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【博物館レビュー】アーティゾン美術館「パリ・オペラ座−響き合う芸術の殿堂」と「Art in Box ーマルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後」

東京・京橋にある、アーティゾン美術館。
マネやモネなどの印象派をはじめとして幅広くコレクションし⁡公開活動も精力的にやっているくせに、なぜか大学生含めた学生がいつでも無料という太っ腹。なので、大学院生という立場を生かして暇つぶしがてらよく行っている。そしてだいたい、暇だった時間を超えて楽しんでしまうというところまでがお約束。⁡
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今回はまず⁡「パリ・オペラ座−響き合う芸術の殿堂」に。⁡⁡
⁡持ち前のそこそこの人間観察力を発揮したところ、立ち方や歩き方を見る限り客層の6割程度はバレエ経験者となっているかと思われる。あとは土地柄、スーツ姿で真面目そうな男性もちらほら。⁡⁡

⁡オペラ座という劇場のハード面、ソフト面、アーティストとの関係など多方面を網羅しようとする、あまり類を見ない展覧会。
世界史(つまり西洋史)、イタリア・フランス・ロシア等の歴史・政治、演劇、舞踏(とくにバレエ)、音楽、文学、美術、建築などさまざまな分野にまたがった展示と解説で、とても読み解くのに時間がかかる。
というかもはや、そこにあるすべてを読み解ける人はかなり限られるのではないかと思うレベル。
⁡まさに「総合芸術」の権化。
「芸術の殿堂」にほかならない。

⁡高校時代に世界史Aの授業をほぼ寝て過ごし、試験では赤点ギリギリ(なんなら赤点だった気がする)を取っていたのになぜか進級できてしまった私にとっては、もちろん不明な点が多すぎる。⁡

⁡それだけに、マネやドガをはじめとする印象派画家がオペラ座のようすを描いた作品やジャポニスムを反映したポスターなどを見て、すでに知っていたものがオペラ座とつながったときの感動はものすごい。
⁡とくに、キュビズムやフォーディズムに属する画家たちがオペラ座の舞台美術に関わっていたという点は興味深かった。⁡
舞台美術や衣装の原案に、キュビズムやフォーディズムの描き方がそのまま反映されているのに、それを一体どうやって現実のものにしたのか、と不思議に思うなど。

⁡そうでなくとも、時代を伝える歴史的絵画・彫刻・楽譜や舞台セットのジオラマ、実際に使用された煌びやかな衣装・シューズなどわかりやすいものもあるので、それらにただ触れるだけでも楽しさはある。⁡
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ほぼお腹いっぱいになった後には、コレクション集としての「Art in Box ーマルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後」がさらに待ち受けている。⁡
⁡何度か通っているうちにおなじみになっているモネやマティス、デュシャンにちなんだ作品もあれば、まだ実際に見たことがなかった作品にも出会えた。
⁡それらを撮影可能な状態で公開してくれる姿勢に、いつも通り感謝しながら退館。⁡⁡

後ろに予定があったことと、体力的にもう限界になっていたこともあって「パリ・オペラ座」は2時間強、「Art in Box」は1時間ほどで出てきてしまったが、オペラ好き・バレエ好きであれば1日中こもっていても楽しさがあるのではないかと思う。
私自身、まだまだ勉強が足りないと痛感したので⁡会期中にもう一度くらい来てもいいかも。⁡

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