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『僕らの食卓』8話まで(2023/日本/テレビドラマ)

1話は見そびれて2話から見始めました。全10話とのことですが、8話までの感想を書きたくなってしまったので最終回を待たずに先に書きます。

弟の種(たね)君と穰(みのる)お手製のおにぎりがきっかけで出会った穰と豊。豊を”ゆかた”と呼んで懐いている幼い種君やほんわかとしたいい味出しているお父さん(原田龍二)も交えて食事を重ねつつ交流する中で、お互いの辛い過去も打ち明けあって心を許せる親しい友人になり、いつしか気持ちがさらに少しずつ近づいて・・・というドラマ。

互いの気持ちのやりとりを少しずつゆっくり描いたとても優しいドラマで、豊と穣がすぐに恋愛関係になったりせずにドラマが進行したので、このままでBLドラマになれるのか?と途中で心配になる程だった。いや、却ってそこがとてもよかった。もうこのままキスシーンなんかもなしでもいいかも・・・と思ったり。

原作があるドラマだと、ある程度のスピードで話を進める必要があるせいか、この数年見てきたBLテレビドラマは割とすぐ恋愛関係になるものが多かった。放送時間も大体30分番組で全10話前後。その中に、出会って恋が始まってちょっと問題も発生してそれを乗り越えて(ハッピー)エンド、という流れを詰め込まなくてはいけない。しかも原作があるのであまり勝手な変更もできないとなると、じっくり気持ちの交流を描くのは難しいという事もあるだろう。だから割と早い段階で、”誤って” とか ”ひょんなことから” とかいう設定で、キスしたり抱きついたり、何なら一夜を過ごしてしまったりするものも少なくない。
最近そういう流れに慣れてきていたせいか、このドラマはなかなかそういうことにならなくて、それがとてもよかった。時々BLドラマということを忘れてしまった。気持ちの交流をゆっくり描いていたためか充実感を感じられたので、もういっそラブシーンなしでも別にいいかと思えた。それでも十分二人の恋は描けていると感じる。

ドラマの途中から穰の方は豊に対する気持ちが少しずつ変化し始め、それに穰本人も気づいたのだが、だからと言ってすぐ豊に手を伸ばす事もなく7話まできた。そして、やっと7話のエンディングで気持ちを抑えきれずに豊に触れた穰。それもそっと頬に。

8話で豊を喫茶店に呼び出した穰が「豊。俺、豊が好きなんだ」「好きだ」と伝えたのがストレートでびっくりしたけどよかった。伝えないのかなと思ってたから。「あの時ちょっと気持ちが変だった」とか、「特に深い意味はないから忘れて欲しい」とかではなくて、ストレートな告白。戸惑って何も言えない豊。
お店を出てから、今まで通りの関係でいて欲しいということで豊に握手を求めた穰が「これで、触れるの、最後にするから」と言ったのが、切なかった。
好きだけど、好きだから、もう触れない。

「それじゃ・・・」と言って去っていく穰に何か言いたいのに、追いかけたいのに、どうしていいかわからず立ち尽くす豊。『チェリまほ』で、黒沢の告白に何も言えず、口をつぐんで見送るしかなかった安達を思い出した。

するはずではなかった頬へのキス。言わないつもりだった告白。自分の言動で失ってしまった優しく穏やかな日々とかけがえのない豊との関係を思い、頭を抱えて悩む穰が切なかった。

愛嬌があって人懐こい感じで穰と豊のかすがい役となっている可愛い種君(ほんとに可愛い!子役の存在感の大きさを実感)。そして近づきすぎずに穰と豊の関係を見守り、時々気を利かせて穰と豊二人だけの時間を作ってあげる心温かくてどこか愛嬌のあるお父さん。この二人もドラマの中で大きい存在だ。皆が一緒に食事をしているのが本当に幸せそう。

激しさのない、優しいドラマで私は好きだ。濃密なラブシーンがなくても、BLは十分楽しめると実感している。

9話と最終話の感想はまた後日書くつもりです。


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