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哲学メモ1 アルケーとイデア

 古代ギリシアの哲学は「アルケー」と「イデア」という二つの概念を中心に発展した。イオニアの自然哲学者はアルケーを、アテネの形而上学者はイデアを自らの哲学の根幹に据えた。

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 アルケーもイデアも、表象としての世界を代表するための概念であるという点では共通している。しかしアルケーとイデアの間には大きな違いがある。アルケーは表象としての世界の中に存在するが、イデアは表象としての世界の中に存在しないのだ。
 例を出そう。タレスは水を、ヘラクレイトスは火を世界のアルケーであると主張した。水も火もともに表象としての世界の中に存在する概念である。それに対しプラトンはイデアを説明する際によく幾何学を用いた。自然界に完全な直線は存在しない。しかし人間は完全な直線を用いて自然界の形状を測ろうとする。完全な直線は、自然界に存在していないにも関わらず自然界を代表しているのだ。
 世界にはアルケー的な人間とイデア的な人間が存在する。
 アルケー的な人間は現象A、B……をアルケーXの変形として捉える。それに対しイデア的な人間は現象A、B……をイデアXの分有として捉える。それゆえアルケー的な人間は物事を水平的・具象的に思考し、イデア的な人間は物事を垂直的・抽象的に思考する。

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 貨幣は現代世界のアルケーである。貨幣は商品の一つでありながらあらゆる商品を代表している。あらゆる商品は、貨幣に測られるという意味において貨幣の変形でしかない。(ちなみに自然哲学の発祥地であるイオニアは世界初の硬貨の発祥地でもある)
 法律は現代世界のイデアである。法律は甲や乙などといった存在しない人間を用いて世界を描写し、垂直的に万人を支配する。法律というイデアを具現化する主体であるという意味において、国家権力とは一種のデミウルゴス(『ティマイオス』)である。

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