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BALMUDA Phoneバルミューダのスマホ業界参入・撤退
白物家電でヒットを飛ばしている『バルミューダ』が、スマホ業界に参入し、
つい先日撤退を発表しました。
『バルミューダ』が発表した『BALMUDA Phone』の失敗の原因を見てみたいと思います。
※以下二つの記事は、どちらもQuoraに投稿した記事の転載です。
まず、『BALMUDA Phone』発表時の投稿記事です。
1.質問『日本発 高級家電メーカー『バルミューダ』が 5Gスマートフォン市場に参入しました。日本ではiPhoneシェア70%、果たしてバルミューダは売れるでしょうか?(詳細はコメント欄に貼っています)』
質問ありがとうございます。
『BALMUDA Phone』に関して、
個人的に気になったのは、2点。
1.独自アプリの開発に費用がかかった。
2. IT機器特化の新ブランド『BALMUDA Technologies』立ち上げ
まず『BALMUDA Phone』独自アプリについて。
2.『BALUMUDA Phone』オリジナルアプリ
![](https://assets.st-note.com/img/1698520283138-mw7Xgroh5j.jpg?width=1200)
BALMUDA Phoneの価格が高い理由はオリジナルの本体デザインだけでなく、
独自のアプリ開発に費用が嵩み、
これがゆえに価格が上がってしまったらしい。
独自アプリと言っても、
『スケジューラー』=見やすい
『メモ』=サムネが表示されることで視覚的に認識しやすい。
『カメラ』
『計算機』=日本など東洋の「億千万」表示に変更することが可能。
『時計』=時計やストップウォッチが使いやすい。
といった、誰もが使う基本アプリをさらに使いやすくと考えて、
デザインを独自に開発したという。
またホーム画面ユーザーインターフェースUIのデザインや操作方法などにもオリジナリティ(使いやすさ)が考えられている。
しかし、
これらに¥100,000以上の価値があるだろうか?
3.最大のネック『BALMUDA Phone』の販売価格
![](https://assets.st-note.com/img/1698611564912-F2YksVy4iQ.jpg?width=1200)
結果論的に、
『独自の本体デザイン』+『独自アプリの開発』の費用が膨大になり、
この高すぎる価格帯設定にせざるを得なかった。
さらに、それでも採算が取れず、
内蔵チップ=Quallcomの2019年発表モデル『Snapdragon 765』搭載となったのでは?
ちなみにQuallcomの2019年発表チップは、
ハイエンドモデルが『Snapdragon 865』
つまり765は、『BALMUDA Phone』発表時点から2年前(そろそろ3年前)のチップの、
ハイエンド向けじゃない方。
デザインとアプリ開発費が予想以上に嵩んで、
チップは『ギリギリ5G対応の一番安いやつ』搭載となったのでは?
とさえ邪推します。
4.価格の見合わない操作性
![](https://assets.st-note.com/img/1698612015451-exgdIFaX6k.jpg?width=1200)
問題はデザイン性+使いやすさ追求のはずが、
一番大事な『サクサク動く』が犠牲になっていないか?
という危惧です。
ついでに、
BALMUDA Phoneのその他スペック
メモリ=6GB
ストレージ=128GB
カメラ=4800万画素(シングルカメラで超広角カメラや望遠カメラ、マクロカメラなどには非対応)
4.9インチFull HD
5G
FeliCa
非接触充電にも対応。
5.『BALMUDA Technologies』立ち上げ
![](https://assets.st-note.com/img/1698520753442-iN1EDm8Ewe.jpg?width=1200)
BALMUDAは
BALMUDA Phone発売と同時に
『BALMUDA Technologies』というIT機器に特化した新ブランドを立ち上げている。
スマートフォンはあくまで同ブランドにとって第1弾の製品。
第2弾以降の製品は、
「タブレットかもしれないし、今までになかったデバイスかもしれないが開発は進めている」らしい。
しかし、
BALMUDAは既に家電メーカーとして有名です。
なので一つの新しいIT機器メーカーに参入したスタートアップ企業として、
長い目で見守るというのもありだと思います。
もちろん初期投資のつもりで、
第一弾製品『BALMUDA Phone』を買うという応援の仕方もあると思います。
またデザインと使いやすさを訴えたいなら、
圧倒的熱量。プロの火入れを実現するトースター BALMUDA The Toaster Pro|バルミューダ (Full)
早く動画広告は作るべきでは?
ここまでが『BALMUDA Phone』発表時に投稿した回答です。
6.『BALMUDA Phone』今後のサポート体制
![](https://assets.st-note.com/img/1698612584007-XvbXHj4o1p.jpg?width=1200)
『バルミューダ』は、2023年携帯電話端末開発事業からの撤退を発表したが、
「携帯端末の開発中に得た数々の発見と知見は、私たちがこれから提供する製品に、新たな価値をもたらすことになると信じています。バルミューダは、今後もインターネットテクノロジー関連の研究開発を積極的に進めてまいります。」
BALMUDA Phoneセキュリティアップデート=セキュリティアップデートは2023年11月まで提供を予定しています。
オリジナルアプリ=これまで通りご利用いただけます。サポート終了の際は、十分な日程をもって事前に告知します。
以下は、『バルミューダ』の携帯端末開発事業撤退発表後に投稿した記事です。
7.質問『バルミューダが、携帯電話端末の開発・販売から撤退すると発表しました。 当初はかなり社長が気合入れて、携帯端末の開発に凄んでいましたが、蓋を開けてみるとあっさりの撤退になってしまったのはなぜでしょうか?
質問ありがとうございます。
いくつかの不完全さがあった商品だからです。
![](https://assets.st-note.com/img/1698396947155-CJDvs2hGhM.jpg?width=1200)
メディアの質疑応答に答える『寺尾玄』バルミューダ社長
8.デザインファーストでのスマホ業界参入
![](https://assets.st-note.com/img/1698521595153-i9vX7x112Y.jpg?width=1200)
バルミューダ社長が自社オリジナルのスマホを制作し販売しようとした動機は、2020年頃までのスマホの『デザイン画一化・巨大化』に不満があった。
![](https://assets.st-note.com/img/1698522124459-mMeqxnHeE6.jpg?width=1200)
『iPhone 3GSなどの初期スマホのような手に馴染む大きさで、小型で持ちやすいスマホの開発』が目的だった。
つまりあくまでデザインファーストでのスマホ業界への参入だった。
スマホのサイズ面での原点回帰を提唱し、
また現代の『スマホ依存』を問題視し、
『スマホは人がいい時間を過ごすための道具であるべき』
という問題定義をして、
寺尾玄:「今はこの状況を変えるためのチャレンジをしなければいけない時期だ」としてスマホ業界に参入したと言う。
一見筋が通った主張だが、
Apple
Google
など各社ともバルミューダのスマホ制作発表の3年前(2018年)からすでに、
『スクリーンタイム』=iOS
『集中モード』=iOS
『Digital Wellbeing』=Android OS
など、
自社製のOSレベルからこの『スマホ依存』問題への取り組みを見せていた。
自社でスマホを制作するなら、
画面ユーザーインターフェースも、
アプリも
自社独自で開発となったが、
それらもやはりデザイン上のかっこよさ優先だった。
デザインにこだわるあまり、
逆に操作し辛かった。
本来『小型で持ちやすいスマホ』が目的だったはず。
9.BALMUDA Phoneは家電製品のコンセプトの延長にすぎない
BALMUDA Phoneの標準 OSとして、
Andoroid搭載はスマホ業界参入初期だし、
今後ノウハウを蓄積して、
独自のOS開発まで考えていたかもしれない。
![](https://assets.st-note.com/img/1698522697127-yWINh8z3rh.jpg?width=1200)
社長が『スティーブ・ジョブス』に憧れているので、
できればiOSを搭載したかったと思うが、
それは土台無理な話し。
ただ、最新Android OSを搭載しても、
内蔵プロセッサは当時としても型落ち製品だった。
AppleやGoogleは、
省電力性能と、
処理性能最大化
を両立するために、
『独自のプロセッサ』を自社で設計している。
『バルミューダ』は当然、自社での『独自プロセッサ』の開発も無理。
同時に充電持続時間も、
同時代の同サイズスマホに比べても短かった。
充電持続時間はリチウムイオン電池を内蔵している限り、
小型軽量サイズスマホにとっての最大の命題となる。
『BALMUDA Phone』は、
基本性能・操作性の割に、
十万円越えという割高価格だった。
10.本末転倒の独自デザイン
![](https://assets.st-note.com/img/1698523229060-EiE47s3WIy.jpg?width=1200)
河原の石ころをイメージした『BALMUDA Phone』の背面曲線デザイン。
『BALMUDA Phone』本体デザイン面でも、
『左手持ち、右手操作』=基本コンセプト
『直線を使わない、曲線のみのデザイン』=バルミューダの独自デザインのこだわり
となった。
![](https://assets.st-note.com/img/1698523705210-CzbAiWlRgy.jpg?width=1200)
結果、確かに手に持ちやすいのかもしれないが、
『机に置くと安定しない』
『カーマウントへの装着も難しい』
さらに生活防水面でもIPX4という基準の生活防水レベルで、キッチンでの使用にすら不安があり、レシピアプリを見ながらキッチンで料理することも難しい。
このように、生活のいろんなシーンで活躍できないデザインになった。
つまり結果的に使い辛かった。
しかし最大の売りになるはずだった『小型軽量サイズスマホ』ジャンルにも、
予想外のライバルが現れた。
11.ライバルとなった『iPhone 12 mini』
![](https://assets.st-note.com/img/1698609636120-76PGE6iHP2.jpg?width=1200)
『BALMUDA Phone』の開発が始まってすぐに、
2020年11月にAppleから『iPhone 12 mini』が発売された。
iPhoneに小型の『mini』シリーズが新たに追加された。
画面サイズ比較
iPhone 12 mini=5.4インチ
BALMUDA Phone=4.9インチ
12 miniの方が、やや大きかった。
寺尾社長:「ギリギリいける」と安堵した。
2021年11月『BALMUDA Phone』販売開始。その3ヶ月前、
2021年9月 Apple『iPhone 13 mini』販売開始。
しかし『iPhone 13 mini』の方が少し画面が大きいというだけで、
『BALMUDA Phone』と同価格帯。
サイズの小ささと、軽さで競えば勝ちだが、
さらにスマホの持ちやすさ・操作しやすさを競ったらどうなるか?
カメラ性能も比較し出したら?
さらにiPhoneにはSEシリーズという小型軽量低価格帯がある。
そしてAppleでも『iPhone 13 mini』で、このminiシリーズは終了となった。
つまり売れなかった。
miniシリーズの継続制作も断念するほどの販売不振だった。
もはやスマホは、小型軽量サイズの時代ではなかった。
12.スマホ業界へ参入前の勉強不足
![](https://assets.st-note.com/img/1698612834750-jzmYuLCLGP.jpg?width=1200)
デザインへのこだわりから始まったのなら、
スマホ生産に定評のある企業(日本企業が難しいなら海外でも)のスマホに、
バルミューダがデザイン協力という形での参入で十分だったはず。
さらにスマホの『デザイン画一化』は、
iPhoneだけの話で、
Android端末には
デザイン面でも
サイズ面でも
価格面でも
バリエーションが豊富にある。
それがBALMUDAブランドの企業理念に反するとしても、
スマホ業界に参入して、たった2年で撤退。
企業イメージを散々に毀損する結果となった。
この失敗がバルミューダ本社の経営にも影響し、
スマホ撤退に伴い、
約5億円の特別損失を計上した。
それだけでなく、
生産を引き受けた『京セラ』もスマホ事業から撤退してしまった。
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