見出し画像

人生でいちばん読み返した記事・ホンダのイノベーション

「理念・哲学なき行動(技術)は凶器であり、行動(技術)なき理念は無価値である」
本田宗一郎氏

前回がソニーだった流れで、今週はホンダについて。

8年前の記事だが、おそらく人生で一番何度も読み返したんじゃないかなーという記事がある。エアバッグを発明した小林三郎氏の、イノベーションについての実践論で、たぶんこれまで100回くらい読んだ。

当時、世界を本気で目指していたDeNAの執行役員勢で共有して読みあわせた。

ある人は「愛」についての箇所で泣いたと言っていたし(「役職なんかギャグ」の発言者と思われる現・ベンチャー役員)、返信の最初の3文字が「泣いた。」だった人もいた(現・大型ファンドのパートナー)。

それから8年たったが、色あせてないことも多い。(資本のダイナミズムや、勝負のルールは、その間に大きく変わったが。)熱を帯びた金言だらけだ。


ぜひまず記事を読んでほしいが、4つほどピックし、今日的なviewを足しておく。

当時のプロジェクトリーダーが、主要メンバーつれてブラジルのリオのカーニバルに行ってきた。帰ってくるや、シビックのコンセプトを「サンバ」だという。

(中略)
車の部品設計1つをとっても、コンセプトで直線か流線かが決まる。営業もコンセプトに沿って売る。

だから1つのコンセプトにのっとって作られた車は、ほかとはわずかに違う匂いを発する。お客様はその匂い、違いを敏感にかぎとるのだ。

会社ミッションからプロダクト・組織文化まで、一貫性あるものづくり集団が価値・違いを生む。


ミラティブも開発当初、影響を受けて、熟考の末に「友だちの家でドラクエやってる感じ」というコンセプトを作った。

以来、5年間、(少なくとも日本人には)一瞬でこのプロダクトのやりたいことが伝わるパンチラインとして、これまでブレることなく社内や採用で機能してきた経験で、実感している。「コンセプトの寿命は長い」。


新しいことをやらなければ、この国は滅ぶ。まず日本一を目指し、そこから世界一を目指すのだ。(中略)

宗一郎氏のリクエストは2つだけだった。「ホンダらしさはどこだ」「それは世界一か」――。これにみんなで応えた。

パンチラインすぎて何度読んでもグッとくる。

書籍化されている講演録+DVD(プレミアついているようだけどとても良い)版には、この後に、さらなるパンチラインが付け加わっていてそちらも刺さる。


"(本田宗一郎が)怒ったのは二つ。「見もせんで」「やりもせんで」"

(↑の講演録がコンパクトにまとまっていてより好きなのだが、書籍版もある)


同書には(まったく新しい分野については、本気で)「3日やったらホンダ1。10日やったら世界一」ともある(安全分野の一部トピックは、本当に3日やればホンダで一番詳しくなった、という著者の経験談付き)。

本気で世界一を意識して、世の中の新しい価値を研究する・考える動きを続けるのは、実はとても難しい。メンバーの中にある「世界一」の1つ1つが差になる。自分はメンバーに良い問いができているか、「トップのすべき要求」ができているか、身が締まる。


部長以上は3割、役員以上4割、常務専務は5割、社長は7割明日のことを考えなければならない。

本田宗一郎氏は9割5分、明日のことを考えていた。「今起きていることは若い人にしか分からない」ともよく言っていた。

ホンダ創業副社長・藤沢武夫氏の「経営に終わりはない」(宗一郎との同時引退の時の話が泣ける)にも、近しい記載がある。

「重役とは一体なんだろうかといえば、未知への探究をする役です。重役が未知への探究をしないで、後始末ばかりしている掃除屋であってはならない、というのが私の考えです」

当の藤沢武夫氏は、ほぼ出社せず自宅で中国古典を読んで、1日に5-6通のメモを役員に送って経営していたという怪物談がある。そこは真似しない方が良さそう。「未知への探究」。

新たな価値づくりが仕事で、技術はそれを実現する手段でしかない。ほかの自動車会社に就職した大学の同級生は、同窓会などで集まると全員技術の話をしていた。でも、ホンダにいた自分は価値の話をしたかったのだ。
ホンダという12兆円企業をつくった先輩達に「イノベーションを起こすのに最も大切なものを1つ教えて下さい」と聞くと、9割の人々が「想いだ」と答える。

価値を生みだす想いについて。これも、小林氏の講演録には良い話が付け加わっている。

この「想い」を何と訳そうかなと思って、"thought"じゃ弱い。だから、"spiritual belief"って訳したの。「志ある信念」。(中略)「志ある信念」をつくる文化、そういうのがつくれる人間をどうやって増やすか。そうすると、イノベーションが起きやすくなるんですよ。

「志ある信念」を持ち、「価値」を深く考え、未来に向けてチームで投資・チームに投資する。その上での多くの失敗から、真に価値ある発明が世界規模で生まれている。

以上、私の好きなホンダについてまとめた。その後同社もまた変わる産業構造の中でさまざまな苦闘奮闘をしていることは認識しつつも、イノベーションへの姿勢についてはこの記事群に学んだところはとても多い。参考になれば幸いです。


--------

ミラティブ社では採用強化中です。

まだ世界的な成功がないのが恥ずかしいかぎりですが、ミラティブはiOS11リリース当日に世界初のiPhoneだけでゲーム実況できるアプリを作り、世界初のスマホだけでVTuberのようになれるアバター「エモモ」を作り、今また現場主導で世界初の体験を作っています。

イノベーションを生み、それをみんなで地道に改善して伸ばす、その連続でここまでやってきました。

想いを持ったイノベーションに取り組みたい方、歓迎です。採用中の職種はこちら。


年内、noteの頻度をあげてます。よかったらフォローやハートしていってください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?