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ジェネシアベンチャーズ水谷氏による【顧客ニーズと事業仮説の検証】(Twitterスペースコラボイベント書き起こし記事②)

今回は、ジェネシアベンチャーズ水谷航己さんをゲストにお招きして坂・長島とトークしたイベントの書き起こし記事です。今回のテーマは「顧客ニーズと事業仮説の検証」です。なお、今回のジャフコTwitterスペースは水谷さんのnoteを元に、執筆したご本人に詳しくお話を聞きました!

ジャフコTwitterスペースイベントについて

起業家や起業準備中の方に向けて、パートナーの坂・長島と他VCのキャピタリスト等をゲストに迎え、さまざまなテーマについて30分間トークしています😆。
月1,2回開催しておりますので、是非Twitterをフォローして聞きにきてください!

今回のゲスト

水谷航己さん(twitter:@KokiMizutani)

2013年4月、住友商事株式会社に入社し、リスクマネジメント部に配属。再生可能エネルギーを含む電力事業や自動車向け鉄鋼製品の製造流通事業におけるM&Aを担当。また、M&Aの高度化を目的に意思決定プロセスの見直しを実施するなど投資の成功確率向上に向けた全社プログラム策定に従事。2018年7月より株式会社ジェネシア・ベンチャーズに参画後、多様な産業領域においてDXを推進するシード期のスタートアップを中心に約20社の投資支援(ソーシング、投資実行、アップラウンド支援等)を推進。東京大学法学部卒。
JAFCO公式HPより

Twitterスペース書き起こし

(水谷) このNoteは1年ほど前に出させて頂きました。 当時のジェネシアベンチャーズでの学びや経験してきたことを体系化してまとめたいという思いで、半年程かけて書きました 。設計者は私ですが、ジェネシアの各メンバーとも話をしながら取り合わせました。 個人的には今日のメインのテーマについて、 第2章の「事業の管理」「検証のプロセス」が、 すごいヒントになってくるなと思っております。

シード期はプロダクトもないようなタイミングから、MVPを作って実際に顧客の反応を見ながら、事業成長の仮説を紡いでいく必要があり、限られたリソースの中で極めて難易度の高い経営のかじ取りが求められるフェーズだと考えています。(ほぼありえないんですけども)なるべく手戻りをせず、直線的な形でシリーズAのファイナンスにつなげていく上で、起業家の皆さんと頭を悩ませてきた内容をまとめました。

シリーズAは事業をスケールさせていくところに軸足が乗る一方で、シード期はそもそも事業をスケールさせるための仮説の構築と検証により重きが置かれていて「経営の思考の仕方」が変わってくると思っています。
SNSで発信する機会が多くなってくるシリーズA以降のスタートアップと比較して、シード期のスタートアップ経営ってなかなかリアルタイムに語られることも多くないなと。なので、状況が見えにくいシード期において、事業がスケールできると確信を持てるためにすべきことを2番目の章でまとめました。

(坂)なるほど、ありがとうございます。いろいろ具体で聞いていくとより面白いかなと思うんですけれども 、ジェネシアベンチャーズさんの投資はどのステージが多いですか?今の話だとプロダクトがないところから関わられているんですか?

(水谷)そうですね、今Twitterスペースを聞いていただいているCrezitの矢部さんとかScheemeの杉守さん等は、創業前後でプロダクトのまだないタイミングから、支援をさせて頂いています。半分ぐらいはプロダクトのないフェーズでご一緒しています。

(坂)なるほど 。じゃあまさに今お話したようなプロダクトを作りそれがしっかりとハマっていく、シリーズAにいかに早くつないでいけるかが投資直後のタイミングだと非常に大事になってくるんですね。

(水谷)まさにですね。最初プロダクト出すまでに半年、場合によっては投資してから1年位、リリースできないこともあります。その間に、いかに仮説検証するのかについては頭をひねらせながらやっています。そういう期間では、月次の定例とかやっても何も進捗がないケースもあり、我々VCよりも起業家の方・経営者の方が辛さやもどかしさを感じていると思います。

(坂)noteにも書かれていましたが、検証サイクルを回すのは半年か1年位あった方がいいっていうことなんですね。

(水谷)どこで区切るかではありますが、B向けのサービスで、プロダクトを出して実際に商談して使ってもらうまでに少なくとも半年かかるケースは多いのではないかなと。仮説検証を回してこれ違うねとなり、プロダクトやターゲットやビジネスモデルを変えていくという意思決定が半年でできれば早い方じゃないかと思います。ここの見極めが上手くできずに、ズルズル進んでしまうことも往々にしてあります。ご支援する中ではシード期のスタートアップ経営において、最も難しい意思決定局面の一つと感じています。

(坂)なるほど。 ではこの2章の内容に入っていければと思いますが、事業のアイディア自体はある程度山が決まっている人が多いですか?

(水谷)そうですね、山と経営チーム・起業家のセットで揃っている状態で、 投資の意思決定をさせて頂くことがほとんどですね。

(坂)この第2章の②の「顧客の課題欲求に関するインサイトを見つける」ところからスタートという感じなんですね。

(水谷)そのケースも多いです。

(坂)今日は山が決まっている時にインサイトを見つけていくうえで、初手どういうことをやっていくのが重要ですか?こういうことをやってお客さんのインサイトを見つけられたという実際の事例はありますか?

(水谷)顧客との対話の仕方が難しいなといつも思っています。ここに困ってます、こんなのあったらいいよねと顧客はお話しされますが 、いざプロダクトを出した時に本当にお金払ってくれるのかについては、いざ出してみないとわからないこともあり、さらに顧客に簡単にリーチできない領域の場合は特に難しくなります。一方でC向けのサービスは可能な限りまず出してみる方がスピーディにインサイトを得ることができると感じます。

また、例えばマッチング系のサービスの場合、プロダクトの仕上がりがまだ高くない状態のときからユーザーを集めていく必要があるので、難易度が上がると感じます。例えば、ジャフコさんとご一緒しているタイミーさんや、シード期からご支援している助太刀さんといった、マッチング系サービスも、面をとってユーザー数を増やしていかないとそもそもマッチングが起きないことから、プロダクトの完成度が必ずしもまだ高くない状態(アプリに対して悪いコメントがついている段階)でも、面を取ってユーザー数を増やしていくことや、そのためのファイナンスに向けて事業仮説に合意できる気概のある投資家さんを仲間にしていくことも必要です。なので、仮説検証の度合いはサービスによって様々であり、顧客インサイトを獲得するための初期の打ち手は、事業によって変わってくるものだと感じます。

ニーズの検証では、LPやプレスリリースでどのぐらい引き合いが来るのか、その匂いを嗅ぎ取って、そこで追加投資していく意思決定をする場合もあります。いかに世に問うて、その反応を見れるのかっていうところがすごい大事ですね。「プレスリリースの反応」、最初にプロダクト出した後の「初速」は注視しています。

(坂)私たちも投資を検討させて頂く時に顧客ヒアリングする際、有料のユーザーの方にヒアリングするケースが多いんですが、課金する前だと確かに非常に難しいだろうなと思っていて。例えば、検証時にヒアリングやアンケートを取る際、気をつけているポイントややった方がいいことはありますか?

(水谷)決めつけないことだと思います。シード期は「選択と集中」があまりフィットしないので、仮説が変わる余白を持つ心持ちでいることが大事な気がします。

(坂)なるほど 、一方で粘り強くやることも大事ですよね?

(水谷)そうですね、そこのバランスはすごい難しくて、しっかりやりきった仮説検証じゃないと次にいけないというか、やり残しがあると仮説検証が回らないのは難しいところですね。

(長島)やりきった後でユーザー獲得していくかについて、会社さん側と他のステックホルダー側とで意見が割れることもありますか?

(水谷)あると思います

(長島)もうちょっと見た方が良いか、ここでGOなのかは見極めですよね。

(水谷)複数VCがいる時で割れることもありますし、最終的に経営チームの手応えをどこまで信じられるのかはありますね。
個人的に好きなのは、展示会に投資先と一緒に出るのが好きで、お客さんと会話をする中でなんで興味を持ったのか?とかも聞けますし、展示会で似たようなサービスが複数あるときには自社サービスをどうエッジ立たせていくことで高い価値を出せるか、支援先の経営者と考えています。

(坂)展示会以外でも、こんな課題感が世の中に存在してたんだと思われる場面ありましたか?

(水谷)シードの起業家の方と日々お会いしている中で多く教えてもらっています。

(坂)私たちも、色んな海外のリサーチをする中で、障がい者教育を見てみると色んな課題感があるなと。タブレットは教育的観点で機会の平等を図る意味では誰しもが使えるプロダクトという前提で各国進めていますが、一方で学習障がいを持たれている方はタブレットを使うのが難しくて、格差が広がっていく話がある等、そのことがどんなビジネスになるかわからないですが、世の中は当たり前だっていうことの裏側に課題感は結構あるんだなと。

(水谷)昨日札幌に出張で伺い、とあるピッチイベントに参加したんですが、 地域の課題は東京にいると気づけないものが多くて、学びがありました。
特に北海道だと寒暖の差も大きいので、観光地のモビリティはもっとテックの開拓余地あるなと思いましたし、いいなと思ったのは、地域には地域に根ざした中小企業がたくさん存在していること。そこの企業群にリーチしている地場の商社もあり、そういうところがDXの旗振り役となって進化が促進されていく話を聞いて、志を持たれた経営者の方がたくさんいらっしゃるんだと、刺激を得て帰ってきました。

(坂)確かに地域の交通は本当に東京と違いますよね。

(水谷)そうですね。インフラ事情は全く違うので行かないと分からないですよね。5分・10分に電車が1本来るエリアの方が少ないですからね。

(坂)タクシーの使い方が全然違うと思いましたね。東京だと流しで乗るじゃないですか。地方だと、基本家に呼んでそこから行くのが多い。
地方のタクシー会社のコールセンターを一回見させて頂いたことがあるんですけど、ひっきりなしに電話かかってきて、 その配車を人力でやっているのを見てこれはすごいことをやってるなと。

(長島)展示会や現場に行って見えることももちろんあると思うんですけど、 その後のマインドセットに話を移すと、「過度な執着心を持たずフラットな目線を持つ」ところと少し相反するというか、自身に置き換えたらやればやるほど目線がガーッと集中してしまうと思い。割り切るのか定量的に見るのか、バランスが難しいだろうなと。

(水谷)とある経営者と話をした際、事業として解こうとしている社会課題が大きくて、解決した先のビジョンに共感されるビジネスだと、PRした時にメディアに華々しく取り上げられたり、ピッチイベントで表彰されたりするんですが、それってビジネスとは無関係じゃないですか。実際は苦戦していて、どう考えてもコストに見合わないと分かっていたんだけど、どうしてもそれに執着してピボットの意思決定をするにあたって時間がかかったみたいな話を聞いたことがあって。結局、その会社はビジネスを辞めず、そこで得たノウハウを活用して違うセグメントに変えて今は成長しているんですが、もっと早く意思決定できたという話を聞いて、我々のようなVCの介在価値が出せそうだなと思っています。
最終的にビジョンへの執着心はやればやるほど強くなっていくものと思いますが、HOWの部分には執着せずに、どんどん変えていかないと深い傷を負いかねないと思いました。

(長島)今みたいな事例は至るところにあって、気付けるかどうかも大事だなと。

(水谷)そうなんですよね、 めちゃ大事ですね。

(長島)計画から遅れているタイミングで議論するんですか?

(水谷)そうです。 早ければ早いほど傷は浅くなるとは思うんです。
単価の話と顧客の数の話が多いかなと思います。このままいってもそんなに単価上げられないまま終わるなとか、今のプロダクトだと顧客が増えないなとか、あるいは全然コンバージョンレートが上がらない、セールス対価が無いままになっている等、刺さりが悪い時に何を変えていければいいんだっけ?っていうところを早めに察知をするのがまず第一歩で、ここのアンテナは大事にしたいところです。

(長島)思い当たる節があるなと。早く知っておけば良かったとnoteを読んだときに感じました(笑)

(水谷)そこは本当に難しいんですよね。それでもゆっくり伸びていきなり大口の顧客が決まるケースもありますし、本当に難しいし、読みきれない。
経営者の手応えも信じつつ、一方で別のことが必要かどうかというコミュニケーションもしつつですね。

(長島)ありがとうございます。 全然アジェンダが進まない。どうしようかな (笑)

(水谷)是非今後、私としてもこういうことがシードで検証されてたらシリーズAとしても投資家さんとしても検討・意思決定しやすいのは是非聞きたいと思っています。
シードで5000万、場合によっては2億・3億を調達した中でのランウェイと5億・10億集めてスケールするときとでは、やれることが違うよねと。
あるあるなのは顧客の求めているプロダクトまでたどり着いて、ターゲットも見えて、いざスケールするぞと、具体的なHOWもアクションも見えているけど、 まだ売上が満足に立っていない状態で、シードVCの僕らも2回目の追加投資をしてシリーズAなのかどうなのかわからないけど、すごい手応えはつかんでるというケースもあるんですよね。売上規模がないにしても、どんなKPIがあればその事業仮説を信じ切れるか等、そういう話もお伺いしたいです。

(長島)是非、今日は語りきれないので続きをやりましょう!

(水谷)是非お願いします(笑)

(長島)実際にお話を聞いて、もっと聞きたいとなり、時間切れですみませんでした(笑)とても勉強になりました。 ありがとうございます。

(坂)手応えを掴んでいるんだけど…というのは、我々も考えていかないといけないですよね。 売上が立っているのは分かりやすいのはそうなんですけど。

(水谷)経営者としての手応えというか、なるべく早く同期できるようにしたいですね。

(長島)水谷さん、またやっていただけますでしょうか。

(水谷)こちらこそです。 是非お願いします。 ありがとうございました!

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