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別の選択肢が登場すると独占体制は崩壊する。プーチンもNVIDIAも vol.2150

選択肢が多すぎると人は選択すること自体を止める

行動経済学は21世紀になって多くの人が知るものとなった。既存の経済学は、利害得失を即時に正しく判断して行動する「経済人」ばかりの状況を前提として理論を組み立てたのだが、どうやら現実の社会は大きく異なり、人間は本能的あるいは反射的な行動でわざわざ損する選択をすることも結構多いということが、主にユダヤ系の学者の観察や実験によって証明された。ノーベル賞を受賞したダニエル・カーネマンやリチャード・セイラーの名前を知っている人も多いだろう。

この理論は繰り返しのチャレンジができない、一度きりの大勝負においてほどよく当てはまる。何度でも繰り返すことができる試行では、誰もが平均的な期待値を知っているので、当事者の予想と現実の結果にほとんど差はない。ところが前例のない出来事、損得の差が極端に大きい場合や周囲の期待を背負った当事者(選挙やボクシングの勝敗など)においては、人間は現実離れした期待を抱くもので、本当に馬鹿な、損な選択肢を選んでしまう。水原一平氏も一発逆転の大賭けに誘われてプロのイカサマに嵌まったのだろう。

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