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今こそソニーに学ぶ -「フロー」

先日、コロナで夏休み存分には遊べなかったであろう息子と、せめても、と予約して屋外プールに行った。人数制限された晩夏の公共プールは実に快適であった。
流れるプールでぼーっと浮き輪に揺られながら、「フロー」について考えはじめた。

流れる=「フロー」という単語がある。
「キャッシュフロー」は「お金の流れ」で、経営の血流だ。「フロー経営」なんて言葉もある。語源をたどっていくと、「influence」の「flu」もラテン語の「流れる」に起因しているらしい。なるほど、影響力なんてものは原理的に「移ろいゆくもの」なのかもしれない。

ソニーと「フロー」

「ソニー 盛田昭夫」をプールサイドで読んでいた。そこにも「フロー」の記載がある。

改めてソニーに学ぼう、と思ったのは、先日CFOから「要は赤川さんは日本的経営の最新型をやりたいってことなんですか?」と問われ、「日本的経営とはなんだったのか」を考えたいと思ったからだ。(自分のやりたいことが「日本的」な系譜なのかはそれまでまるで考えたことがなかった。良い問いかけを得られるのは良いチームで仕事をする喜びだ)


日本のレジェンド各社の文化をあさっていると、ソニーが最もピンと来たため、「MADE IN JAPAN」「グーグルで必要なことはみんなソニーが教えてくれた」「ソニー財務戦略史」など今月はソニー研究月間と相成った。

「フロー」=最良の瞬間を生む混沌/目標/論理/情熱

「フロー」について、

「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」

というソニーの社是が、「フロー状態」「フロー経営」のお手本として、フロー理論提唱者のチクセントミハイ氏の講演では冒頭に語られるそうだ。

ここでのフローは「困難ではあるが価値のある何かを達成しようとする自発的努力の過程で、身体と精神を限界まで働かせ切っている時に生じる最良の瞬間」を示す。極度の集中で、ある大きな流れに包まれているような状態からこう表現されたという。


「組織化された混沌(Organized Chaos)」という単語が、ソニー出身のノーベル賞受賞者江崎玲於奈さんの言葉で紹介されている。

才能を集め、統一された高い目標下で、緊張感と「自由闊達」を同居させて、創造力の爆発を起こす。それを消費者に届く言葉でマーケティングコミュニケーションする。商売の原理原則と、創造性による開拓、一方で法務重視などのディフェンスが、融合していた企業なのだと思う。

何より、「説得力(Convincing Power)」(by盛田氏)を重視し、「説得工学」(by井深氏)をつきつめ「論理(本質+構造) x 情熱(心に訴える) = 説得・モチベーション」と整理される創業者二人の姿勢には、ベンチャー特有の「熱」があふれている。


盛田さんはトップマネジメントの要諦を「トラブルシューター」(問題解決)と表現している。トラブルの犯人捜しではなく「原因の追究」を最重視

最上段のビジョンや目標設定ののちは、最下段の「起きた問題の解決」が要諦であり、中間は個々人の自主性や自由度に任せる、ということなのだと解釈した。"「上司にやめろと言われてやめるくらいなら最初からやるな」というカルチャー"という記載もあった。

カラーテレビやウォークマンの開発過程で、井深さんや盛田さんが、現場の自主性・エネルギーから出てきたアイデアを「正しくピックアップ」している様子が各所でうかがえる。その大前提には、根本原理を深く突き詰める姿勢があったのだと思う。

盛田流のマネジメントは「当事者にぎりぎりの高いハードルを与え、チャレンジさせ、鼓舞する」とある。まるで私が育ってきたDeNAのマネジメント文化のような表現だ。

「独創性を引き出すための有効な方法は、目標(ターゲット)を設定することである」
「工業製品を作る会社の経営者たちは、エンジニアたちにターゲットを絶えず与えていなければならない。それが経営陣の最も大切な仕事である」
(「MADE IN JAPAN」 より)

フローを生むには「ぎりぎりの高いハードル」・多くの課題もまた必要なのだろう。

「フロー」=すべては流れる・つながる

話は飛んで、「フロー」と聞くとTeenage Fanclubという大好きなバンドの「Everything Flows」という名曲を反射的に思い出す。
"I'll never know which way to go
Set the course that I don't know"

と歌う。

日本的経営なのか欧米的経営なのか、どちらが正解か、どこに向かえば正解か、なんてことは永遠にわからない。選んだ道を正解にしていく意志が連続して結果になる。
知らない道を仲間に教わりながら、「すべては流れて」いく。

折よく、アスキー創業者西さんの強烈な自伝「反省記」のあとがきにこんな一節があった。(CSK大川会長の金言も満載で良書であった)

「一喜一憂しない。"すべてのことは過ぎ去っていく"のだから、どんな状況が訪れても、平常心で、やるべきことを淡々とやるしかないし、それが最善の対応策なのだ。それは、感情も一緒だ。(中略)どんなに感情を刺激される出来事があっても、それはそれで放っておいて、ニコニコしていれば、感情は過ぎ去り、その感情を引き起こした出来事も過ぎ去っている。そして、また新しい局面が現れるのだ。」

本書にもたまたま盛田さんと当時ソニー社長の大賀さんの話が出てくる。ミラティブも最初に一緒にはじめたエンジニアはソニー出身だった。すべては流れるが、いろんなことがつながっている。皆が「最良の瞬間」を増やそうと七転八倒して今に至っている。

「フロー」についてそんなとりとめのない思索をしながら、PS5を予約して、ソニー強化月間の締めくくりとした。先達は今日も先を走っている。負けないぞ、とムキになり、また高い目標に向けて走る。


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