"USB"を理解しよう! -第3回 充電規格-

前回のデータ転送規格編でも多少紹介したが、USBを使用することでデータ転送以外に電力供給をすることも可能である。
しかし、スマートフォンが普及した昨今、前回紹介したUSBの基本規格の電流量では圧倒的に不足しており、充電できたとしても充電にとてつもない時間を要してしまう。そこでUSBには充電用の規格が制定された。
充電用の規格には様々なものが存在しており、正しく理解し正しい充電器等を組み合わせてやらないと充電できない、最悪の場合ケーブルや端末を破壊するといった事態に陥ることもある。
ここでは、日本で主に利用されている充電規格について紹介することとする。

USBIF認証規格
・USB BC 1.2
最大5V 1.5A
USB Battery Charging 1.2の略称であり、7.5Wまでの供給が可能。USB充電規格としては古いものとなっており、iOSデバイス、Androidデバイスを問わずだいたい対応している。
USB BCにはSDP、CDP、DCPの3種類が制定されており、
SDP→USBの転送規格に準じた電流量まで
CDP→最大1.5Aまで。データ通信を使用しハンドシェイク方式を取る(後述するApple BCで利用)
DCP→最大1.5Aまで。CDPと異なり、データ通信なしに電力の供給が可能。USB内のデータ通信線を200Ωの抵抗で短絡させる必要がある。(Apple BCを使用しないiOSデバイス、Android端末で利用)
となっている。
昔からスマートフォン等を使用されてきた方はここを見たらハッと思い浮かぶものがあるかもしれない。
そう、昔の充電器によくあった"Apple結線"、"Android結線"はこのCDPとDCPを区別していたのである。

・USB PD
最大20V 5A
USB Power Deliveryの略称であり、100Wまでの供給が可能。大電力の供給が可能となったことから、スマートフォンの充電に限らず、ラップトップコンピュータの充電にも採用されるようになってきた。
しかし、発熱等の観点からスマートフォン等では9V 2A、12V 1.5A程度の充電速度に留まるものがほとんどとなっている。
ちなみに、USB PDはUSB Type-Cでしか利用できないと記載されている記事があるが、厳密に言えばこれは正解とは言えない。
USB PDの規格制定が2012年なのに対し、USB Type-Cの規格制定は2014年。実はStandard-AにPD対応端子が存在しており、対応している機器同士であればPDは利用可能である。
ただし、採用された製品はなく、実質的にUSB Type-Cのみでしか利用できない状態ではある。
また、USB Type-Cのリリースと同時にUSB PDがUSB PD 2.0へ改定され、現行のUSB PD 3.0ではStandard-AでのUSB PDの項目は削除されている。

・USB Type-C Current
最大5V 3A
USB Type-Cでは従来よりも大電流が流せるようになっており、5V 1.5Aまで対応のUSB Type-C Current 1.5A、同3Aまで対応のUSB Type-C Current 3Aの2種類がある。

メーカ独自規格
・Apple BC
最大5V 2.4A
Apple Battery Chargingの略称であり、その名の通りAppleデバイスの充電に用いられる。Appleデバイスであることを認識すると最大2.4Aまでの電流を印加する。
対応機種はiPhone 6以降のiPhone、iPadシリーズ。

・Qualcomm QuickCharge
最大12V
大手半導体メーカ、Qualcommが制定した規格。
充電器側と端末側で通信を行い、対応端末か否かを確認した上で電圧を印加する。
QuickChargeにはバージョンがあり、新しくなるにしたがって安定性が向上している。下位互換があり、充電器、端末のどちらかが古いバージョンであっても新しいほうが合わせて充電を開始する。
現在の最新バージョンはQuickCharge 4.0であり、USB PDとの互換性を有している(4.0対応機器を見たことがない)。
基本的にはQualcommのSoC(Snapdragonシリーズ等)を搭載した端末で利用可能(ASUS ZenFone 2等例外はある)。

他にも外資メーカではSamsungのAdaptive Fast Charging、HuaweiのQuick Charge(Fast Charger Protocol、SuperCharge Protocol)、OPPO/OnePlusのVOOC Flash Charge、Super VOOC(OPPO)、Dash Charge(OnePlus)などがある。

ここまで解説してきたが、基本的にUSBにおいてはUSBIFが定める方法以外で電圧を印加することを禁止している。よって、メーカ独自規格は基本的にアウトとなることがほとんどである。
Qualcomm QuickCharge等USBIFが認めていない手段で規定値以上の電圧を印加した場合、USB Type-Cケーブルを使用する一部環境下においてケーブルを破壊する可能性があるため注意。



ここまでくるとめんどくさすぎるんで早いところUSB BCとUSB PDで統一されませんかね。


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