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ICDPオマーン掘削計画

(高知コア研究所 岩石物性研究グループ 岡﨑研究員)

高知コア研究所では海だけでなく、陸上で掘削したコア試料を使った研究をしています。2016年から2018年まで行われた、海洋プレートの化石「オフィオライト」を掘削する国際プロジェクトICDP Oman Drilling Projectに参加した様子を報告します。

国際プロジェクトICDP Oman Drilling Projectとは 

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課題の研究 謎解き解説:オマーン掘削プロジェクト」

オマーン陸上掘削~かつてのマントルを掘る!~

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タイトル写真は、地上で見られる海洋プレート「オマーンオフィオライト」

Oman Chikyu 2017夏

 地球の中は、地表から土や海、地殻、マントル、コア、といったように層状になっていますが(ちょうど卵やアボカドの断面に似ている?)、その中を直接見ることはほぼ不可能です。しかし、地殻とマントルの一部(プレートと呼ばれます)が別のプレートに乗り上げてしまって、地球内部の物質が地表まで上昇してしまっているような場所もあります。このような”プレートの化石”のことをオフィオライトと呼んでいて、オフィオライトを研究することで普通は見られない地球内部の理解が深まる可能性があります。特に、中東のオマーンにあるオマーンオフィオライトは乾燥地帯であるため岩石が植物に覆われておらず、海洋地殻からマントルまで連続で観察できる一面の大露頭がみられることから、世界中の地質学者が研究を行っています。私もオマーンで掘削したコアを日本に持ち込み地球深部探査船「ちきゅう」の設備を使って研究を行うという国際プロジェクトに参加しましました。2017年のOman-Chikyuコア記載で、自分はLeg.1(7/15–8/15)とLeg. 2(8/15–9/15)の前半で合計1ヶ月半(7/15–8/31)停泊中のちきゅうに乗船しました。乗船前に、1ヶ月半乗船することを一度も乗船経験のない同僚に報告するとたいてい「1ヶ月半は長いっすね」という反応をし、乗船経験者の友人に報告すると「1ヶ月半は中途半端、2ヶ月フルで乗りなさい」と全く別の反応をするのが興味深かったです。解析しなければならないコアの数が膨大で、停泊中であったにもかかわらず忙しすぎて船から出る時間がありませんでした。ちきゅうに乗船経験豊富な私と同じ岩石物性研究グループの廣瀬さんからの「カップラーメンとかお菓子とか持っていけ」というアドバイスはまさに的確でした。ただし、ちきゅう船内の食堂の食事はものすごく種類も豊富でおいしいです(ビュッフェスタイルでアイスも食べ放題)。
 2018年の夏にもOman-Chikyuコア記載 phase 2として同様の研究が行われました。

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夜のちきゅうのヘリデッキからみる掘削やぐら(デリック)は荘厳な雰囲気

Oman現地掘削 2017冬

 2017年の冬にはオマーンオフィオライトの現地掘削現場に赴き、現地の作業にも参加しました。中東のオマーンは暑すぎて夏には作業ができず、冬に集中的に掘削をする必要があります。そこで、2017年の冬に集中して世界中の研究者でローテーションを組んで入れ替わり立ち替わり掘削サイトでの記載を行いました。現地では家を2棟借り切って世界中から集まった研究者と共同生活を行いました。研究者だけでなく掘削の作業員であるインド人の出稼ぎ労働者とも、休憩時間に彼らからチャイを振る舞ってもらったり仲良くなることができました。
 オマーンでは水(=地下水)は大変貴重なので、今回の掘削により地下水が枯渇したり流れが変わったりしてしまうと大問題です。そのため、掘削は影響の少ない人里離れた山奥で行われました。オマーン掘削計画では掘削サイトへ行く道も新たに作ったそうです(未舗装路ですが)。掘削サイトでは掘削により回収したコア試料の連続性や特徴を簡易テントの作業場で記載しました。放し飼いされているラクダが普通に歩いているのが衝撃でした。

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掘削で回収されたコア試料を眺める研究者たち

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掘削サイトの横を通りかかるラクダ

オマーンオフィオライト国際会議2020年 1月

 オマーンでの掘削、ちきゅう船上での記載、乗船後研究などの総まとめとしてオマーンのスルタンカブース大学で国際会議が行われました。発表は(笑い的な意味で)人生で一番ウケたが時間を大幅オーバーして反省。会議の前後ではオマーンオフィオライトをめぐる巡検も開催されました。
 出発直前に中東情勢が悪化したり、滞在中に国王が崩御されたり、大雨で道路が冠水したりしましたが、特に混乱はなく楽しめました。巡検では未舗装路をひたすら走り川を越え冒険気分でした。オマーンはいい国です。治安もいいです。世界中の研究者が研究フィールドとして調査している理由がわかりました。

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案内書片手に海洋プレートの化石「オフィオライト」の全面露頭の前にたたずむJAMSTEC研究者

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ボコボコしているのが海底で噴出した枕状溶岩。海底で噴出したそのままの形が残っています。

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