すぎる(台湾縦断実況note#3)

朝の嘉義

朝起きると嘉義は晴れていた。
いや、晴れていたというには雲が多すぎる。
晴れに限りなく近い曇り、とでも言おうか。

それでも、2日に渡る嵐の中を歩いてきた身としては、十分に嬉しいことだった。
私は水を得た魚のように朝から嘉義の街を歩き回った。
晴れた日光の下で歩くと、ここはやはり歴史的な街なのだとわかる。

日本統治時代や戦後に建てられた建物が台中とは比にならないくらい多い。
写真を撮っていたらきりがないほどだ。

一通り歩き回りながら、朝ごはんを探す。
どうも、「米糕(ミーガオ)」と言う料理をよく見かける。
単純接触効果か、サブリミナル効果か、どういった料理か見当もつかないが、食べてみたくなってきた。

米糕と財布

なかなか良い面構えの店を見かけたので入ってみると、店主は愛想のいい下町風の女将さんだ。
「ミーガオ」が欲しいと言うと、スープもつけろと言う。こういう時は従った方がいい。
私はひとまず、一番安い肉団子のスープをいただくことにした。

今までは後払いが多かったが、今回は先払いらしい。
ひょっとすると、今までは外国人対応で許されていただけかもしれない。
想定外のことで慌てて支払った。
だいたい300円ちょっとである。

メニューを見ていると、どうやらこの店のスペシャリティは別にあることがわかった。
「ワーグイ」という、阿里山の食べ物あたりの食べ物らしい。
これはやっちまったな…
そうは思いつつ、提供されたミーガオを食べると、おこわと上に乗った肉の餡の組み合わせが最高で、どうでも良くなってきたのだが。

店を出てからも、建築や街の風情を見ながら歩いた。
今日の午後、友人と台南で落ち合う。
最後の一人旅を噛み締めていた部分もある。

駅まで辿り着き、コンビニに入って飲み物とスナックを買おうとした時だ。
財布がないのだ。
長らく色々な国を回ってきたが初めてだ。
だが、スられるタイミングなどなかったはずだ。
誰にもぶつかってないし、混雑した所にも行っていない。

そう言えば…
思い当たる節があるとすれば、それは朝食の店で会計した時だった。
私は急いで店に戻った。
そこになければもうないなと、軽く覚悟を決めながら。

店に戻ると、女将さんが「よかった」という表情をして、机の引き出しを開けた。
そこには私の財布が入っていた。
「謝謝、謝謝」と礼を言うと、気をつけなさいよ、というような感じのことを言う。
色々な意味でいい店に巡り合った、と安堵すると同時に、気が緩んでいたなと反省した。

落ち着け、と購入した彰化名物の梅干しマンゴー。あまじょっぱい独特の味で元気になる。

台風一過には早すぎる

嘉義駅で列車を待っていると、駅員が何やら叫んでいる。
どうも台風の影響で嘉義→台南間の線路が損傷し、直通列車が出ないという。
嘉義から代替バスで新榮というところまで行き、そこから電車に乗り換えて台南でいけ、と。

駅員の指示に従い、駅前のバス停からバスに乗り込んだ。
駅でもたついていたせいで席はほとんど埋まっていたが、どうにかこうにか席を確保した。

バスは動き出すと、爆音で台湾演歌を流しながら走った。
曲だけではなく、PVまである。
台湾鉄道の代替バスなので、日本で言えばJRバスのような存在だと思うのだが、日本では考えられない状況に思わず笑ってしまった。

バスの車窓からは台風の爪痕がかなり見える。
昨日同様、田畑は水に浸かったり、農作物も倒れたりしている。
爪痕だけではない。
現に突風が吹いていて、台風一過というより、台風直前の様相を呈している。
今回のケーミーくんは随分と後を引く台風である。

新榮から台南までは特急で一駅だ。
ダイヤが乱れているのか、私のチケットに記載されていた列車は来ないようだ。
別の特急に乗るほかない。
とはいえ、他にも同様の人がいるし、そもそも元々の乗客もいるから、当然席はない。
出入り口のあたりで、ほかの席無族と一緒に立ち乗りである。

今回の台湾縦断の終着点、台南に着いたのは12時だった。
台南は小雨。台風一過には早すぎる。
私は傘を手にホステルへ向かった。

1日遅れの実況noteはここまで。
台南の話はまたいつか。

三回目にしてやっと台湾に来れた…と言えるだろうか。

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