株価はそもそも実体経済を映すのか?

 現在、新型コロナの影響でお店を開けない、観光客が来ないと景気が悪い状態になっていますが、日経平均をはじめとした株価は最近急速に元に戻るように上がっています。
 これに対して、「株価は実体経済に合っていない」という意見を見かけたので、そもそも株価は実体経済を映すのか等を今回のnoteで考えました。

目次
・「実体経済」とは?
・「株価」とは?
・「株価」は「実体経済」ではなく「将来への期待」を映す

◯「実体経済」とは?
 「実体経済」とはどのようなものでしょうか。
 例えば、従業員の給料が上がる・下がる、就職がしやすい・しにくい、お店で買い物をたくさんできる・少ししかできないなど、一般の多くの人々が実体験する経済を「実体経済」といいます。
 「先週、給料が増えた・減った」「今日はお客さんが多い・少ない」といった、多くの人々が経験した「過去」又は「現在」を基準としたものです。「来年、給料が増える」場合は、現時点ではまだ増えていないので実体経済には反映されません。また、一部の人だけが「給料が増えた」としても、他の多くの人々の給料が減ってしまうと、実体経済は「悪くなった」と評価されるものです。
 このように「多くの人が実体験する経済」を表すのが実体経済と呼ばれるのです。

◯「株価」とは?
 一方、「株価」の方はどうでしょうか。
 株価とは「過去の業績×投資家の将来への期待」という式で表されるものです(実際の株価の算出方法とは異なります。あくまでも分かりやすくするイメージです)。例えば、ある会社の去年の業績が「利益1千円」で、それに対して投資家が「今年は10倍の利益1万円になるだろうな」と期待していた場合、株価は「利益1千円×10倍」で1万円となります。
 さらに、この式は過去の業績が「0円」(出来立ての会社で利益を上げたことが無い)又は「マイナス」(赤字を出している)でも、将来の期待さえあれば株価を表すことが可能です。例えば、「この会社は出来立てで、まだ利益を上げていないけれども、来年には10万円の利益を上げるな」と投資家が期待すれば、株価は10万円になります。また、例え多くの人が「あの会社はもうダメだよ」と考えていても、それよりずっと少ない人数の投資家が「いや、今はダメでも将来はきっと良くなる」と期待すれば株価は上がっていきます。
 このように、「投資家が期待する将来」を表すのが株価と呼ばれるのです。

◯「株価」は「実体経済」ではなく「将来への期待」を映す
 
ここまでで述べたとおり、「実体経済」と「株価」は全く異なるものを表しているので、「株価は実体経済に合っていない」という意見は、その通りの当たり前のことだといえます。
 
今、新型コロナのためにお店が休業したり、お客さんが少ししか戻っておらず、多くの方が実体験している実体経済は悪くなっています。
 一方、今後数か月の間に治療薬や適切な治療方法、ワクチンが開発されるだろうと投資家が期待していることから、株価は急速に元に戻っています。
 このように、全く異なる仕組みとなっているものですから、株価を基に政府の景気対策の効果を評価するのは、実は間違っているのではないかと私は考えています。

 みなさんはどう思いますか。

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